走島(はしりじま)という島を知っていますか?
福山市の鞆地区の沖に浮かぶ島で、福山市内で唯一となる有人の離島です。
古くから漁業や水産加工などが盛んな島で、昭和時代には広島県内でもトップクラスの漁獲高を誇っていました。
走島に、島の魅力を存分に満喫できる施設があります。
それが「民宿 太進館(たいしんかん)」です。
太進館は民宿ですが、宿泊以外にもさまざまな楽しみかたができます。
たとえば、走島の海で楽しめるアクティビティーなどが人気です。
また太進館は、走島の漁師が運営しています。
そのため走島近海で捕れたばかりの新鮮な魚介が楽しめるのも魅力。
なかでも海鮮バーベキューは人気のサービスです。
太進館のサービス内容や魅力、こだわりなどについて深掘りしていきましょう。
モデル:あゆ (福山あいどるくらぶ)
太進館は福山唯一の有人離島・走島にある民宿
太進館は、走島にある民宿です。
走島は、福山市南部・鞆の浦の沖合6キロメートルほどのところに浮かぶ島。
走島は、福山市内で唯一の有人の離島です。
太進館を運営しているのは、走島の漁師。
近海で捕れた新鮮な魚介類を使った料理などが、太進館の名物です。
また、走島の美しい海と砂浜で楽しむ釣りやクルージング、マリンスポーツなどのアクティビティーも人気があります。
走島の魅力を存分に満喫できるのが、太進館の特徴です。
なお事前に連絡すれば、太進館の船による送迎もしてもらえます。
鞆地区の白茅浮桟橋から太進館最寄りの唐船港まで、所要時間は約25分。
送迎料金(往復)は、大人1人1,000円・小人1人500円(消費税込)です。
太進館があるのは走島南東部の唐船(とうせん)地区。
ちょうど走島港の島の反対側です。
そのため、走島の南方向へと船は進んでいきます。
唐船港から太進館までは、スタッフが誘導します。
距離は約100メートルです。
宿泊以外にも食べ物から遊びまで楽しめる!太進館の魅力的なサービス
2021年(令和3年)9月時点の情報
太進館は民宿ですが、宿泊だけでなくさまざまなサービスを楽しめます。
宿泊以外のおもなサービスは、 以下のとおりです。
- バーベキュー
- 料理(季節のコース船盛)
- クルージング
- 定置網見学
- 船釣り
- 宇治島探検
- サップ(スタンドアップ・パドルボード)
- 魚介食品(干物など)の販売
いずれも、日帰りでも楽しめます。
料理は太進館の店内で、捕れたての新鮮な魚介をふんだんに使った豪勢な料理を楽しめるのが魅力です。
その日に捕れたものによって内容が変わります。
時季によっても食材が変わり、旬のおいしい魚介が楽しめるのです。
マリンアクティビティーが楽しめるのも太進館の特徴。
サップ(SUP)など、初心者でも気軽に楽しめるアクティビティーもおすすめです。
釣りは、太進館で人気のアクティビティーです。
船上で楽しむ船釣りや、海岸・堤防上などから楽しむ磯釣りができます。
また、走島の特産の干物や水産加工品も販売しており、お土産におすすめです。
干物や水産加工品は、一部が取り寄せできます。
詳細は、太進館の公式サイトの通信販売ページを見てください。
太進館では、ケータリング(出張漁師料理)や仕出しなどのサービスもしています。
各サービスの料金や詳細な内容については、太進館 公式サイトを見てください。
太進館の料理が福山駅前でも楽しめる!木よう漁師の日 Umi+
太進館の食事は、新鮮な魚介料理を味わえるのが魅力です。
そんな太進館の魚介料理が、なんとJR福山駅近くで楽しめます!
場所は、福山市伏見町4-22。
「リトル セトウチ (Little Setouchi)」というシェアキッチンで、毎週木曜日に「木よう漁師の日 Umi+ (ウミト)」として出店しています。
なお、Umi+は完全予約制です。
詳細は、太進館 公式Instagramや公式Facebook、太進館 公式サイトを見てください。
福山駅前にはマリンショップも
2021年(令和3年)10月には、福山市伏見町にマリンスポーツ用品店「マリンショップ 〜Umi+(ウミト)〜」もオープン。
場所は、福山市伏見町にあるWATERING HOLE(ウォータリング・ホール)の一角です。
かみてつ青果と備後福山ブルーイングカレッジ&THE BEERのあいだの通路を入った先にマリンショップ 〜Umi+〜があります。
マリンショップ 〜Umi+〜では、サップ、カヤック、ウォータートイ、水上バイクなどの専門用品のほか、マリンウェアやライフジャケット、シーグラスアクセサリーなどを販売。
アウトレット品やレンタルもしています。
営業は木曜日は午前9時〜午後3時ですが、ほかの曜日は完全予約制ですので、事前に問い合わせをしてください。
まるで親戚の家のようにくつろげる!太進館の宿泊について
2021年(令和3年)9月時点の情報。 価格は消費税込
太進館は民宿ですので、宿泊について紹介します。
太進館の宿泊部屋は、3部屋。
まるで親戚の家に泊まりに来たような空間で、ゆっくりとくつろげます。
なお宿泊は、一泊二食付きです。
チェックイン・チェックアウトの指定時間はありません。
希望の時間を予約時に伝えてください。
美しい海・砂浜を眺めながら新鮮な魚介を楽しめる!名物・海鮮バーベキュー
取材時、太進館の「海鮮バーベキュー」を食べました。
海鮮バーベキューは、太進館のサービスのなかでもとくに人気が高いサービスです。
捕れたばかりの新鮮な魚介がたくさん楽しめます。
まさに漁師が営む店だからこそできる、太進館の名物です。
太進館から約120メートルのところにある天女が浜(てんにょがはま)という砂浜で、バーベキューを楽しめます。
天女が浜は、夏には海水浴場としてもにぎわうスポットです。
きれいな海や島、砂浜という最高の景色を見ながら海鮮が味わえるのは、最高のぜいたくではないでしょうか。
バーベキューの内容はてんこ盛りの海鮮のほか、シメ用の焼そば、おにぎりやお造りもついています。
バーベキューの具材は、時季や捕れ高によって変わります。
取材時(9月)のお造りの内容はワタリガニのツメ、イカ、タコ、スズキ。
ワタリガニの刺身は初めて食べましたが、プニプニとした弾力のある食感と、やさしい甘味がしてとてもおいしいです。
取材時(2021年9月)のバーベキューの具材は、 以下のとおりでした。
- アナゴ
- サザエ
- ワタリガニ
- ハリイカ
- スズキ
- ホタテ
- ハリイカのゲソ
- キャベツ、ニンジン、ピーマン(焼そば用)
- 中華麺(焼そば用)
- エリンギ、ブロッコリー、トウモロコシ、パプリカ、ズッキーニ、カボチャ、ナスビ
- ソーセージ
- 豚バラ肉(焼そば用)
- エビ
- タコ
※写真の中央部から「の」ノ字の順に紹介
種類も豊富で、とても豪勢です!
もちろん、海鮮は走島近海で捕れた新鮮なもの。
なかでも注目なのは、ワタリガニです。
このときのワタリガニは、オスでした。
ワタリガニには、上品な甘味のある身がシッカリと入っていて、食べごたえ十分。
しかも、濃厚な味わいでトロリとした舌触りのミソもあって満足です。
アナゴもおいしかったです。
アナゴは肉厚で、プリプリとした食感もありました。
焼いたアナゴはフワフワとした柔らかな食感の印象だったので、新鮮なアナゴのおいしさがわかりました。
アナゴのほか、エビも新鮮でプリプリとした食感で、エビの風味もシッカリと楽しめます。
ほかにも、タコやイカ、サザエなども弾力の食感が楽しめました。
どれも新鮮だからおいしいです。
バーベキューは、一人分でも十分満足できるボリュームがありました。
走島の海の幸を満喫できるバーベキューだと思います。
また、シメには焼そばをつくれます。
自分たちで焼そばを焼いて、焼きたてを食べるのもおいしいです。
鉄板なので豪快に炒められるのもうれしいですね。
夏には、天女が浜で海水浴やマリンスポーツとともにバーベキューを楽しむのもいいのではないでしょうか。
ちなみに、バーベキューは太進館の庭先でも楽しめます。
走島の美しい海とおいしい海の幸を堪能できる太進館。
代表の浜上京大(はまがみ きょうた)さんへインタビューをしました。
太進館の代表・浜上 京大さんへのインタビュー
走島の美しい海とおいしい海の幸を堪能できる太進館。
代表の浜上京大(はまがみ きょうた)さんに開業の経緯や家業を継いだ理由、店のこだわり、今後の展望などの話を聞きました。
生まれ育った走島という財産を未来に残していきたい
──開業の経緯を知りたい。
浜上(敬称略)──
元々、うちは代々漁師をやっています。
祖母が小売店をはじめ、その後に民宿へ変わりました。
約50年前のことですね。
そして、私の両親と私へと運営が受け継がれています。
漁は父がおもにやっていて、ときどき私も漁をやることがありますね。
──民宿を継いだのは、自然な流れだった?
浜上──
いいえ。最初は、まったく継ぐ気はありませんでしたね。
走島の小・中学校を卒業したら、福山市街地の高校へ進学し、島を出て一人暮らしをしていました。
大学を経て社会に出てもサラリーマンとして働いていて、家業には興味がなかったんです。
転機は、福山市街地の活性化を目指す「リノベーションスクール」に関わったこと。
ただし参加者としてではなく、業者側として関わりました。
スクールに参加しているかたがたと話をする機会があり、参加者のかたがたの考えに触発されたんです。
みなさん地元を盛り上げたい、未来に残していきたいという思いが強いんですね。
私自身も、生まれ育った走島という財産を未来に残していきたいなと思うようになりました。
それで会社を退職し、実家の民宿をやることにしたんです。
太進館では「御馳”走”(ごちそう)の島・走島」をコンセプトとして掲げています。
江戸時代初めごろに福山藩主・水野氏が、常石(現 福山市沼隈町)の村上氏に「御馳走料」として走島の開発と統治の権利を与えました。
このときの御馳走料とは、褒美(ほうび)ということです。
以来、走島は現代まで漁業や水産業を中心に栄えました。
最盛期だった昭和時代には、広島県内最大の漁獲量を誇っていたんですよ。
歴史の面でも、産業の面でも走島は「御馳走の島」なんです。
この御馳走の島・走島を多くの人に知ってもらい、残していきたいと思っています。
福山駅・鞆の浦・走島とつながるストーリーをつくる
──浜上さんが太進館の運営に携わるようになって、新しく始めたり変えたりしたことはある?
浜上──
ひとつは、福山駅前・伏見町のシェアキッチン「リトル セトウチ」に週一で海鮮料理店「木よう漁師の日 Umi+(ウミト)」を出すようにしたこと。
ほかに伏見町の「ウォータリング・ホール (WATERING HOLE)」に、マリン用品専門店「マリンショップ 〜UMI+〜(ウミト)」を出したことですね(2021年10月1日開業)。
あとは、クリーン活動を始めました。
鞆の浦から尾道などのグループでおこなっています。
──福山駅前に店を出した理由は?
浜上──
点と点を結びたかったからです。
走島なり福山中心部なりを目的に訪れた人が、走島なら走島、福山中心部なら中心部だけで完結してしまっているという現状があります。
ただ福山市全体で考えたとき、それだと地域全体の活性化につながらない。
地域としての魅力や楽しみかたが、伝えきれないと思ったんです。
だから、まず新幹線が停車する福山の玄関口である福山駅前に、太進館の「点」を打ちました。
そして鞆の浦にも「点」を打ち、福山駅→鞆の浦→走島と点をつないでいき、福山駅から走島へ至る「ストーリー」をつくっていきたいなと。
鞆の浦への「点」も、近々つくる予定です。
目の前の海で捕れた四季折々の海鮮が自慢
──太進館の特徴やこだわりは?
浜上──
目の前の海で捕れた魚介を使った料理ですね!
うちは基本的にその日に自分たちが捕ったものしか出さないのが、最大のこだわり。
走島の漁師の店だからこそできる、鮮度抜群の海鮮が自慢です!
もちろん、時季によっても捕れる魚介は変わります。
四季それぞれの海鮮が楽しめるのもポイントですね。
──四季それぞれのおすすめの海鮮を教えてほしい。まず、春・夏は?
浜上──
春はカワハギやウマヅラハギがおすすめです。
とくに刺身にすると、おいしいですね。
あとはアコウ(キジハタ)など。
夏のおすすめは、サザエに岩牡蠣(イワガキ)です。
真牡蠣(マガキ)の旬が冬なので、牡蠣といえば冬の印象があるかもしれませんが、岩牡蠣は夏が旬になります。
あとはキス。
海岸でキスを自分で釣って、それを焼いて食べると最高ですよ。
また加工品になるのですが、ちりめんじゃこ、釜揚げシラスも夏場が旬です。
ちりめんじゃこ、釜揚げシラスは走島の特産品。
地元の名物を楽しんでください。
料理やバーベキューに、ちりめんじゃこや釜揚げシラスをお出しします。
ごはんのお供にしてもいいですし、バーベキューの焼そばに混ぜてもおいしいです。
アヒージョもおすすめですね。
──では、秋・冬は。
浜上──
秋は、定置網が始まるシーズンです。
サワラやカワハギなどいろいろな魚介が捕れるようになります。
とくに一番の目玉は、ワタリガニです。
冬はもっともたくさんの種類の魚介が楽しめる時季。
サワラやタコ、アコウなどがおいしいですね。
あとはワタリガニのメス。
秋はオスが楽しめますが、冬は内子の入ったメスがおいしいです。
また走島は海苔の養殖が盛んな土地。
海苔養殖の旬を迎えるのが冬なんです。
地元産の海苔をぜひ食べてほしいですね。
走島の海苔養殖は、地場産業として長い歴史があります。
お土産にも最適です。
日帰りでも気楽に利用できる太進館
──太進館のサービスで人気なのは?
浜上──
温かい時季は、バーベキューのご利用が多いです。
でも好きなかたは、年中バーベキューを楽しみますね。
春・秋などの過ごしやすい時季は、ご家族やお友達グループで釣りを楽しむお客様も多いです。
また、食事のみのご利用のかたも多いですね。
日帰りでランチのみ、ディナーのみもできます。
冬場にはご年配のかたを中心に、団体での忘年会・新年会でのご利用も多いです。
ご利用のお客様は9割くらいが、福山市と近接地域ですね。
福山と海上で隣接している地域、つまり香川県東部や愛媛県西部から船で訪れるお客様もいるんですよ。
ときどき、東京や大阪などの遠方からのお客様が来ることがあります。
島と島をつなぎ、島同士の連携を
──今後やってみたいことや展望などがあれば、教えてほしい。
浜上──
やりたいことは「島と島をつなぐ」こと。
笠岡諸島や芸予諸島などと連携をしていきたいんです。
今、本州側から島という動きなんですね。
それだけではなく、島から島への動きを活発にしていきたいと思っています。
島をハシゴしていく感じですね。
瀬戸内海の島々が連携すれば、大きな魅力が生まれるのではないでしょうか。
太進館で走島の自然と海の幸の魅力を満喫しよう
福山市で唯一の有人離島である走島。
そんな走島の海と海の幸、自然と食を満喫できるのが太進館の魅力です。
マリンスポーツなどのアクティビティーを楽しみ、漁師の運営ならではの捕れたてで新鮮な魚介を味わって、身も心もリフレッシュしてみてはいかがでしょうか。
太進館の船による送迎もダイナミックで心地よく、爽快なのでおすすめです。