【地域フォーミュラリ】「11月に始まる大阪府八尾市薬剤師会がモデルになる」/フォーミュラリ学会の今井氏

【2021,10.23配信】日本フォーミュラリ学会は10月23日、学会設立記念シンポジウムをオンラインで開催した。この中で、同学会理事長の今井博久氏(東京大学大学院)は、「今年11月に大阪府八尾市で地域フォーミュラリが始まる。これはモデルケースになるだろう」と指摘した。また、病院フォーミュラリに関しては、同じ地区に3病院で別々に作成されたケースがあるとして、「地域の医師会・薬剤師会と連携していないので地域フォーミュラリの概念が崩れかねない」との懸念を示した。

今井氏「八尾市では『標準的な薬物治療を進めるのは薬剤師の本分』と説明」

今井理事長は、今年11月に大阪府八尾市で地域フォーミュラリが始まると紹介し、「モデルケースになるだろう」と話した。

今井氏と品川区医師会とで共同講演会を行ったり、昨年には福井県鯖江市医師会の会長が地域フォーミュラリ実施に前向きということで意見交換、さらには神奈川県横須賀地区では医師会理事らに地域フォーミュラリについて説明を行うなど、各地域での動きが出ているとした。横須賀市薬剤師会では2019年夏にフォーミュラリ担当委員会を設置しているという。

八尾市がモデルケースになれる点として、今井氏は医師会・薬剤師はもとより、市会議員や保険者などにも説明している点という。また、「標準的な薬物治療を進めるのは薬剤師の本分という点を説明していたところがよかったと思う。病院の薬剤部長などが意思疎通できる環境も推進になった」とした。「府の健康医療部薬務課の人も勉強にきている。こういったケースは稀といえるが、こういう形でぜひ他の地域でも進めていただけたら」と話した。

一方、病院フォーミュラリについては乱立を懸念。「ある地区で3つの病院が別々のフォーミュラリを作成し、医師会から不評を買っていると聞いている。地域の医師会や薬剤師会とも連携しておらず、地域のフォーミュラリの概念を崩しかねない」と話した。
今井氏は診療報酬上も評価するのであれば地域フォーミュラリを評価すべきだとした。

今井氏は「地域フォーミュラリは地域保険者や自治体にとって大きな便益になる。地域包括ケアシステム推進のツール、多職種連携にもなる」と強調した。

課題は地域フォーミュラリ推進に際して、どう枠組みをつくるかだとした。
今井氏は既存の後発医薬品促進協議会などを活用していくのも一案ではないかと示した。
行政にも議論できるテーブルの用意を期待した。
「EBMに従うので大きな違いは出ない」として、「大枠だけでいいので国のフォーミュラリを策定してもいいのではないか」とした。

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