「子どもの結婚や独立資金、いつまで親が管理するべき?」贈与税は?よい管理方法は?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、56歳、自営業の女性。成人している子どもたちのために預金を積み立てている相談者。結婚や独立の際に渡そうとしていますが、このまま親が管理していてよいのか悩んでいるそうです。渡す際の税金や法的な扱いは? どんな金融商品を利用するのがよい? FPの氏家祥美氏がお答えします。

成人している子どもから徴収している家計費の扱いについて相談させてください。

現在同居している子どもから生活費として毎月5万円、私がセカンドハウス(ローンは残っていません)として所有しているワンルームマンションに住んでいる子どもから家賃として毎月7万円徴収しています。

将来、結婚資金または独立資金として渡そうと思い、私が毎月、それぞれ子ども名義の郵便普通口座に5万円ずつ現金で入金しています。これらの口座は子どもは使っていません。ただ、子ども名義の口座を親が管理していていいものか、また、利子もつかないし、このままでよいのかわかりません。他によい管理の仕方があるのか教えていただければと思います。

夫と私は自宅で仕事をしており、特に定年はありません。

※編集部注 相談内容は一部割愛させていただきました。

【相談者プロフィール】

・女性、56歳、自営業

・同居家族について:夫(68歳)/自営業、月収手取り40万円

・成人している子ども2人/(25歳、29歳)

・住居の形態:持ち家(戸建て・東京都)

・毎月の世帯の手取り金額:90万円

・毎月の世帯の支出の目安:50万円


氏家:こんにちは。ご相談いただきありがとうございます。ご相談者さんがいま、気がかりになっているのは、「子ども名義の口座を親が管理していいものかどうか」ですね。まずはここのところから考えていきましょう。

子ども名義の口座は「名義預金」にあたるのか

子ども名義の口座管理については、相続時などによく問題になる「名義預金」にあたるかどうかというところが気になっているのだと思います。そこで、相続時に名義預金とみなされるよくある例を2つご紹介します。

(1) 専業主婦の名義預金
専業主婦をしている妻が、長年、夫から受け取った生活費をやりくりして、妻名義のへそくり口座に貯金を続けて財産を築いたというケースです。この場合、たとえ妻名義の口座で貯めたお金でも、妻に収入がないことから、もともとは夫が得た財産であることが明白です。そのため、夫の死亡時には妻名義のへそくりも夫の相続財産とみなされて相続税の対象となることがあります。

(2) 子どもの名義預金
親が子ども名義の口座を作り、親の財産をその口座で貯めていたケースです。子どもはその口座の存在すら知らずに、親が子ども名義の口座を作って貯金を続け、入金も口座の管理もすべて親が行っていた場合にはもはや子どもの預金とは言えません。そのため、子ども名義の預金であっても、親が亡くなったときには実質的に親の財産とみなされて、相続税の対象となる場合があります

お金の出どころは子ども自身であることが今回のポイント

今回は、子ども名義ということで、(2)の例と照らし合わせて考えてみましょう。ご相談者さんの場合、子ども名義の口座を親が管理しているという点は同じですね。ただし、お子さんはすでに自立してお金を稼いでおり、その収入から生活費や家賃として親にお金を渡していて、それを親が子ども名義の口座に預けています。理由はともあれ、「お金の出どころは子ども自身である」という点が大きく異なります。

「生活費や家賃としてお金を受け取っているけれど、そのお金は結婚資金や独立資金として子ども自身が将来使えるように、子ども名義の口座に預けている。その口座を親の方で預かっている」ということで、その口座を子ども自身が知っており、親子間で共通認識がなされていれば、いまの情報の範囲内で見る限り、問題ないでしょう。

親名義の口座で管理するなら「結婚・子育て資金贈与の特例」もあり

今回、このようにご相談をいただくということは、自立した子ども名義の口座を親が管理することに、なにかしらの違和感があるということでしょう。そこで、もう一つ別の方法も考えてみたいと思います。

子どもたちが生活費や家賃として支払ったお金は、そのまま生活費として受け取ります。そのまま生活費として使うこともあれば、親名義の口座で貯めていくこともあるでしょう。

この場合、いずれお子さんが結婚や独立をするときに贈与税がかからないかが気になるところです。まず、贈与税には年間110万円の基礎控除がありますから、110万円までの贈与を1回するだけならば、どんな目的のお金であってもお子さんの預金口座に振り込んでも税務署に申告する必要はありません。ただし、110万円を超える場合には、税務署に申告して110万円を超過した部分に対して贈与税がかかることになります。

贈与税を避けるには、「父母などから結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度」の利用を考えましょう。この制度を利用するには信託銀行などの金融機関と契約をするなど一定の条件や手続きがありますが、最大1,000万円まで子どもに非課税で贈与ができます。ただし、結婚資金についての非課税枠は上限が300万円までであること、この制度自体が現在は令和5年3月31日までの期間限定であることには注意が必要です。

結婚資金の支払いならそもそも贈与税はかからない!?

なお、慣習的に、結婚資金を親が支払というところもあるでしょう。国税庁が出している文書には、親が子どもの結婚にあたって出した金銭に関するこんな一文があります。

「婚姻に当たって、子が親から婚姻後の生活を営むために、家具、寝具、家電製品等の通常の日常生活を営むのに必要な家具什器等の贈与を受けた場合、又はそれらの購入費
用に充てるために金銭の贈与を受け、その全額を家具什器等の購入費用に充てた場合等には、贈与税の課税対象となりません。

なお、贈与を受けた金銭が預貯金となっている場合、株式や家屋の購入費用に充てられた場合等のように、その生活費(家具什器等の購入費用)に充てられなかった部分については、贈与税の課税対象となります。」(扶養義務者(父母や祖父母)から「生活費」又は「教育費」の贈与を受けた場合の贈与税に関するQ&A)

これによると、子どもの結婚や新生活に必要な資金を親が出し、その全額をその目的で使用した場合には贈与税はかからないということになります。これでしたら、金融機関との契約なども必要なく、特に期限も定められていないため、いつでも利用できるでしょう。

結婚費用は子ども名義の口座でも親名義の口座でも問題なし

また、同じ文書に、こんな一文もあります。

「結婚式・披露宴の費用を誰(子(新郎・新婦)、その親(両家))が負担するかは、その結婚式・披露宴の内容、招待客との関係・人数や地域の慣習などによって様々であると考えられますが、それらの事情に応じて、本来費用を負担すべき者それぞれが、その費用を分担している場合には、そもそも贈与には当たらないことから、贈与税の課税対象となりません。」

ですから、子どもの結婚費にあたって親が負担する資金を親が直接支払う分にも、そもそも贈与にあたらず、贈与税は考慮しなくて大丈夫ということになります。

子ども名義の口座で管理する方法、親名義の口座で管理する方法、どちらも問題なく利用できると思いますので、資金の目的や使うタイミング、金額などに合わせて選んでみてください。

どんな金融商品で管理すべき?

どんな金融商品で管理すべきかも悩ましいところです。「利子もつかないしこのままでいいのかわかりません」とあるように、預金ではなかなか増えない状況です。

ただし、すでにお子さんは25歳と29歳。結婚や独立など近い将来に引き出す可能性や、そのときに大きく元本割れをしないことを考えるとあまりリスクは取りたくありません。

わりと手堅い方法としては、
(1) ネット銀行の定期預金
金利が0.1〜0.2%程度と比較的高金利のところを利用しましょう
(2)個人向け国債
金利は0.05%~で、1年経てば中途換金ができます。100万円以上の購入で1,000円もらえるキャンペーンを行う金融機関もあります。

なお、新たな銀行口座を開く、個人向け国債を購入するという場合、親名義であれば親が手続きをしますが、子どもの名義の場合には子どもに手続きをしてもらうことになります。

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