コロナ禍、エンタメ支援もろさ露呈 予算はフランスの25%

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緊急事態宣言中はスタジオまで閉鎖。「レッスンの生徒は減ったまま」と話す白井博之さん=西宮市津門川町(撮影・辰巳直之)

 新型コロナウイルス禍で文化芸術やエンターテインメントの活動も大きな打撃を受けた。文化庁による活動継続支援事業などが打ち出されたものの、使いづらさに不満の声が続出。政府の文化政策の弱さが改めて指摘された。31日投開票の衆院選でも経済や社会保障などのテーマに隠れがちだが、関係者は文化芸術に携わる人を対象にした給付金など予算や施策の見直しを求める。(田中真治)

 プロのタップダンサー、クラウン(道化師)として兵庫県西宮市にスタジオを構える白井博之さん(56)。公演やレッスンで全国を飛び回る日常は、昨年2月の政府のイベント自粛要請で一変した。「1日のうちに半年分の仕事がキャンセルになった。経験のないことに、手の打ちようもなかった」

 個々が芸を磨き、仕事を得る。当たり前だと考えていた「自助努力」だけでは成り立たず、「われわれの仕事と政治が密着していると実感した」。活動の場を長期間奪われた精神的ダメージも大きく、人前に出るのが怖くなり、芸の世界に戻れなくなった人もいた。

 「自粛を要請するなら、支援があるべきだ」。周囲の窮状に、白井さんは昨年5月、「日本エンターテイメント連盟」を設立。各党や省庁へ陳情を始めたが、職能組織のある演劇や映画などと違い、「趣味の延長のように見られ、職業という認識が低かった」。

 フリーランスや小規模団体向けに500億円超の大規模な活動継続支援事業が組まれたが、当初、「大道芸」は対象外と言われた。折衝を重ね、同連盟が事前確認団体に認められたのは申請期限の2週間前。必死に情報を流し、追加募集を含めて600人以上の確認手続きをした。

 だが、申請には何十ページにもなる募集要項を読み込む必要があり、「あきらめる人もいた」と白井さん。審査にも時間がかかり、公演直前に不採択の通知が届くケースもあったという。

 日本の文化予算は1166億円(2020年)で、国家予算に占める割合は0.11%。予算額はフランスの4分の1、韓国の3分の1にとどまる。白井さんが求めるのは、平時からの文化予算や施策の拡充だ。

 現行の支援事業を簡素で迅速に改善することはもちろんだが、より有効なのは文化芸術に携わる人を対象にした給付金。また、コロナ収束を見据え、文化芸術振興基金の設立や緊急時の経済支援などをうたった法整備も提言する。スポンサー企業への税制優遇を手厚くし、民間の支援を後押しすることも必要だとする。

 出演依頼は、今もコロナ禍以前には程遠く、キャンセルの不安がぬぐえない。「またこんな事態が起きると、後輩が苦労する」。切実な声を聞く姿勢が政治にあるか、問い掛ける。