【衆院選鹿児島 論点を問う】進む馬毛島基地計画 種子島はさながら自治体同士の施設誘致合戦に

© 株式会社南日本新聞社

 「国の防衛政策、南西防衛に自治体として協力していきたい」

 1日、防衛省九州防衛局(福岡市)を訪れた南種子町の小園裕康町長(60)は強調した。町や地元商工会などでつくる「町自衛隊誘致推進協議会」の要望活動。西之表市馬毛島への米軍機訓練移転と自衛隊基地整備計画に伴い、隊員宿舎などの関連施設を町内に整備するよう求めた。

 防衛省は本年度内に種子島で宿舎の用地選定を進める方針を示している。1市2町にはそれぞれ、公有地の照会もあった。「誘致合戦ではない」とする小園町長に対し、協議会の寺田榮一郎会長(74)は宿舎の経済効果を期待。「隊員と家族が住めば税収も増え街が活気づく。他の市町に取り残されないようにしなければ」と明かす。

 南種子の申し入れから2週間後、中種子町議会も防衛局に関連施設整備を要望した。基地計画の「恩恵」を巡る自治体間の攻防は激しさを増しつつある。

■賛否拮抗

 西之表市では、1月末の市長選で馬毛島計画に反対の立場の八板俊輔氏(68)が容認派候補に144票差で再選した。市議選では賛成派と反対派の議員が同数になった。

 賛否が拮抗(きっこう)する中、国は港湾施設建設に向けたボーリング調査や環境影響評価など手続きを積み上げてきた。「地元の理解を得る」としながら、強行的にも映る国の進め方が、住民間の対立を深めているとの懸念もある。

 「反対と言いにくい雰囲気が漂い始めた」と話すのは、反対派の市民団体で活動する元市職員の前園美子さん(64)=同市。基地整備が「決定事項」のように論じられる現状に不安を感じている。「港湾建設による漁業への影響や、米軍機の実際の騒音など分からないことは多いのに、議論は進まず、住民の分断が広がるばかりだ」

 一方、馬毛島計画推進派で元陸将補の中原勇さん(74)=同市=は、5月にあった島上空での航空自衛隊F15戦闘機によるデモ飛行以降、「訓練騒音の懸念はおさまってきた」とみる。「馬毛島基地では陸海空の自衛隊がやりたい訓練ができる。日本の安全保障上も非常に重要だ」と整備の意義を強調。計画前進を後押ししたい考えだ。

■南西防衛

 政府は中国の海洋進出を念頭に南西地域の防衛力強化を進める。馬毛島計画に加え、奄美では2019年に陸上自衛隊の二つのミサイル部隊が発足。うち奄美駐屯地(奄美市)で本年度内に、電波や赤外線で攻撃を防ぐ「電子戦」部隊も新設予定だ。さらに空自新田原基地(宮崎県新富町)では、馬毛島基地での訓練を前提とした最新鋭ステルス戦闘機F35Bの配備も計画される。

 「国の専管事項」とされる安全保障について、沖縄国際大学の前泊博盛教授(60)は「外交や防衛ほど、国民の生命と財産に関わる問題はない。有権者自身がもっと意識を持ち、考える必要がある」と指摘する。基地機能は後出しで変わるのが常だとした上で「領土や政治の問題に軍事と外交、どちらの解決手法で向き合うのか。台湾有事が現実味を帯びる今、基地を増強する危険性への認識が問われている」と話した。

馬毛島の基地計画に伴う関連施設整備を要望する南種子町関係者(奥)=1日、福岡市