2021衆院選ながさき 働き方改革 時間外上限、効果に疑問

有休取得や長時間労働解消に増員で対処した長崎ダイキュー運輸=時津町

 2019年に施行された働き方改革関連法では、長時間労働解消へ時間外労働に上限を設けた。施行3年目。労働者、事業者それぞれの立場で投げかける。「効果はあるのか」と。
 「人は増えず仕事内容も変わらない。だから残業も減らない」。県北の基幹病院に勤めるベテラン看護師(54)は、ため息をつく。
 患者が高齢化し、認知症や合併症への対応などケアする内容は多岐にわたる。新型コロナウイルス禍で業務もストレスも増えた。勤務が午前8時すぎから午後8時をまわることはざら。夜勤体制を支援するため同11時まで残ったこともある。
 労働基準法で定めた時間外労働の上限は原則月45時間、年360時間まで。この病院の看護師も月45時間までの労使協定を結んでいる。これまでは月30時間だったが、超える人が出てきたため9月に引き上げられた。県医労連によると、他の病院も同じ傾向といい「規制を設けても、その上限まで引き上げられるだけではないか」とみる。
 岸田文雄首相は、看護師の所得向上へ診療報酬の見直しに意欲を示す。現場の看護師として「いいことだ」とは受け止めている。でも「まずは人を増やしてほしい」。願いは切実だ。
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 「労働時間を短くしなさいと言いつつ副業も後押し。ブレーキとアクセルを一緒に踏んでいるようだ」。西彼時津町の長崎ダイキュー運輸専務、本田和徳(52)は首をかしげる。
 従業員は80人。長距離便は関西、関東までカバーする。時間外労働が当たり前の時代もあったが、休みを確保して従業員の離職を防ごうと3年前からドライバーを増員。義務化された5日間の有給取得が可能になった。時間外労働も、繁忙期などの例外が認められる上限の年間720時間をクリアしている。
 ただ、全従業員を同じ枠で縛るのはどうか、とも思う。若い世代にはもっと働いて稼ぎたい人もいるだろう。もし副業を希望したら労働時間の管理はどうなるのか。副業をしなくても済むよう、働きたい人は時間外労働の枠を選択できればいいのに-。思いを巡らす。
 法律に従い、長時間労働解消へ努力はした。なのに、労働時間が増える道があることに矛盾を感じる。「与党も野党もどう考えているのか聞いてみたい」。争点として語ってくれる政治家を求めている。
=文中敬称略=

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