「そばにいるよう 感激」孫のリモート披露宴に涙 東京の会場と中継 新上五島町の道脇さん

孫の前田紘弥さんがあいさつする姿に目頭を押さえる道脇さん(右)=長崎県新上五島町

 長崎県新上五島町船崎郷の道脇智子さん(85)が、東京で開かれた孫の披露宴に、島のホテルでリモート参列した。新型コロナの影響で県境を越えた移動がはばかられる中、「祖母に出席してほしい」という孫の思いが周囲を動かした。孫の晴れ姿を目にした道脇さんは感無量の表情だった。

 披露宴を行ったのは東京在住のアーバンエックステクノロジー社長、前田紘弥(ひろや)さん(27)と恵莉奈さん(25)夫妻。当初、昨年4月に予定していたが、コロナ禍で1年半延期し、ようやく開催にこぎ着けた。
 紘弥さんの両親、富二夫さん(66)と裕子(ゆうこ)さん(61)=東京在住=は新上五島町出身。紘弥さんは、祖母の道脇さんを招待したいが感染の不安が拭えず、断念。「何とか参加してもらう方法はないか」。そう考え、裕子さんが周囲に働き掛けた。
 同町内の宿泊施設に、披露宴のリモート中継ができないか問い合わせたが、「通信状況が良くない」などの理由で、条件に見合う施設は見つからなかった。そんな中、相談を受けた町観光商工課が「マルゲリータ奈良尾海ト空○ト星」(奈良尾郷)を紹介。同ホテルも快く引き受けた。
 町によると、リモート披露宴の会場設置は島内初とみられる。テーブルセッティング、通信設備など入念に準備し、メイン会場の八芳園(東京)をはじめ、米国や福島、宮城、奈良県など6会場を結んで16日に開催された。当日は道脇さんと、親戚の中山高(たかし)さん(88)、明子(めいこ)さん(83)夫妻が参列。モニター画面を見つめながら、食事を楽しんだ。
 リモート披露宴は滞りなく進行。孫の紘弥さんが画面に大きく映し出され、あいさつすると、道脇さんは感極まった様子でそっと涙を拭った。「コロナ禍でなければ行きたかったが、すぐそばにいるみたいで感激した」と笑顔で話した。
 披露宴を終えた紘弥さんは「両親や親戚も、久しぶりに祖母たちの顔を見られてうれしそうだった。参加してもらえて本当に良かった」と喜んでいた。

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