寄り添うということ

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 29日が最終回のNHK連続テレビ小説「おかえりモネ」。この半年間、深いメッセージ性がある物語に引き込まれた▲清原果耶(かや)さん演じるヒロインの永浦百音(ももね)は気象予報士。中学生の時、東日本大震災に遭ったが、津波が襲った地元の宮城・気仙沼の島におらず、罪悪感と無力感を抱え込んでしまう。ドラマでは主人公をはじめ心の傷を抱えた人々が、ゆっくり、少しずつ再生の道を歩む姿を丁寧に描いた▲被災者だけでなく、痛みを抱えた当事者とどう向き合い、支えるのか。「寄り添う」という言葉がよく使われるが、むろん簡単ではない▲百音と気持ちを通わせる不器用な医師で、坂口健太郎さん演じる菅波も心に傷を負った人物だ。彼はトラウマ(心的外傷)に苦しむ百音に「あなたの痛みは僕には分かりません。でも、分かりたいと思っています」と伝える。心に響くシーンだった▲脚本を書いた安達奈緒子さんは「人の苦しみは、その人でなければ絶対に理解できない」ことを大前提にしたという。だからといって人の痛みなんて分からない、とあきらめるのではない。痛みを懸命に分かろうとするのだ。それがきっと「寄り添い」に一番大切なこと▲時間はかかっても、心の寄り添いが心の傷を癒やす。震災から10年。支えと希望を忘れずにいたい。(潤)