江頭2:50ばりの「逆立ちカバ」が東京にいた 不思議な銅像の設置のキーワードは「優しい空間」

日本各地には数えきれないほどの銅像が設置されている。渋谷駅前のハチ公や、上野の西郷さん。札幌のクラーク博士や長崎の平和祈念像などは、日本人なら一度は目にしたことがあるだろう。

そんな各地の銅像の中には、地元の人たちは見慣れてしまっているけれど初めて見た人には強烈な印象を与える、という作品も存在する。そのひとつが、今回紹介する東京都羽村市のカバの銅像だ。

羽村市は東京都の西部に位置する、いわゆるベッドタウンである。玉川上水の取水口があることでも知られている。その銅像が置かれているのは、静かな住宅街の中にある水木公園だ。緑の木々の中に遊歩道が広がり、市民の憩いの場となっている。そんな水木公園で人々を出迎えているのは、なんと逆立ちをしたカバの銅像。丸々とした体型のカバが、江頭2:50の三点倒立と同じようなポーズで逆立ちをしている。高さ約2メートルの堂々たるその姿は、初めて前を通った人は二度見してしまいそうな不思議な雰囲気をかもし出しているのだ。

この銅像の正式名称は「風船かば」という。鍛金彫刻作家で多摩美術大学教授も務めた野口裕史氏の作品である。羽村市公式サイトによると、1993年、ユーモアをテーマに子供たちに優しい空間を提供したいという想いから制作された。

実際に「風船かば」を見ると、体は丸みを帯びたなめらかな曲線で構成されており、いかにも子供たちが親しみやすそうなデザインだ。その名の通り、カバの体が風船となって今にも空に向かって浮き上がりそうな作品に仕上がっている。さらに近寄って観察すると、カバの穏やかで優しい表情にも気づく。しかも、左目は開いていて右目はまぶたを閉じている。つまり、公園を訪れた人たちにウィンクを送っているのだ。作者の細かいアイデアと、子供たちへの愛情が伝わってくる。

ひときわ目を引く、逆立ちするカバのデザインには、実はユーモアと優しさという深い意味が込められていたのである。

ちなみに、「風船かば」は交差点の近くに設置されているので、夜になると信号機の光をボディに反射して赤や緑に光り輝く。その妖艶な「夜かば」の姿もまたキュートで魅力的だ。

◆水木公園「風船かば」銅像:東京都羽村市神明台2丁目 JR青梅線、羽村駅から徒歩10分

(よろず~ニュース特約・近添 真琴)

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