S&P500の具体的な買い方、投資信託や日本のETF、米国ETFで買うのは何が違う?

最近、書店の投資・ビジネス関連のコーナーにいくと「米国株投資」の書籍の多さに驚きます。ここ数年の株式市場の盛り上がりや、老後不安に対する資産形成意識の高まりからも投資を開始する人が増えていますが、中でも米国株への投資が注目を集めています。

長期的に見ると、株式市場は経済の発展と相関関係があります。

科学技術の発展、労働生産性が上がることの期待や人口の増加からも米国は非常に有望な投資先になっています。個別の銘柄をひとつひとつ調べて株を購入する方法もありますが、米国全体の成長の果実を得やすいのはさまざまな会社の株から算出されるインデックスを利用した方が網羅性があったりリスクが平準化しやすいと言われています。

今回は米国株の株式インデクスの指標や注目度の高い株式インデックス指数であるS&P500の買い方について考察します。


米国の株式インデックス指数はどんなものがある?

日本で有名なインデックス指標は、東証一部上場全社を指数化した「TOPIX」や、日経が選ぶ225社の平均である「日経平均」などがありますが、主な米国の株式インデックス指数は以下のものがあります。

ダウ平均株価

ダウ・ジョーンズ工業株価平均とも言います。各業種の代表的な企業を30社を集めて株価加重平均を出したもの。

S&P500

S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス社により算出され、ニューヨーク証券取引所やNASDAQに上場している代表的な500銘柄の株価を時価総額比率で加重平均して指数化したもの。

CRSP USトータル・マーケット・インデックス

全米約4,000社の株価を指数化したものです。全米をまるごと購入することになるため、S&P500よりも中小型株を含んだ指数になります。

NASDAQ総合指数

NASDAQは全米証券業協会が運営している株式市場の名称。正式名はNational Association of Securities Deals Automated Quotationsで、世界最大のベンチャー企業向けの株式市場です。この市場に上場する全ての銘柄を時価総額加重平均で計算した指数。

S&P500について考える

今回は、米国株投資の中でも最も人気があり有力な株式インデックス指数S&P500の買い方を考えてみましょう。

S&P500は、安定性の高いダウに含まれる大手企業も含みながら、NASDAQに上場している新興企業やテクノロジー企業を含むため成長性も期待できます。

つまり、コカ・コーラやP&Gなどの全世界を市場にする昔ながらの大企業から、AppleやMicrosoft、Google、Amazonなどのテクノロジー企業や、Teslaなどの新興企業も含まれます。S&P500の時価総額は米国株式市場の約70%〜80%を網羅するといわれているため、S&P500を持っているだけで米国全体に投資していることになります。また、この500社の収益のうち40%は米国外から得ていると言われグローバルに活躍する企業が多く含まれます。

つまり、S&P500を購入すれば、全米の成長と世界各地の成長を享受できると言っても過言ではありません。

投資の神様と言われるウォーレンバフェット氏も、自分の死後は遺産のほとんどをこのS&P500で運用するように指示している話は有名です。

【リターンの実績】
配当金の再投資した場合のS&P500の株価騰落率は以下の通り。

データ日:2021年9月末時点
リターン:分配金再投資込み
通貨 :米ドルベース

30年間ほぼ10%を超える騰落率となっています。また、この10年では16.6%も平均リターンが出ています。これは10年間で4倍以上に資産が増えたことになりますので、「投資するならS&P500だけで良い」という人が出てくるのも理解できます。

この年平均のリターンには、分配金を再投資する前提になっています。S&P500で運用する場合には分配金がでているのです。

例えば、S&P500に連動するETFのVOOであれば、分配金利回りは1.34%程度(2021年7月時点)です。2019年まで順調に増えており年率では1.7〜1.8%程度まで成長していましたが、2020年以降コロナショックの影響から配当金を出す企業が減ったこともあり、それをまとめた分配金も少なくなっています。分配金狙いの投資ではないのですが、この分を再投資に回すかどうかで複利効果も変わってきます。

具体的な買い方は?

S&P500はインデックスの指数であるため、そのものを買うというより、このインデックスに連動した金融商品を証券会社から購入することになりますが、主な買い方は以下の3つの方法になります。

(1)S&P500を米国ETFで買う
(2)S&P500を日本のETFで買う
(3)S&P500を投資信託で買う

(1)S&P500を米国ETFで買う

S&P500に連動した米国のETFで有名なものは、VOO、SPY、IVVがあります。

VOOはバンガード社が提供するETFで、S&P500指数に連動することを目指しています。非常に運用コストがおさえられており、信託報酬は0.03%となります。

SPYはステート・ストリート社が提供するETFで、同じくS&P500指数に連動した推移をめざしています。設定日が1993年1月と古く、VOOの設定日2010年9月と比べても歴史があります。そのため、信託報酬は0.09%と高いものの昔から利用している投資家も多くいます。

IVVは、世界最大のETF運用会社であるブラックロックが提供するETFです。信託報酬は2020年に0.04%から0.03%に値下げされました。

経費率が非常に安いため、配当利回りも各社変化があり、トータルリターンにも若干の差がでてきます。経費率が安く分配金の利回りの高いVOOが頭一つでている感はあります。

(2)S&P500を日本のETFで買う

日本のETF(上場投資信託)で買うこともできます。

●MAXIS米国株式(S&P500)上場投信【2558】※外国税額控除対象
三菱UFJ国際が運用するETFです。信託報酬は0.0858%

●上場インデックスファンド米国株式(S&P500)【1547】
日興アセットマネジメントが運用するETF。信託報酬は0.1650%

●iシェアーズS&P500米国株ETF【1655】※外国税額控除対象
ブラックロックが運用するETF。信託報酬は0.0825%だが期間が限定されており、期間終了後は0.165%

●NEXT FUNDS S&P500指数(為替ヘッジなし)連動型上場投信【2633】※外国税額控除対象
野村アセットマネジメントが運用するETF。信託報酬は0.077%〜0.099%で期間により異なる

どのETFも同じくS&P500に連動していますが、信託報酬が異なることや外国税額控除の対象の有無などの違いがあります。米国のETFに比べると信託報酬が高くなりますが、外国税額控除の対象になっている場合は、米国の10%分の税金を引かれなくて済むため現金化する際には有利になります。

(3)S&P500を投資信託で買う

日本の投資信託でもS&P500に連動したものを選べます。現在、純資産額が3,000億円以上集まっているファンドは以下の2つになります。

●eMAXIS Slim 米国株式インデックスファンド(S&P500)
2018年7月に設定されました。信託報酬が0.0968%と非常に安く人気がある

●SBI-SBI・V・S&P500インデックス・ファンド
2019年9月に設定され、信託報酬は0.0938%となりライバルのeMAXIS Slimよりも安い

どちらも人気がありますが、eMAXIS Slimシリーズは多くの証券会社で販売している一方で、SBI VシリーズはSBI証券、マネックス証券など数社の証券会社でしか購入できません。

どの方法で買うのが良いか?

はじめてS&P500を買うのであれば、投資信託で購入することをお勧めします。メリットは以下の点です。

・つみたてNISAを活用できる
・分配金を再投資設定にすることで複利効果を最大化できる
・分配金を再投資設定にすれば、分配金をうけとらないで済むため税金が引かれない
・外貨でないため為替変動のリスクの影響が小さい

ETFで購入するほうが信託報酬が安いですが、分配金を再投資するには1口単位でしか購入できないので少なくとも1万円以上のまとまった金額にする必要があります。大きな金額を運用している場合は再投資が可能とは思いますが、投資初心者や大きな金額を動かせない場合はまずは投資信託から始めるのがわかりやすでしょう。

ETFで買う場合も、外国税を引かれてしまうと確定申告後に取り返す必要がでてきます。この煩わしさを無くしたい場合は、日本の東証に上場しているETFで購入するとこの外国税を調整した後の金額が20.315%の税金を引いたものと同じ用にして考えられるので有利と言えます。米国のETFで買えば為替の影響を思いっきり受けてしまうので、日々のドル円の相場にねづけが左右されます。一方、信託報酬は非常に安くなるメリットがあります。

運用に回せる金額や、利用したい制度を考えて、どのようにS&P500の恩恵に預かるかを考えてみるとよいでしょう。

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