地震でエレベーターに閉じ込め…強い揺れなら救出難航、どう備える? 住民訓練を試みるマンションも

閉じ込めを想定した救出訓練で、外からエレベーターの戸を開ける釜石さん=20日、東京都大田区

 地震時に停止するエレベーターの閉じ込めにどう備えるか。10月7日夜に首都圏で震度5強を観測したマグニチュード(M)5.9の地震は、マンション住民やオフィスビルの関係者にそんな課題を突き付けた。国土交通省によると、同地震で停止したエレベーターは約7万9千台。利用者が閉じ込められるトラブルは29件にとどまったが、日中の地震や揺れがより強い場合は深刻化し、保守会社や消防などによる救出作業は難航する可能性が高い。そうした事態を見据え、住民主体で救出訓練に取り組むマンションもある。

◆住民有志と訓練、不安を解消

 「大丈夫ですか? これから開けますので、後ろに下がってください」。災害対策研究会事務局長の釜石徹さんが、乗っている人に向かって呼び掛けた。

 電源を落としたエレベーターのかごが、マンションのフロアより数十センチ高い状態で止まっていた。釜石さんは保守会社や他の住民と協力し、専用の解錠具を使って外から戸を開け、中の人を助け出した。「保守会社に早く連絡することが基本。転落の危険もあり、住民がエレベーターを動かすことはできないが、万が一の事態に備えて助ける方法を学んでおき、一緒に対応できる人を増やしたい」

 20日、東京都大田区の10階建てマンションで、管理組合の取り組みとして行われた救出訓練。「マンション防災士」として活動する釜石さんは自身の居住物件で2010年から、住民有志と訓練を重ねている。

 定期点検に合わせ、閉じ込められた住民の不安を解消する声掛けや解錠の方法、戸を開ける際の注意点とともに、「してはいけない行為」を保守会社の担当者から学び、いざの際の手順を確かめている。現在の居住者で参加経験があるのは「20人近く」という。

◆首都圏直下型、あちこちで閉じ込め?

 千葉県北西部を震源とする7日夜の地震で、大田区は震度5弱を観測。釜石さんの住むマンションで閉じ込めはなかったが、エレベーターは停止した。

 地震のP波(初期微動)を検知後、最寄り階に着床し、扉を開放する装置が正常に機能したためとみられるが、釜石さんはより深刻なケースを念頭に置く。

 「(震源が近いM7級の)首都直下地震が現実となればエレベーターが着床する前に強い揺れが来て、停止してしまう。あちこちで閉じ込めが起き、誰も助けに来てくれないだろう。だからこそ、自分たちで救出できるように準備しておく必要があるのではないか」

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