2021衆院選ながさき 安全保障 関心低く「もっと議論を」

自衛隊と米仏豪各国軍による共同訓練「アーク21」の様子(水陸機動団提供)

 衆院選が公示された19日午前。北朝鮮が日本海に弾道ミサイルを発射した。東北地方で遊説中だった岸田文雄首相は、途中で遊説を取りやめ、東京に戻り対応に奔走することになった。
 岸田首相は弾道ミサイルを相手国領域内で阻止する「敵基地攻撃能力」の保有検討を主張している。現在の防衛システムは、発射されたミサイルを探知し迎撃する。迎撃能力がある海上自衛隊のイージス艦8隻のうち、半数の4隻は佐世保を母港にしている。
 その佐世保港に10月上旬、米海軍の新型艦艇「ミゲルキース」が姿を現した。遠征洋上基地とも呼ばれ、大型車両や小型船艇を作戦海域に輸送する機能を持つ。日本大の吉富望教授(安全保障・危機管理)は、「米海兵隊の後方支援能力の確認」が目的だとみている。海洋進出を活発化させる中国を警戒する米軍や自衛隊。今年5月にはフランスやオーストラリアなどと共に陸海で離島防衛の能力向上を目的に共同訓練を実施した。
 陸上自衛隊で離島防衛を担う水陸機動団は2018年3月に発足。本部は佐世保にある。佐世保は陸海ともに日本の安全保障上、重要な役割を担っている。
 こうした状況に佐世保地区労の山口原由事務局長は「軍事拠点があれば攻撃対象にもなりうる」と危機感をあらわにする。しかし衆院選でクローズアップされているのは新型コロナウイルスや経済対策といった生活に関わるテーマ。「安全保障面がもっと争点になってほしいが…」。その口調からは悩ましさがにじむ。
 機動団の二つの連隊は佐世保市の相浦駐屯地にある。政府は三つ目の連隊を23年度までに新編する予定で、佐世保をはじめ大村、五島などが誘致に手を挙げている。人口増や経済活性化といった「効果」への期待があるからだ。
 佐世保防衛経済クラブの馬郡謙一会長は「佐世保は基地と共存し経済を委ねている面は大きい」と説明、「安全保障上の要衝でもあり、自衛隊が存在するのは平和のためだ」と強調する。
 近隣諸国との緊張が高まる日本。こうした状況についてNPO法人ピースデポ(横浜市)特別顧問の梅林宏道氏は「近隣国と平和、友好的に関係構築できるかが問われている。関心を持つべき重要な課題」と指摘。その上で「もし(安全保障をめぐる)議論が起こらなければ、その時は市民が政治家に問うていくことが必要だ」と話している。

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