韓国紙「台湾TSMCの日本進出はソニー技術者を奪う狙い」「政府の一方的補助金は国民不利益に」

韓国紙が日本や台湾メディアの報道を丹念に追いながら、当初は好意的だった台湾TSMCの日本進出に「逆風」が吹いていると紹介している。

参考記事:韓国経済紙「TSMCの次はマイクロン…日本の半導体新戦略が恐い」「素材で囲い込み…韓国は不利」

韓国メディア・オピニオンニュースは23日、キム・ジェフン日本放送言論研究所所長の寄稿文『日、台湾TSMC工場誘致議論拡大…歓迎一色の3日後に批判世論拡散』を掲載し、このように報じた。

去る14日、世界最大の半導体製造企業である「TSMC」がソニーと提携して熊本にファウンドリ(半導体受託生産)工場を建設すると発表した。約8千億円とされる同工場建設費の半分(4千億円)を日本政府が補助するとの見方が有力視されている。

キム所長は、日本ではTSMCの日本進出を喜び歓迎する雰囲気一色だったが、「しかし、時間が過ぎるにつれ、TSMCの日本進出の理由を冷静に分析しなければならとする一方で、決して喜べることだけではないとの報道が出始めた」と指摘する。

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キム所長は日本の「JBPress」(17日)や台湾「天下雑誌」(14日)の報道を引用し、TSMCが台湾では5ナノ工程の最先端半導体を量産するにも関わらず、熊本の生産工程は22~28ナノと古い工程に留まることを指摘。また、TSMCの狙いが、ソニーのウエハ積層技術であるとの見方を伝えた。

TSMCのホームページでは、日本で働く技術者を大々的に募集していることや、「日本が三顧の礼の末にTSMCの日本誘致に成功したが、その結果として、ソニーの技術を奪われ、優れた日本の技術者の頭脳流出が加速すれば、日本としては笑えば良いのか泣けば良いのか分からなくなる」との指摘を伝えた。

キム所長は、他にも「週刊プレイボーイ」(22日)に掲載された元経産官僚・古賀茂明氏の記事を引用し、経産省がかつて日本の半導体連合にのみにこだわり半導体産業を結果的に弱体化させたことを挙げ、それがTSMC誘致の背景にあることを伝えた。また4000億円とされる補助金を日本政府がTSMCに支払うのは、その対価として新工場から出荷される半導体を日本国内に優先供給してもらう狙いがあるが、そんなことができるのか非常に不安視されていると伝えた。(※日経はこれについて韓国がWTOに訴える可能性について触れている)

さらに、経産省がTSMCの誘致にこだわるものの、電気自動車やグリーン産業などの分野を発展させるイメージは全く示しておらず、日本政府の本当の意図は、単に半導体供給を確保しようとするものではなく、日米台の半導体連合を作り、中国封じ込めに利用しようとするものであると伝えた。

それとともに「嫌韓政策」を広げる日本政府は、輸出規制の問題などで韓国と対立するため、先端半導体製造の分野で高い世界シェアを持つサムスン電子やSKハイニックスなど韓国メーカーとの協力には背を向けているとの古賀氏の批判を伝えている。

つまり、日本が今回の工場誘致により、TSMCとサムスン電子を競争させずに、TSMCのみを選択することになることから、むしろ日本は手足を縛られ、不利益を得るという批判であるとキム所長は伝えた。

参考記事:韓国紙「TSMCの日本進出は日台の特殊関係が背景に」「台湾は反日感情ない…共に韓国脅かす」

参考記事:韓国紙「台湾TSMCの日本進出めぐり韓国がWTOに提訴も」「日本政府補助金はサムスンに損害」

参考記事:韓国農業紙「TPP加盟は韓国農家に莫大な打撃」「後発加盟国は強力な市場解放要求される」 経済紙は加盟支持

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