名将が栄光を支えたエースにラストメッセージを送った。8年ぶりのBクラスが確定しているソフトバンクは今季最終戦となった25日のロッテ戦(ZOZO)に15―7の大勝。指揮を執った7年間で3度のリーグ優勝、5度の日本一に導いた工藤公康監督(58)のラストゲームを派手に飾った。
CS進出の可能性が完全になくなった23日の試合後、選手、スタッフらに直接「辞任」を伝えた指揮官。この日もグラウンドで一人一人と言葉を交わした。しんみりとした雰囲気の試合前取材では明るく振る舞った。
「千賀に10勝させてやりたい」。最終戦への思いを聞かれて、そう即答した。中継ぎだった千賀を就任2年目から先発起用。「いろいろ秋には苦しい思いをしてもらった」と過酷な練習メニューを課し、時に口うるさく指導した自負もあった。そこから毎年2桁勝利をマーク。口数の量は期待の裏返しだった。
「何とかいい形で、最後まで投げ切ってよかったという思いにしてあげたい」。監督生活最後のゲームで、エースに成長した右腕の6年連続2桁勝利を見届けることを切望していた。
中5日での登板となった千賀もまた特別な思いを持ってマウンドに上がった。「僕の10勝のために投げさせてもらうみたいなところもある。監督の最後になるし、そこは自分の中で思いながら頑張りたい」。冷え込む幕張で最速160キロをマークして6回3失点。攻撃陣がともに今季最多20安打、15得点で10勝目をアシストし、指揮官に恩返しの白星を贈った。
試合後、大粒の雨が降る中、孫オーナーから大きな花束を受け取った工藤監督。その光景を笑顔で見守った王球団会長。異例のラストシーンが名将の残した足跡の大きさを物語った。工藤政権の財産を糧に、常勝軍団復活への新たな戦いが始まる。