衆院選 長崎 深まり欠くコロナ論戦 自民 具体策触れず、野党 財源言及乏しく

口元やマイクに感染対策をして街頭演説をする候補者。コロナ対策への有権者の関心は高い=県内(写真は一部加工)

 昨年からの新型コロナウイルス禍以降、初の総選挙にもかかわらず、長崎県内ではコロナを巡る政策論争が深まっていない。自民側は具体策にほとんど触れず、野党側も「失政」批判を強め経済対策を訴えるが、財源への言及は乏しい。
 23日夕、佐世保市南部のショッピングモールそばで、買い物客らが野党新人の演説に耳を傾けていた。「たまたま通り掛かった」という中年女性は「選挙はいつもうるさい」と感じていたが、今回は一連の政府のコロナ対策に疑問を感じ「必ず投票に行く」。ただ野党の政策も詳しくは知らず、ちょうど演説をしていたので聞いていたという。
 県内では昨年3月以降、5回の感染の「波」を経験し、6097人が感染、73人が死亡。医療機関は病床逼迫(ひっぱく)や一般診療縮小など「命の選択」の危機に見舞われ、経済面でも事業者が多様な業種で連鎖的に打撃を受けた。
 今回の衆院選では今後感染をどう抑えるのか、経済との両立をどう図るのか有権者の関心は高い。本紙の候補者アンケートでもこうした空気を敏感に感じ取ったのか、13人のうち10人が争点としてコロナ対策を挙げていた。
 だが自民の2新人からは「コロナ禍で活気が失われ、不安感が広がっている」「農業と建設業のたくましさが浮き彫りになった。しっかりサポートしたい」といった抽象論が目立つ。公示直前に公認が決まった自民前職は「本当はコロナ対策も演説で訴えたいが、まずは公認について説明しなければならず、時間が足りない」と打ち明ける。
 一方の野党側。「国は十分な補償がない自粛要請ばかりを求めてきた」(新人)、「『助けて』という声が上がる中で命をないがしろにする政治が行われている」(別の新人)などと批判した後、各党が掲げる事業者への持続化給付金再支給や、消費税率引き下げなど経済対策を訴える。財源について各党はホームページなどに記載しているが、候補者の口からはほとんど語られない。
 現在、本県を含め全国的に感染状況は落ち着いているが、県は次の「第6波」に備え、保健・医療提供体制を再構築している。野党側からは「入院できず亡くなるような事態は起こしてはならない」(前職)など医療体制の充実を訴える声も聞かれるが、比重は大きくない。新人は「パンフレットには医療体制も書いている。だが感染状況が落ち着いているので、経済対策など生活に寄り添った話の方が聞いてもらえると思う」と話す。
 医師で自民党衆院議員を4期務め、14日の解散でバッジを外した冨岡勉氏(73)は在任中、コロナ対策に熱心に取り組んだ。冨岡氏は「感染を抑えて日常生活が戻れば、経済対策はいずれ必要なくなる」と医療対策の重要性を説くが、自民新人の陣営からは「中途半端な知識で語るのは難しい」との声も漏れる。

© 株式会社長崎新聞社