2021衆院選ながさき 多様性 胸を張り暮らせる社会に

長崎市で暮らす同性カップルの楠木さん(右)と金山さん。新しい店のオープンに向けて充実した日々を送っている=長崎市浜町

 夜のアーケード街を、手をつないで歩く。互いに仕事が忙しい2人にとって、貴重な“家族”との時間。長崎市で暮らす看護師の楠木理紗(35)とパン職人の金山愛海(31)は2019年9月、同市が県内で初めて導入した「パートナーシップ宣誓制度」で宣誓した同性カップルだ。
 現在は金山の夢であるパン屋開業に向け、二人三脚で準備を進める。宣誓から約2年。2人の生活や関係性が、大きく変わったわけではない。でも、開業に伴う手続きで2人の関係を聞かれたとき、迷わず「パートナーです」と答えられるようになった。社会の変化を感じている。
 楠木には「人の理解は早いのに、法律や政策はなかなか追いつかない」というもどかしさもある。宣誓制度で受けられる行政サービスは限られ、異性同士の婚姻関係と隔たりがある。一方の転職で所得が下がった時も、扶養家族扱いにならず、税負担は2人分。どちらかの家族に不幸があったとき、勤務先の忌引は適用できるのか-など整理してほしい課題も多い。
 衆院選で多くの政党が性的少数者に関わる政策を訴えるようになり「声を上げることは無意味じゃないんだ」と思える。性的少数者の政策に限らず、柔軟性を重視した候補者や政党に、1票を投じたい。
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 日本LGBTサポート協会によると10月までに全国130自治体が同性パートナーシップ宣誓制度を導入。札幌地裁は3月、国が同性婚を認めないのは違憲とする判決を初めて下した。県内の性的少数者の支援団体「take it!虹」の儀間由里香代表(32)は「行政や司法も変わりつつあるが、判決や制度導入を待たずに亡くなった人もいる。今、変化を必要としている人たちのことを忘れてはいけない」と指摘する。
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 県内で暮らすゲイの20代男性、オサム(仮名)には、一緒に暮らしたい同性パートナーがいる。だが、パートナーは家族や職場に自分の性的指向を隠す「クローゼット」。オサムとの同居には消極的だ。
 自分の性的指向に悩み、一時期は自死まで考えたオサム。パートナーの気持ちは分かるが「何も悪くないのに、なぜ隠れなきゃいけないの」とも思う。
 誰もが胸を張って、好きな人と手をつなぎ、一緒に暮らせるように、今の自分にできる選択をしたい。「だから投票に行く」
=文中敬称略=
            =おわり=

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