
「茶人の正月」と言われる11月を前に、宇治茶の産地では、抹茶の石臼ひきが盛んになっている。京都府宇治市内の工場では、甘くまろやかな抹茶の香りが広がっている。
茶の湯の世界では、夏を越えて熟成させた新茶を、茶壺(つぼ)から出して味わう「口切り」がこの時期に行われる。炉開きの季節でもあり、11月は「正月」とも言われている。
三つの工場を持つ丸久小山園(同市小倉町)では、計千基以上を備える。ずらりと並んだ電動で回る上臼の上部から原料となる碾(てん)茶が入ると、もえぎ色の細かい粒子となった抹茶が下臼との隙間から出てくる。機械化されているものの、1時間に出来る量は1基あたり約40グラム。じっくり時間をかけ、ふくよかな風味に仕上げられる。
同社では、茶壺に詰めた碾茶を全国の茶道家に送るほか、できた抹茶は「壺切抹茶」として一般にも販売している。