【新日本】急性硬膜下出血から奇跡復活へ!「プロレスラーは超人ですから」柴田勝頼を直撃

21日の日本武道館大会で柴田(後方)は卍固めでザックを捕らえた(東スポWeb)

新日本プロレス「G1クライマックス」優勝決定戦が行われた21日の日本武道館大会で、一人の男が光明をもたらした。急性硬膜下血腫と診断された影響で2017年4月から長期欠場を続けている柴田勝頼(41)だ。4年半ぶりのリングにサプライズ登場し、ザック・セイバーJr.(34)とグラップリングルールによる5分間のエキシビションマッチを行いファンを沸かせた。この一戦で柴田が見せたかったものは何だったのか、そして奇跡の復活にかける思いとは? 本紙が直撃した。

柴田は2017年4月9日の両国国技館大会で行われたIWGPヘビー級王座戦でオカダ・カズチカに敗れた直後、急性硬膜下血腫と診断され手術。長期欠場期間に突入し、LA道場(米国)でコーチを務めながら復帰を目指していた。

そして21日、ついにその時が訪れた。休憩時間終了後に入場曲が流れ、ハーフパンツ姿の柴田が登場すると会場は騒然。コーチ活動の傍ら、トレーニングを欠かさず、ザックとのエキシビション戦でブランクを感じさせない動きを披露した。コブラツイストの応酬から卍固めで捕らえて観客を魅了。マイクを握り「ザック、ありがとう。次、このリングに立つときはコスチュームで。以上!」と、事実上の復帰宣言を繰り出した。

ファンを歓喜させた日本武道館での出来事を、柴田は「タイミングでやりたいと思っていた。自分の状態をいろいろ聞かれるのが面倒だったので『百聞は一見にしかず』ということで、今の自分がここだというのを表現しただけです。あとコロナのこんな時代だから、少しでも希望みたいなものが見えたらいいかなと思って」と振り返る。

しかもザックは17年3月のブリティッシュヘビー級王座戦をはじめ数々の激闘を繰り広げてきた縁深い相手で、かねて対戦を熱望されていた。「適任ですよね。今自分が表現できることを最大限に出せるっていうか、アイツもずっと言ってたし。ザックとの一戦があって、その先が見えてくるのかなって。逆にザック以外考えてなかった」と実現の経緯を明かした。

4年半ぶりに観客が囲むリングに立った。「最高の空間でしたね。特別な場所です」。自分にはこれしかない。本格復帰への思いはより強まったようだ。

「一つひとつ段階を踏んで生きているので、一年一年、どんどんリングが近づいてきていますね。とにかく目標がないと本当に自分で自分の存在が分からなくなるから、常にそこに置いてます。ケガした時にオカダが言ってたけど、プロレスラーは超人ですから」と笑みを浮かべる。

負傷箇所が頭部のため復帰には慎重に慎重を重ねる必要があるが、自分の体のことは誰よりも分かっている。

「3歩進んで2歩下がる。時には3歩進んで4歩も5歩も下がっちゃってるような毎日です。ただそこで諦めたくないっていうか。これしかできないんで。俺は諦めるつもりはない。じゃなかったらこの仕事してないんでね」

生死の境をさまよった。それでも自分が生きる場所に帰るために、ザ・レスラーは戦い続ける。

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