「ひとりの人間」としてテイクオフ ―AIRDOパイロット・星奈津美さん 北大人に聞く 第9回

「北大人に聞く」第9回目は、本学理学部出身でAIRDO初の女性パイロットとして活躍している星奈津美さん。パイロットの世界に飛び込むきっかけや、その環境の中で工夫していることなどを聞いた。

コックピットに座る星さん(同社提供)

様々な選択肢を用意する

星さんがパイロットになることを考え始めたのは学部3年生の時。当初は大学院で気象や火山の研究をしようと考えていた。そんな中、高校生の時から関心を持っていたパイロットが第2・第3の選択肢として浮上した。航空大学校は入学時の年齢制限に加え、厳しい身体検査と学力検査に合格する必要がある。記念受験のつもりで受けたものの見事合格、進学を決意した。

教育実習や院試の傍ら、航空大学校を受験したという星さん。「様々な可能性をもっておくことは大事」と話す。本学在学中は合気道部に所属していた。パイロットとは似ても似つかないが、合気道部での経験がパイロットになることにつながったと考えている。

稽古では痛い思いをすることもあるが、案外平気だった。この経験から、自分の性格が思っているよりも「落ち着いている」のではないかと考えるに至った。この「落ち着いている」性格がパイロットの適性にも重なり、頭の片隅にあった将来の選択肢の1つが具体化するきっかけになった。

「身近な人たちを乗せたい」とAIRDOへ

数ある航空会社の中でも千歳―羽田線のある会社を希望した。きょうだいや友人の多くも道外で生活しており、帰省には飛行機を使う場面が多い。「そういう身近な人たちを乗せたいと思った」。また、北海道では特に冬場は遅延・欠航などのトラブルも多い。降雪時のオペレーションを確実に経験できることもあり、AIRDOへの入社を志した。

飛行機事故が起こったとき、良くも悪くもパイロットは目立つ。しかし大多数のパイロットは無事故で定年を迎える。「安全に、確実に、1%でも就航率を上げるために技術を磨きたい」。今後については「やっと(副操縦士になって)スタートラインに立つことができた。これからも北海道とそれ以外の地域をつなげるべく飛び続けたい」と話す。

パイロットに女性がいなくても特段気にやむことはなかったと星さんは語る。「今では国内のほとんどの会社に女性のパイロットがいる。パイロットになりたい人は、男女問わずに挑戦してほしい」。

一人の人間として見てもらう

学生に向けては「自分のことを大切に、やりたいことをやってほしい」と話す。困ったときに頼れる関係を作れるよう、性別関係なく、周囲の一人ひとりと毎日一言二言は必ず話すように努力してきたという。「雑談する力を身につけ、自分を出せば一人の人間として信頼を得ることができる」とアドバイスする。

オフィス内にて(同社提供)

<プロフィール> ほし・なつみ 江別市出身。2016年3月に本学理学部地球惑星科学科、18年11月に航空大学校を卒業。19年、AIRDOに入社。20年11月に副操縦士任用審査に合格し、現在は副操縦士としてフライトに従事。

© 北海道大学新聞編集部