米グーグルが10月28日、自社ブランドの新型スマートフォン「ピクセル6」と「ピクセル6プロ」を発売した。スマホの頭脳を担う半導体を初めて自社開発したことが話題になっている。「ピクセル6」を入手し、新機能を試してみた。(共同通信=吉無田修)
カメラに搭載されたのは、動きのある被写体を撮影する際に使う「モーションモード」だ。「長時間露光」と「アクションパン」がある。
長時間露光は、滝や街の様子といった風景の撮影向けだ。記者が東京都杉並区の神田川で試してみると、滑らかな水の流れを表現できた。青森県の奥入瀬渓流や、長野県軽井沢町の白糸の滝といった観光地で使ってみたい機能だ。
もう一つの「アクションパン」は、動きのある被写体に焦点が合い、背景はぶれた写真になる。公園で走る飼い犬の撮影では、犬のはつらつとした様子を表現できた。しかし、カメラと被写体の距離が離れると、被写体と背景の境界があいまいとなった。
この機能は、自転車に乗っている子どもなど、近くで撮影できるシーンには向いているが、運動会の徒競走を観覧席から撮影するのは難しいかもしれない。
写真の保管サービス「グーグルフォト」には、写真に写り込んだ不要なものを検出し、消去する機能「消しゴムマジック」が追加された。消去した部分の周囲に合わせ、自然な背景にしてくれるのが特長だ。
ピクセル6シリーズ以外で撮影した昔の写真にも対応している。人工知能(AI)が不要とみられる通行人などを自動で判断するほか、自分でも不要な部分を選べる。
背景に関係のない人が写り込みやすい娯楽施設で撮影した写真を会員制交流サイト(SNS)に投稿する際に役立ちそうだ。週末に訪れた都内の井の頭公園で撮った写真で試してみたところ、背景に写り込んだ人々がきれいに消去された。
録音アプリの文字起こし機能はこれまで英語だけだったが、日本語やドイツ語、フランス語にも対応した。記者は、会見やインタビューで文字起こしをする機会が多い。AIによる自動文字起こしは仕事の効率化につながるので、関心が高い機能だった。
実際に試してみたところ、録音対象によって精度に差があった。記者が担当している総務相の閣議後会見の文字起こしは、不正確な箇所もあったが、参考程度で使えそうな印象を受けた。NHK番組でのアナウンサーのナレーションは、文字起こしの精度が高かった。
一方で、日常会話は苦手なようだ。家族の雑談でこの機能を試してみると、「そうだね」が「トヨタはね」、「充電」が「DJ」と間違って認識していた。ただ、文字起こしが変だなと思った場合、該当部分を選んで再生できるので、確認しやすい。
グーグルによると、カメラのモーションモードはピクセル6シリーズのみに搭載される機能だが、グーグルフォトの「消しゴムマジック」や、録音アプリの日本語文字起こしは今後、過去のピクセルシリーズにも対応する方針という。
独自の半導体開発を巡り、ライバルの米アップルは、スマホ「iPhone(アイフォーン)」やタブレット端末「iPad(アイパッド)」で自社設計の半導体を搭載している。パソコン「Mac(マック)」でも米インテル製から移行を進め、処理の高速化や省電力化を強調している。
グーグルのピクセルシリーズはこれまで、米クアルコムの半導体を使用してきた。グーグル幹部は自社開発の狙いを「スマホの基本的な性能を押し上げ、今までにない体験を届けることを意識した」と説明。AIを使った音声や画像関連の機能強化につながっているとしている。
グーグルは、ピクセル6シリーズを日本や欧米など計12カ国・地域で販売する。
日本のグーグルストアでの最低価格は、画面サイズ6・4インチの「6」が7万4800円、6・7インチの「6プロ」は11万6600円。「6プロ」は、光学ズーム4倍の望遠レンズも備える。