京大霊長類研究所、事実上「解体」へ 研究資金不正受け、名称も消滅

京都大学

 京都大は26日、霊長類研究所(愛知県犬山市)を来年度に改編し、事実上「解体」する方針を明らかにした。霊長研を巡っては、京大が昨年、元所長の松沢哲郎氏らが関わったとする研究資金不正を公表し、その後、再編に向けて検討を進めてきた。霊長研に12ある研究分野の一部は「ヒト行動進化研究センター(仮称)」に改編され、他の研究分野は理学研究科など別部局に移管する。1967年の設立以来の歴史を持つ「霊長類研究所」の名称は消滅する。

 この日、京都市左京区の京大で会見を開いた湊長博総長は不正を招いた背景として「研究分野が多岐にわたるが連携が極めて希薄だったため、所内の注意喚起が機能しなかった」と説明した。

 同センターに移行する研究分野は高次脳機能や統合脳システムなどの五つ。松沢氏らが担った思考言語分野と、今月中旬に研究不正が公表された正高信男・元教授の認知学習分野など3分野は廃止する。ほかは理学研究科や野生動物研究センターなどの所属となる。また霊長研のある犬山地区は「京大犬山キャンパス」と位置づけ、ヒト行動進化研究センターを含む複数部門で構成する運営協議会で管理する。

 チンパンジーのアイら動物の飼育は同センターが主に担う。

 この問題を巡っては京大が昨年6月、霊長研の設備整備に関わり約5億円に上る研究資金の不正支出があったと公表。松沢氏を懲戒解雇とするなど計6人を懲戒処分にしていた。一方、松沢氏は京大に対し、教授としての地位確認を求める訴訟を京都地裁に起こしている。

 霊長研は1967年に犬山市に設置。歴代所長の中には日本霊長類研究のパイオニアである河合雅雄氏がいる。松沢氏も2006~12年に所長を務めた。

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