三宅裕司率いる劇団SET ミュージカル・アクション・コメディー 『太秦ラプソディ〜看板女優と七人の名無し〜』時代劇が好き、斬られて本望!

三宅裕司率いる劇団スーパー・エキセントリック・シアターの59回目の本公演『太秦ラプソディ〜看板女優と七人の名無し〜』が好評上演中だ。

物語の舞台は時代劇を撮影している太秦。看板女優、その他、大部屋俳優、撮影の準備をしている。メイクさんやカメラマンなどスタッフが忙しく働いている。監督はメガホンを持って座っている。そこへマネージャーとともに主演女優が入ってくる。入ってくるなり、”次の予定があるから”という。主演で、しかも人気もある、割と自己中心的な印象。看板女優に耳打ち、「私より目立たないでね」と。彼女の機嫌を損ねたら、映画の企画自体が危うくなるので黒鰆監督(三宅裕司)らは、ピリピリ。殺陣のシーン、段取り通りにやらないと危険。ところが、主演女優が、やってしまった、大部屋の女優の顔に!血が出る。それでも強く言えない。時代劇が好き、だからたとえ名のない役でも、伊勢本福三(栗原功平)や内川伊太衛門(小倉久寛)らは着物を着てかつらをかぶれば、それだけでテンションが上がる。だから、昨今の時代劇の状況、もっと、もっとやりたいと思うのだが、なかなか。そしてそんなこんなのトラブル続きで撮影が暗礁に乗り上げてしまう。太秦の看板女優である長吉友理沙(岡山玲奈)は、自ら資金を集めて時代劇を作ろうと提案し、奮闘。そして新しい企画を立ち上げ、さあ…という時にある人物が現れて…がだいたいの流れ。

とにかく細かい笑いが随所に散りばめられ、客席からは笑いが絶えない。ちょっとした発言、オチがとにかく面白く、それでなんだか温かい。ほぼ全ての登場人物にそれなりのバックボーンが透けて見える。パンフレットには全てのキャラクターに役名、”アンサンブル”とか”スタッフA”というのは皆無。しかも時代劇ファンならクスリと笑ってしまう役名、例えば、三宅裕司演じる監督名は黒鰆呆、栗原功平が演じる斬られ役の大部屋俳優は伊勢本福三、岡山玲奈が演じる女優は長吉友理沙、そのほかにも宇豆正男(うずまさお)とか、松樹隆弘(まつきたかひろ)など、「ん?!」という名前のオンパレード。メインキャラクターは伊勢本福三と長吉友理沙だが、群像劇的な要素もある。インタビューでも三宅裕司が語っていたが、つい先ごろ逝去した、「5万回斬られた男」で知られた福本清三、映画『ラストサムライ』に出演して注目され、2014年6月14日公開の映画『太秦ライムライト』では「斬られ役一筋のベテラン俳優」役で初主演を務め、第18回ファンタジア国際映画祭において日本人初となる主演男優賞を受賞。そんなことを念頭に置くと俄然楽しめる作品。伊勢本福三は結婚を意識した彼女がいるが、その彼女のために張り切って主演を目指すも…おっと、ここから先は劇場で!すったもんだの大騒動、合間に三宅裕司と小倉久寛の掛け合いも入り、また、海外からやってきたキャラが強烈、名前もクエンサン・タラレーノ(笑)、クエン酸なだけにいつもレモンを持ってる(笑)。また時代劇なら、かの有名な池田屋事件のシーンも!『蒲田行進曲』にも登場するが階段落ち!これがないと!最後は奇想天外かつ賑やかで華やかな!

出演者は本当に年齢の幅が広く、それゆえにこの設定も全く無理がないのも納得。実際の映画の撮影現場には幅広い年齢の俳優、スタッフがいる、あわやというシーンもあり、あまりにもリアルで思わず声を出してしまいそうな瞬間も。また、大抜擢の岡山玲奈、2020年入団の準劇団員、会見では恐縮してたが、看板女優という役どころ、堂々と殺陣をこなし、また存在感も放ち、将来が楽しみ。また、福本清三をベースにしたキャラクター・伊勢本福三を演じた栗原功平、殺陣も綺麗にこなし、斬られた後のちょっとした”粘り”具合が絶妙。また、コミカルなシーンもシリアスなシーンもきっちりこなし、芝居の要に。
時代劇に興味がないなら、これを見れば、これから俄然、楽しく観られること、請け合い。また、セリフにいわゆる”時代劇”あるあるなセリフや場面も出てくるのでこちらも要チェックしたい。東京公演は11月7日まで。

<三宅裕司インタビュー>
https://theatertainment.jp/japanese-play/85972/

<会見レポ>
https://theatertainment.jp/japanese-play/89694/

<概要>
劇団スーパー・エキセントリック・シアター 第59回本公演 ミュージカル・アクション・コメディー 「太秦ラプソディ ~看板女優と七人の名無し~」
脚本:吉高寿男
演出:三宅裕司
出演:三宅裕司 小倉久寛 劇団スーパー・エキセントリック・シアター

日程・会場:
[東京]2021年10月22日〜11月7日 サンシャイン劇場
主催:(株)スーパーエキセントリックシアター ニッポン放送
企画・制作:(株)スーパーエキセントリックシアター (株)アミューズ (株)アタリ・パフォーマンス

[愛知]2021年11月12日〜11月13日 穂の国とよはし芸術劇場
主催:公益社団法人豊橋文化振興財団

SET公式HP:http://www.set1979.com

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