10月23日に近畿地方で“木枯らし1号”が吹きました。
木枯らし1号は秋から冬へと季節の移り変わる時期に、西高東低の冬型気圧配置となって初めて吹く強い北よりの風のことです。近畿地方では、統計が残る1955年以降で最も早い木枯らし1号とのことで、例年よりも早い冬の訪れになります。東京地方でも、そろそろ木枯らし1号の予想が高まっています。
この木枯らし1号、実は株価と意外な関係があるのです。今回は木枯らし1号と株価について紹介します。
木枯らし1号が吹く日の株価は?
以前の記事「 “春一番”は株式市場にどんな風を吹かせるのか」では、春一番の日に株価が安くなることを紹介しました。
春一番のような強風の日には砂ぼこりで目にゴミが入ったり、髪も乱れたりして気持ちもイライラするなど、ストレスを感じる人も少なくありません。投資家にとってもストレスが多い環境では相場見通しを弱気にしがちで、積極姿勢で投資がしにくく株安傾向になるというものです。これは近年、注目の「行動経済学」という学問に基づいています。
木枯らし1号は春一番と同様に強風というだけでなく、さらに冷たい風ですから、ストレスに感じる方も少なくないでしょう。であれば、同じような株安傾向が想定されます。気象庁のデータを使って、1951年から毎年の東京地方で木枯らし一号が吹いた日の日経平均株価の騰落率を昨年まで平均してみました。
結果は予想通りでした。
東京地方での木枯ら1号の日は▲0.46%の株安です。前回の春一番で紹介した結果は春一番の当日が▲0.03%だったので、それよりも大きなマイナスです。寒い冬の訪れを告げる木枯らし一号の方が、暖かい春の訪れを感じさせる春一番より人々に心理的なストレスがより大きいため株価の下落も大きくなるのかもしれません。
一方、翌日の株価は上昇する傾向があるようです(+0.20%)。木枯らし1号当日のマイナス心理の行き過ぎの反動とも考えられます。
木枯らし1号と”年末まで”の株価は?
木枯らし1号と株価の間にはもう1つ重要な関係があります。例年に比べて木枯らし1号が早かったり遅かったりすると年末までの(11~12月)の株価にも影響がある、というものです。結果を紹介しましょう。
過去の“木枯らし1号”が10月中と早い時期に吹いた年の、11~12月の日経平均株価は、平均して+1.95%とプラスになりました。
木枯らし1号が早いと冬の寒さがより厳しい傾向になると言われています。冬が寒ければ、エアコン需要が高まったり、衣料品業界でも冬物の売れ行きが良くなるなど、冬に向けた消費が活発化します。こうした環境を背景に年末までのプラスの傾向が見られるようです。
とはいえ、「例年」あるいは「遅い」に比べてプラスは小幅です。最もプラスが大きかったのは「遅い」になりました。木枯らし1号が吹くのが遅いということは、それまでの間、暖かい秋が続くわけです。爽やかな秋の季節のなかでは人々も外出しやすくなり消費も盛り上がりやすくなるのでしょう。
また、秋の期間が長ければ、衣料品業界でも秋物の売れ行きが好調となります。秋が短いと秋物が売れず、その時期を通り越して真冬物に注目が集まってしまうからです。
以上のことから、木枯らし1号が吹くのが早くても年末までの株価は堅調な傾向は期待されますが、相場のより大きな上昇を期待するなら、木枯らし1号が遅く吹いてくれた方が良いという結果となります。
今年の東京地方の木枯らし1号はいつになるのでしょうか?投資の面でも注目される情報です。