福山潤◆「“絶対に120%だ”という精神でいてくれた古川くんには感謝です」 古川慎◆「“これは負けていられないな”とさらに気合が入ったので、福山さんには心から感謝しています」

ちょっとした拍子に死んでしまうザコ吸血鬼のドラルクと、吸血鬼退治人(バンパイアハンター)のロナルドを中心としたハイテンションギャグを堪能できるアニメ「吸血鬼すぐ死ぬ」(TOKYO MXほか)が放送中だ。そこで、ドラルク役の福山潤とロナルド役の古川慎にインタビュー! 収録時のエピソードからOPテーマのことまで、じっくり話を聞いた。

――この作品は“ハイテンション吸血鬼即死ギャグ”を描いているだけあって、登場するキャラクターが濃いですよね。

福山 「ドラルクは“真祖にして高貴な吸血鬼”で、その血筋は本物です。ただし、最弱。しかも、その自覚があるのに卑屈じゃないんですよね。自分を卑下していないという不遜さがある上、わざわざ地雷を踏みに行く。そういった性格の良さが、ドラルクの最大の魅力かなと思っています」

古川 「へこたれないんですよね、ドラルクって。あと、この作品って命が軽いんですけれども(笑)、特にドラルクに関しては、“死んだ”といっても死んでないんですよ。何でもかんでも果敢に挑んでいく。その向こう見ずな姿勢は、物語を加速させる上で非常に助かっているし、ドラルク自身の魅力にもつながっている気がします。ロナルドもツッコミがいがあるでしょうね」

――では、ロナルドの魅力というと?

古川 「小心者なところですかね(笑)。吸血鬼退治事務所をやっていて、自身の経験を生かして執筆した『ロナ戦(ロナルドウォー戦記)』という出版物も有名ではあるのですが、持っている感覚は庶民と同じ。残念ながら、器は大きくありません(笑)。でも、いろんな登場人物たちに振り回されながらも全力であらがっていこうとする姿勢や、諦めない心を持っているのは魅力ですね。もちろん、ちゃんと仕事をするところもいいなと思いますよ!(笑)」

福山 「ゲームに例えるなら…ドラルクはほぼすべてのパラメーターを生命力に振ったキャラクターなんですけど、対するロナルドはフィジカルの方に振っちゃったキャラクター。HPがMAXに近いのに、MPはゼロの戦士みたいな感じですよね(笑)。なので、そこが魅力にはなっていると思います」

古川 「あらためて、すごい作品だ…(笑)」

――では、そんなキャラクターを演じると決まった時の気持ちはいかがでしたか?

福山 「最初に原作を読んでいた時は、自分が声を当てるといったことを気にせずに読んでいたので、いざ“ドラルクをやるぞ”という観点で読んだ時、正直なところ、どうやればいいのか分からないという気持ちにはなりましたね。台本やアニメーションのフィルムがあって初めていろんなアイデアが出てくるので、原作だけを読んでインスピレーションを…というのはなかなか難しいんですよ。ドラルクのような象徴的なキャラクターだと、“こうやれば大丈夫”といった指針が何もないので」

――現場で作っていく部分が多かったのですね。

福山 「そうですね。現場で声を出させていただいて、あとはロナルドとの絡みで微調整をさせていただきながら決めていきました。最近は、どの作品でも現場に入るまではイメージを固めることをやめているんです。考えれば考えるほど、自分の中で行きたい方向を決めてしまうとがんじがらめになるので…」

古川 「僕は、原作を読ませていただいた時から素直に“面白い作品だな”と思っていたので、出られるのはすごくうれしかったです。ただ、オーディションの段階から声を張るセリフばかりだったんですよ。実際、1~2時間かけて収録し終えた頃には喉がカスカス。出たいけれど、“受かってしまったらまずいのではなかろうか”と考えてしまうくらいでした(笑)。受かった後も、“アフレコはいつ始まるんだ?”とドキドキしていましたね」

福山 「実際、大変そうだったもんね、ロナルドは。最初は、古川くんがロナルドみたいな役をやっている姿ってあまり想像がつかなかったんですけど、実際にはものすごくパワーがありました。とにかくフィジカルの面とボリュームがすごいんです。とくに、ボリュームに関しては1話(10月4日放送)の段階で“この子には勝てない”と分かったので、“じゃあ自分はどうしようか”と別の手を考えて臨みました。あと、根性もあるんですよ。この仕事ってピンチになった時、“言われたら限界を出す”か、“とにかく自分ができる中でのMAXを出す”かの岐路に立つんです」

――守りに入るか、攻め続けるかですね。

福山 「現場では『80%でもいいよ』と言われたりするんですけど、古川くんは『80%は嫌だ。ロナルドをやる時は120%を出したいんです』と、攻め続けるタイプ。その姿勢を見せてくれたのはうれしかったです。この作品に関して言えば、80%ではダメだったんですよ。それによって作品全体のテンションが下がってしまうので…。“絶対に120%だ”という精神でいてくれた古川くんには感謝です」

古川 「いやぁ…ありがとうございます! この作品は、アニメになってもハイテンポなので、最初“こんなに速いの?”とひるみました。でも、福山さんはそれにバツッと当てて合わせてくると思っていたので、必死になって練習して臨みました。そうしたら“当ててくる”でとどまらず、“超えてくる”ようなあおりが入るんですよ。“これは負けていられないな”とさらに気合が入ったので、福山さんには心から感謝しています」

――お互いにテンションを上げ合ったようですね。

福山 「そうですね。それに、1話の収録時点で、今後出てくるキャラクターたちのキャストは先輩が多いだろうと踏んでいたんです。なので、“その人たちに楽をさせないためにどうするか”は、ずっと考えていました(笑)。“僕らがここまで力を絞り出しているんだから、先輩方もやってくださいよ”という無言のプレッシャーを与えられたら一番いいなと」

古川 「そこまで考えていたんですね(笑)」

福山 「そう(笑)。で、後輩たちには、“君たちもここまでやらなきゃダメなんだよ”と発破を掛けられたらいいなと思っていました。そのラインを設定するのが一番大変でしたけど、あとは楽しいばかりでしたね」

――実際に、先輩たちからは何か言われましたか?

福山 「あの人たちは言葉にはしてくれないので、大変な思いをしたかどうかは分からないです(笑)。でも、ヨモツザカ役の子安(武人)さんは、古川くんのツッコミを聞いた時に『おっ』と笑顔になっていたので良かったなと」

古川 「そうでしたか! 良かった…!」

――今回、福山さんはOPテーマも担当されていますよね。「DIES IN NO TIME」はどんな楽曲にしようという思いで制作されましたか?

福山 「吸血鬼という分かりやすいワードがあるけれど、共同で作詞している松井(洋平)さんとの間で『吸血鬼要素はゼロにしよう』『“すぐ死ぬ”の方をメインにしよう』という共通見解がありました。それで、頭から最後までをロードムービーにして、途中には“乗り越えられない地雷が何個もあるんだけれど、そこで死んでもいいじゃない? 最終的に行きたい場所に着けばいいじゃない”という思いを当てはめていきました。ドラルクは何度も死んで生き返りますから…。つまりは『DIES IN NO TIME(=すぐ死ぬ)』という言葉の意味をプラスの方向に逆転させるのが狙いでした」

古川 「“行きたい場所に着けばいいじゃない”というのは、このご時世だとより深く感じるものがありますよね。それに、跳ねるようでおしゃれなメロディーラインなので、“コメディー作品の幕開けだな!”と、ものすごく感じられます。劇中で叫んだり死んだりして穏やかでない日常を送っているドラルクとロナルドだけれど、OPの映像では楽しそうに踊っているところも“踊るように生きているんだ”というふうに受け取れますし、聴いているだけでも楽しいです。まだフルコーラスを聴いたことがないので、早く聴いてみたいですね」

福山 「そうそう、実はフルで聴いてもらうと『スペランカー』というワードが入っているんだよ」

古川 「そうなんですか! なんてこった(笑)」

――“ゲーム史上最弱”と呼ばれる主人公が登場するゲームのタイトルですよね。ちょっとした穴でも落ちたらミスになるという…。

福山 「ええ。ドラルクって、『スペランカー』みたいじゃないですか。しかも、ドラルクはクソゲー好きなので、“ここまで代弁できる言葉もないな”と思い入れてみました」

古川 「面白いです。ドラルクって、ある意味最強の『スペランカー』みたいですね!」

【プロフィール】

福山潤(ふくやま じゅん)
11月26日、大阪府出身。射手座。A型。現在、アニメ「新幹線変形ロボ シンカリオンZ」(テレビ東京系)などに出演中。4thシングル「DIES IN NO TIME」が発売中。同曲は「吸血鬼すぐ死ぬ」のOPテーマでもある。


古川慎(ふるかわ まこと)
9月29日、熊本県出身。天秤座。A型。主な出演作はアニメ「ヴィジュアルプリズン」(TOKYO MXほか)、「RE-MAIN」(2021年)など。11月17日にはミニアルバム「ROOM Of No Name」をリリースする。

【作品情報】

「吸血鬼すぐ死ぬ」
11月1日
TOKYO MX
月曜 午後11:00~11:30
BS11 イレブン
月曜 午後11:30~深夜0:00
※地域により放送日時が異なります

盆ノ木至の漫画を原作に描くハイテンションギャグコメディー。吸血鬼退治人・ロナルド(古川)によって住んでいた城を破壊された最弱吸血鬼・ドラルク(福山)は、ロナルドの事務所で共同生活をすることに。そんな彼らが、さまざまな吸血鬼や吸血鬼退治人と出会う。

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(応募期間:2021年10月27日正午~11月2日午前11:59)

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取材・文/松本まゆげ 撮影/飯田かずな

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