<社説>最高裁判事の国民審査 「憲法の番人」見極めよう

 31日に投開票される衆院議員選挙は、小選挙区と比例代表の投票に加え、もう一つ重要な投票の機会がある。最高裁判所裁判官の国民審査である。「憲法の番人」と呼ばれる最高裁の裁判官がその職務にふさわしいかを国民が直接決める機会となる。 国権の礎となる三権の一つである司法権の頂点に民意を反映させる重要な投票となる。一方、これまで罷免された裁判官はおらず、民意を反映させることができているかについては、制度が形骸化しているとの指摘もある。

 今回、対象となるのは前回の2017年の衆院選以降に就任した11人。沖縄関連では辺野古サンゴ移植訴訟で、防衛局の移植申請を許可するよう農林水産相が沖縄県に指示したのは違法と県が訴えた訴訟は今年7月に上告棄却となった。林道晴氏、長嶺安政氏が適法と判断。宇賀克也氏は「県が許可しなかったことに違法性がない」と反対意見を付けている。

 さらに、辺野古の埋め立て承認撤回の効力を失わせる国土交通相の裁決の取り消しを県が求めた関与取り消し訴訟は20年3月、県側の上告が棄却された。今回の対象者で関与したのは深山卓也氏で、第1小法廷の裁判長を務めた。

 米軍機の飛行差し止めを求める爆音訴訟は住民側の上告棄却の決定が続いた。第2次普天間は岡村和美氏、三浦守氏、草野耕一氏が関わり、第3次嘉手納は宇賀氏、林氏が関与した。

 夫婦別姓を認めない法の規定に関して大法廷は今年6月、合憲と判断。深山氏、林氏、岡村氏、長嶺氏が「国会で議論、判断されるべき」との多数意見に賛同した。宇賀氏、草野氏、三浦氏は違憲と判断した。

 国民審査については、各裁判官がどの訴訟でどういう判断を下したのかについて、判断材料になる情報が少ないという批判は根強い。今回の対象者11人は過去2番目の多さで、関与した裁判も異なり、職にふさわしいかを国民が判断するのは容易ではない。

 戦後にこの制度が始まって以降、罷免された裁判官は一人もいない。辞めさせるとの×印の投票が有効投票の過半数となると罷免されるが、これまで×の割合が最も多かった裁判官で15.17%。ここ最近は10%を下回る。

 この結果を見れば、国民が信任を判断し続けていると考えることは難しい。判断することができていないか、審査投票の仕組みの周知が不十分といった制度上の欠陥があることは疑いないのではないか。今後、制度の見直しを急ぐべきである。

 とはいえ、失うことのできない大事な投票の機会である。今回の対象11人は、定年の関係からこれが「最初で最後の国民審査」となることもある。審査公報や報道を参考にしっかりと見極め、国民の権利を行使したい。

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