【動画】「癒やされる…」猫の仮装衣装店、コロナ禍で人気 インドネシア元教師が製作、二足歩行にも

スーパーマンの仮装用衣装を着てスケボーに乗ったウギ君=9月

 飼い猫にアニメのキャラクターやさまざまな職業の服を着せて楽しむ、猫向けの仮装用衣装専門店がインドネシアにある。衣装は正面から見ると猫が二本足で歩いているように見えるのが特徴で「かわいらしい。癒やされる」と人気を博している。新型コロナウイルス禍で愛猫家らはペットと自宅で過ごす時間が増え、巣ごもり需要拡大が人気を後押しした。(共同通信=岡田健太郎)

 【動画】https://www.youtube.com/watch?v=H1hafk0Rz7M

 ▽SNSで評判に

 首都ジャカルタから南方に車で1時間半の西ジャワ州ボゴール県ジャンパン村。住宅が並ぶ一角で、ミシンの音が響く。経営者のフレディさん(40)が9月、猫数匹と共に出迎えてくれた。

 フレディさんは元小学校教師。裁縫は元々趣味で、大学時代に専門学校で半年間、本格的に学んだ。猫好きだっためいに猫の服を作ってあげたことがきっかけで、教師退職後の2017年、猫用衣装の仕立屋を始めた。会員制交流サイト(SNS)で評判が広まり、18年から仮装用の衣装のインターネット販売を始めたところ、地元メディアにも取り上げられるようになった。

 ▽侍や着物風も

 衣装は上半身に人形のような手が付いていて、下半身部分を猫の両前足にはかせる。正面からは猫が二本足で立ち、とことこと歩いているように見える。洗って何度でも使える素材を使っている。

インドネシア独立戦争の英雄の仮装用衣装を着たウギ君を歩かせるフレディさん=9月

 1番人気は、イスラム教の聖地メッカへの大巡礼(ハッジ)を果たし、尊敬の対象となるイスラム教徒が着る服を模した衣装。インドネシアは人口の9割近くがイスラム教徒で、世界最多のイスラム教徒を抱えている。

 このほか、アメリカン・コミックのヒーロー「スーパーマン」やインドネシア独立戦争の英雄、ジャカルタ土着の民族の伝統衣装から公立小学校の制服を模した衣装まで数十種類をそろえる。侍や着物風の衣装も試作中だ。

侍を模した衣装を着たウギ君=9月、インドネシア・ジャンパン村(共同)

 ▽強制は駄目!

 ただ、猫によっては着るのを嫌がり、フレディさんの飼い猫7匹のうち嫌がらないのは3匹だけだという。「(着せるのを)強制してはいけない」とフレディさんは注意を促す。

 3匹のうちの1匹、クリーム色でふかふかの毛並みが特徴の雄猫ウギ君(3歳)は店のショッピングサイトのトップモデルを務める。取材時もご褒美の餌をもらいながら、さまざまな仮装のリクエストに気前よく次々と応じてくれた。

 インドネシアは世界第4位の人口を抱える。猫好きが多く、ペットショップも増え続けていることから、フレディさんは「マーケットは大きい」と話す。ミシン9台を使い、フレディさんと弟2人の計3人での家族経営だ。

着物風の衣装を着たウギ君とフレディさん=9月(共同)

 1日の注文は5~10着で、価格は1着当たり3万3千~22万ルピア(約250~1700円)。より多くの人が楽しんでもらえるようにと、今年2月に値下げを実施した。

 ▽雇用で助けたい

 「大事なのは仕事があること。コロナ禍で多くの人が失業する中、感謝している」とフレディさん。コロナ前に月120万ルピアだった売り上げは、コロナ禍の巣ごもり需要をとらえ、現在は3~5倍に増えた。

インドネシアの公立小学校の制服を模した衣装を着たウギ君とフレディさん=9月、ジャンパン村(共同)

 最近は米国、タイ、フィリピン、マレーシアからの注文も入っている。フレディさんは「日本や中東の国々など、各地域の人々の好みに合った衣装を作り、世界各地でもっと売っていきたい。コロナ禍で多くの人が職を失った中、(店を拡大して)大勢の人を雇い、助けたい」と語った。

フレディさんがオンライン販売する猫向けの仮装用衣装=9月(共同)

 ▽広がる多様な趣味

 コロナ禍での自粛生活で、インドネシアではほかにも、健康意識の高まりから自転車人気が急上昇したほか、野菜栽培や観賞魚飼育を始める人が増えている。

 ジャカルタ中心部から車で約1時間のバンテン州チプタット地区では、自転車に荷台を取り付けて配達などに使える「カーゴバイク」の専門店の人気が高まった。経営者のアラムさん(34)によると、価格は1台1300万ルピアほどだが、予約が続いたという。

アラムさんが製作した青色のカーゴバイク

 土を使わずに育てる「水耕栽培」も注目。ジャカルタ南方西ジャワ州デポック市にある「スルア・ファーム」では、丸い穴が多数開いた水耕栽培用のパイプがずらりと並ぶ。ロックウールに発芽させた苗を各穴に設置。パイプ内を流れる水と液体肥料から根が養分を吸い取り、日光で成長する仕組みだ。

 財務責任者のエエンさん(25)によると、畑栽培のものより割高だが、コロナ流行後の野菜志向の高まりで出荷量は通常より増えた。「水耕栽培は場所を取らず早く育つので効率的。畑仕事ほど疲れないのでおすすめです」と話す。

 西ジャワ州ボゴール県パルン地区では、グッピーやベタ、コイといった観賞魚専門の市場が活況だ。市場運営者のダモさん(59)によると、市場は2004年に開設。国内最大規模の観賞魚市場で、約300の売り場に売り子約450人が登録する。コロナ流行後、市場全体の売り上げは増加。「自粛生活でたまったストレス解消のため、観賞魚の人気が高まっている」と語った。

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