父子家庭と母子家庭には大きな収入格差が…今必要なシングルマザーのキャリア支援

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。10月20日(水)放送の「フラトピ!」は特別編。選挙では大きな争点になりにくい「シングルマザーのキャリア支援」について取材しました。

◆シングルマザーにつきまとう金銭的な不安

今回、番組が取材したのは小学3年生の長女、6歳の次女、3歳の長男と大阪で暮らす29歳のシングルマザー。彼女は3人の子どもに恵まれましたが、約2年前に夫の女性関係が理由で離婚。結婚を機に故郷・福岡から出てきた彼女は実家のサポートがなく、周囲に知人・友人もいないなか、福岡に帰っても仕事があるのか、保育園にすぐに入れるのかなどさまざまな不安があったため、いろいろと考慮した結果、大阪に留まり1人で子どもを育てると決めたそう。

現在は派遣社員として週5日労働。時給1,270円で実働7時間半のため1ヵ月の収入は20万円弱。子どもが大学卒業するまで、元夫がマンションの家賃を支払うことになっているものの、保育園の費用や食費を賄うには給料と母子手当では将来に不安があると吐露。

「一番上の子は『ダンスの先生になりたい』と言っていて、でも今はダンス教室も離婚して辞めてしまった。私がシングルマザーになったから(子どものやりたいことを)狭めちゃうのは一番したくない」と話します。キャリアアップして収入増を目指すも現実は難しく、「非正規労働から正規の労働になるだけでも全然違うし、保障や収入もボーナスの有無などもあるし、やはりそこで全然差があると思う」と率直な思いを語ります。

厚生労働省は、キャリアアップのため資格取得を目指すシングルマザーに向けて生活費として1ヵ月10万円を支給する「職業訓練の給付金制度」を設けています。

しかし、そこにも問題があり、現在彼女はこの制度を利用できていません。というのも、この制度を受けるためには、学校に通いながら働けるよう両親など誰かのサポートが必要だから。両親が福岡に住んでいるため難しく、どんなシングルマザーでもキャリアアップができる制度を求め、「ひとり親の自分にとって何が明るい未来かといえば、子どもたちがやりたいことを、背中を押してあげられる、『やってみな』って言えるようになっておきたい」と胸中を明かしてくれました。

◆ひとり親の大きな課題、賃金問題ともうひとつは?

今回取材したシングルマザーのリアルな声を聞き、キャスターの堀潤は昨今話題になった"親ガチャ”という言葉を引き合いに、子どもたちの機会均等化を求め、そうした状況を作るためにも自身の選挙区にこの問題について積極的に発言している候補者がいるのか、各政党がどんな主張をしているのか「ぜひ調べてほしい」と訴えます。

インスタメディア「NO YOUTH NO JAPAN」代表の能條桃子さんは、こうした状況を作ったのは「新自由主義改革」と指摘。そして、「非正規雇用を増やしていった結果であり、教育費の高騰、子どもの将来のために貯蓄しなければいけないなど、そういうところも含めた構造的な問題」と話し、この根深さを案じます。

一方、慶應義塾大学 総合政策学部4年の阿部将貴さんは、親を亡くした子どもたちの支援などを行う一般財団法人あしなが育英会の職員をしており、そこでの課題について言及。賃金の問題に加え、"長時間労働”に就きやすい傾向があると言います。そうなると、大学無償化制度など便利な情報を取りにいく時間が失われてしまうため「賃金と労働時間、両輪としてこの問題を解決できないか」と苦慮。

現在、ひとり親世帯は母子家庭と父子家庭があるなかで、世帯数としては圧倒的に母子家庭が多いものの、平均年間収入は母子家庭が243万円、父子家庭が420万円と約1.7倍の差があります。さらには「養育費」の問題も。離婚したものの養育費支払いの延滞が多く、問題は山積しています。

ではどこから手をつけるべきなのか。阿部さんは「法的機関、無償で法的措置が取れる仕組みの拡充」を訴求。そして、仕組みを作ってもそれを受けるべき母子家庭の母親などが知らなければ意味がないため、「労働時間が減り、でも同じような賃金を得られるようにしてこの問題を解決するべき」と主張します。

また、養育費の問題について能條さんは「多くの先進国は行政が代わりに支払いを請求する制度がある。日本でも兵庫県の明石市などでは導入されているので、自治体レベルでそうした動きがもっと広がれば」と期待していました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag

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