河北春秋(10/28):どんなに打っても人気では及ばないと感じた…

© 株式会社河北新報社

 どんなに打っても人気では及ばないと感じた。「よし、それなら、記録でチョーさんを圧倒してやろう」。通算868本塁打のプロ野球記録を持つ王貞治さんが記した『回想』にある▼現役時代、巨人で長嶋茂雄さんとの「ON砲」で黄金時代を築いた。「長嶋さんがいなかったら、あるいは私の数々の記録は生まれていなかったかもしれない」。かけがえのない手本だったという▼「燃える男」「ミスタープロ野球」と称される長嶋さんが文化勲章受章者に決まった。「本当にうれしいこと。野球界で初めてなので何とも言えない気持ちでいっぱい」。喜びを語る姿は今なお輝きに満ちていた▼史上初の天覧試合でサヨナラ本塁打を放ったスーパースターは独特な一面も愛される。デビュー年に一塁を踏み忘れて本塁打1本が帳消しとなり29本にとどまった。ソックスを片方の足に二重にはき「俺のもう片方の知らないか?」と聞いたなど「伝説」は多い▼東京五輪開会式で松井秀喜さん、王さんの3人で聖火ランナーを務めた。「車いすでも」というオファーだったが、リハビリを重ね立って左手でトーチを持ち聖火を受けた。「長嶋さんなら誰も文句ないんじゃないかな。日本中の人が喜んでくれる」。切磋琢磨(せっさたくま)した王さんの祝福が全てを物語る。(2021.10.28)