【大学野球】「自分の色に染めていいよ」ヤクルト2位の明大・丸山を救った指揮官の言葉

明大・丸山和郁【写真:小林靖】

「もう明治のユニホームを着て戦うことができない…」

指揮官の顔を見ると、堪えていたものが溢れ出した。神宮球場で行われた東京六大学秋季リーグ戦は27日、明大と法大が6-6で2戦連続で引き分けた。両校にとっての今季最終戦。ヤクルト2位指名の明大の主将・丸山和郁外野手(4年)は試合後、ベンチで田中武宏監督に肩を叩かれると、4年間の思い出が走馬灯のように駆け巡った。

取材会見場に現れた丸山の目は真っ赤だった。「もう、この明治のユニホームを着て戦うこともできないですし、校歌を一緒に歌うことが出来ないのでとても寂しい気持ちでいっぱいです」。隣に座った田中武宏監督が取材を受けている間も、鼻をすする音は止まらなかった。

立派な主将としての背中を見せ続けたが、就任時は右も左もわからなかった。そんな丸山を救ったのが田中監督の一言だった。

「最初はどうしたらいいかわからなくて、監督に怒られながらずっとやっていました。監督に『自分の色に染めていいよ』と言われ、そこで割り切って自分のチームにしていこうって自信に繋がりました」

前橋育英高(群馬)の時から大事にしていたという“凡事徹底”を自分のカラーとしてこの一年、奔走した。田中監督の話に及ぶと、丸山の目にはまた涙が浮かんだ。

コーチ時代から野球を学んで成長、田中監督へ尽きない感謝の思い

「コーチ時代から、ずっと野球を教えてもらって、監督になられてからも自分を使っていただいて……苦しいときも一緒になって練習付き合ってくれたりすごく思い出がいっぱい頭に浮かんできて……4年間、監督と一緒に野球が出来て本当に……」

最後は言葉にならないほど指揮官への想いは溢れた。丸山の成長について「4年間ずっと一緒にやってきて、楽しませてくれたなって。そういう想いが強いです」と田中監督も目尻を下げた。

明治のユニホームに身を包み、大好きな指揮官の隣で受ける最後の取材が終わっても、丸山はなかなか会見場から動かなかった。しばらくすると、法大の加藤重雄監督と主将の三浦銀二投手(4年)らが姿を現した。「ありがとうございました!!」背番号10を天井に向けながら、深く礼をした。

大学野球生活を終え、「明治を出て、明治の看板を背負っていくというのを常に思って、これからも明治OBとして恥ずかしくない行動やプレーをしていきたいと思います」。明大を愛した主将は、これからも人間力野球を体現し続ける。(市川いずみ / Izumi Ichikawa)

市川いずみ(いちかわ・いずみ) 京都府出身のフリーアナウンサー、関西大学卒。元山口朝日放送アナウンサー時代には高校野球の実況も担当し、最優秀新人賞を受賞。NHKワースポ×MLBの土日キャスター。学生時代はソフトボールで全国大会出場の経歴を持つ。

© 株式会社Creative2