活字文化の日

 最近、実際に体験した漢字の“偉大さ”の話。「回覧板」の「覧」がすっと思い出せず、そこだけひらがなで書いた。回らん板…まわらん。やきもきする自治会長さんや班長さんの顔が浮かぶ▲ロングセラーのカップ麺、期間限定パッケージで見つけたのは「謎肉祭」。なぞにくさい。これでは原因不明の異臭騒ぎだ。漢字で書いてもらって良かった▲少し話が違うが、常用漢字表にない文字は使わないのが新聞の基本ルールだ。「拉致」や「破綻」は何年か前まで「ら致」「破たん」と書いた。漢字の方がしっくりくる▲例外もある。新型コロナの流行で出現頻度がぐんと上がったのは「医療の逼迫」。「ひっぱく」と読みがなを付けて使う。逼の訓読みは「せまる」。「まん延防止」の「まん」は植物のつるの「蔓」で「蔓延る」と書くと「はびこる」。かなと漢字の交ぜ書きなのは法律の表記に従ったため▲昨日27日は読書週間の初日で「文字・活字文化の日」だった。私たち新聞社もその担い手として努力や精進を…と書きかけたが、「覧」が出てこないようではその資格は怪しい▲言い訳ではないが、パソコンやスマホのおかげで「読めるけど書けない漢字」も増えた。ねえ、バラって書ける? ずいぶん前の「しょうゆ」のCMをひょっこり思い出した。(智)

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