29日開館 恐竜博物館・高江晃館長インタビュー 野母崎の魅力発信、研究拠点化も

「誰もが安全に楽しく学べる施設にしたい」と抱負を語った高江館長=長崎市恐竜博物館

 恐竜専門の博物館として国内3カ所目となる「長崎市恐竜博物館」が29日、同市野母町にオープンする。長崎半島などで見つかった恐竜の化石や全身骨格など約180点を展示。過疎化が進む野母崎地区の振興にも期待がかかる。1日付で館長に就任した高江晃さん(56)に見どころや展望などを聞いた。

 -どう運営していくか。
 当館は全国でも海に最も近い博物館の一つ。「フィールドミュージアム」という言葉もあるように、館内に限らず周りの海や自然を含めた「面」的な魅力をアピールする。何よりも安全に、そして誰もが、楽しく学べる施設にしたい。

 -具体的に「面」とは。
 恐竜の絶滅は気候変動によると言われるが、人類が直面している地球温暖化とも無縁ではない。恐竜の歴史を学びつつ、野母崎の自然を楽しむサイクリングや、海ごみ拾いをする環境保護活動などのプログラムも設けたい。市民や修学旅行生、企業などの多様な立場で「全ての生物にとって優しい環境」とは何か考え、学ぶ場にできれば。

 -市中心部から遠い。
 9月まで勤めた市役所では観光行政にも携わり、野母崎地区にはたびたび通ったが、軍艦島(端島)がきれいに見える風景に魅せられた。距離をハンディにせず、恐竜博物館に行くまでの道中も「目的」となるような仕掛けを考えたい。

 -観光行政の経験をどう生かすか。
 市では市外や県外での認知度を上げ、どう魅力を発信するのかに取り組んだ。例えば長崎くんちやランタンフェスティバル、夜景など多くの魅力があるのに、県外でひとえに「軍艦島」が注目され、「中の思い」と「外のニーズ」のずれを痛感した。今も東京の知人から「なぜ長崎で恐竜」と言われるが、長崎出身の学者が明治時代に「恐竜」と和訳したこと、日本初のティラノサウルス科大型種の化石が長崎で発見されたことなどを効果的に発信する。話題づくりのイベントを定期開催したり、市民によるファンクラブ組織をつくったりする視点も必要。

 -教育、研究施設としての役割は。
 修学旅行の誘致は重要。新型コロナ禍で旅行先が県内に限られる学校も多いが、野母崎にとってはチャンス。展示やワークショップは、説明板などで全てを説明し尽くすのではなく、子どもたちの主体的で継続的な学びを促していく。
 研究用にエックス線装置や3Dプリンターなどの最新機材もそろっている。近隣の研究機関とネットワークを構築し、九州各地で発掘された化石の調査研究にも装置を使ってもらうことで、長崎が研究拠点になれば。

 【略歴】たかえ・こう 大村市出身。元長崎市職員で文化財課長や教育総務部長、理財部政策監などを歴任。端島(軍艦島)の上陸観光解禁やクルーズ船誘致、同市内の世界文化遺産登録など観光行政にも携わった。好きな恐竜は「やっぱりティラノサウルス」。

© 株式会社長崎新聞社