<社説>21衆院選 脱炭素社会 原発の位置付けが焦点だ

 地球規模の気候変動への対応が喫緊の課題となる中で、温暖化対策の重要性が高まっている。今衆院選で各党は温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)の排出をなくしていく「脱炭素社会」の実現を明確に打ち出しており、世界的な要請である温暖化対策をどの党が確実に進めていけるのか政策能力が問われる。 その実現に向けた手法に違いが見られる中で焦点となるのが、原子力発電の今後の位置付けだ。再生可能エネルギーを拡大し、原発への依存は下げていくという点は各党一致するものの、原発の新増設や当面の間の稼働を認めるのかなど、脱原発の方向性には濃淡がある。

 東日本大震災に伴う東京電力福島第1原発事故から10年がたった。今も収束しない原発事故の過酷さを忘れるわけにはいかない。原発に依拠しないエネルギー政策の在り方について、踏み込んだ議論が求められる。

 政府はこのほど、2030年度の温室効果ガス排出量を13年度比で46%削減する地球温暖化対策計画を策定し、削減目標を国連に提出した。中長期的な政策指針であるエネルギー基本計画では、30年度の電源構成について、再生可能エネルギーを現状の約2倍に当たる36~38%まで拡大する目標を掲げた。日本として火力発電への依存度を低下させる姿勢をはっきりと打ち出したが、原発の割合は20~22%で据え置いた。

 温室効果ガスの排出量を30年度に半減、50年度には実質ゼロにする政府目標の達成に向け、各党は「再生可能エネルギーを最大限導入し、主力電源化」(自民)、「2050年の自然エネルギー電力100%を目指す」(立民)など取り組みを競っている。

 一方で、自民は脱炭素化に原発は必要とし、既存原発の再稼働を認め、小型炉開発への投資促進や核融合発電の実用化も掲げる。これに対し、連立を組む公明党は「原発ゼロ」を唱えている。

 野党も各党で進め方は異なる。立民や社民などは原発ゼロを主張し、共産は30年までの原発と石炭火力の廃止を明示する。維新は既存原発の段階的な廃止の一方、次世代炉の研究強化を掲げる。国民は代替電源の確立まで原発を活用する姿勢を示す。

 このほか技術革新を促す産業政策や、「炭素税」導入などの手法が争点となる。

 島国日本のさらに離島県である沖縄にとって、エネルギー問題は生活に直結する。

 沖縄は化石燃料の構成比率が高く、直近の原油など燃料価格の高騰は、電気料やガソリン価格の上昇という形で暮らしに影響を与えている。温暖化による海水面上昇や大規模化する災害など、世界的に進む気候変動は海洋島嶼地域に暮らす私たちや次世代の将来に関わっている。

 エネルギー消費者としての責任を持ち、各党のエネルギー政策を見極めたい。

© 株式会社琉球新報社