戦力外通告に「落ち込みゼロでした」 悲観する暇すらもったいない“育成根性”

中日・三ツ間卓也【写真:荒川祐史】

中日戦力外のサイド右腕・三ツ間卓也「調子がいい自負があった」

プロ野球選手としての岐路に立たされても、全く動じない。それどころか、前だけを見て突き進もうとしている。今季限りで中日を戦力外となった三ツ間卓也投手。6年目のサイド右腕は、通告直後にトライアウト受験を決断した。「他球団に行けるか、現役引退か」。潔さを貫けるのは、プロの世界で這い上がってきた“育成根性”が原点にある。

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10月7日。名古屋市内の球団事務所に呼ばれ、来季契約しないことを伝えられた。同じく戦力外通告を受けて驚きを隠せないチームメートもいたが、三ツ間はいたって冷静に受け止めていた。

「正直、自分の中では『あっ! 分かりました!』という感じで。落ち込みはゼロでしたね」

実感が湧かなかったわけでも、呆気に取られたわけでもない。「調子がいいという自負があったので。現実的な考えで、気持ちは次の球団に向いていました」。東京五輪の中断期間に行われたエキシビションマッチで無失点を続け、1軍に昇格。結果だけ見るとわずか5試合登板で防御率6.75だが、オフに着手したフォーム改良には手応えを感じた。再び2軍生活となった9月以降も無失点で終え、シーズンを通しての球威や制球に自身は納得。他球団での再起以外に選択肢は考えられなかった。

「もう待てない」コーチに先発転向を志願→支配下勝ち取る

自らの右腕で未来を切り開いてきた実績も、背中を押す。2015年の育成ドラフト3位で、ルートインBCリーグの武蔵ヒートベアーズ(現・埼玉武蔵ヒートベアーズ)から中日に入団。リリーフとして2軍戦で結果を残しても支配下の声はかからず、「もう待てない。インパクト残さないとダメ」と投手コーチに先発を直訴した。与えられたチャンスに完封などで応え、1年目のオフに2桁背番号を勝ち取った。

「育成からのスタートだったので、1年勝負だと思って変わらずやってきました。先を見据えてやっていないので、戦力外になったからといって気持ちに変化はないですね」。支配下となった2017年は35試合登板で11ホールドを挙げるも、翌2018年は4試合登板どまり。2019年は29試合登板で再び1軍で存在感を示したが、2020年は疲労骨折で出遅れ、4試合に終わった。山あり谷ありの6年間。戦力外もひとつの谷でしかなく、ただ登ることしか考えない。

通告翌日に挨拶回りを済ませ、翌々日から練習を再開。12月8日に開催される「プロ野球12球団合同トライアウト」に照準を合わせている。「目標は明確なので。生きるか死ぬか。他球団から声が掛からなかったら、引退するつもりです」。立ち止まっている暇すらもったいない。しぶとく、泥臭く、新天地を掴み取る。(小西亮 / Ryo Konishi)

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