中国の罠にハマった河野太郎と日本端子|山岡鉄秀 火のないところに煙を立てる天才・朝日新聞は、日本端子の問題をなぜ追及しないのか。いまなお「モリカケ、桜」に御執心の「立憲共産党」も、この問題にはなぜダンマリなのか。政治家の利益相反問題は、河野太郎が総裁候補になり得ないヒラ議員であったとしても許されることではない!

中国のサイレント・インベージョン

今回ほど真面目に自民党総裁選を注視したことはなかった。結果次第で日本崩壊にまっしぐらに向かう恐れがあったからだ。また、自民党がサイレント・インベージョン(目に見えぬ侵略)に侵されやすい体質にあることが改めて認識されて戦慄した。

先進国であれば当然厳しくなくてはならない政治家の利益相反問題がないがしろにされ、議院内閣制が骨抜きにされかねない現状がある。自民党はここで一度立ち止まり、自らを律し直さねばならない。

去る10月1日、豪ニューサウスウェールズ州のグラディス・ベレジクリアン州知事が突如辞任した。その理由は彼女がICAC(腐敗防止独立委員会)の捜査対象になったことである。まだ起訴されたわけでもないが、捜査が長引くことが予想されるとの判断から辞職を決意した。では彼女には何の疑いがかけられたのか。それは、かつて交際していた議員への利益供与である。

2012~18年にかけて、ベレジクリアン氏は州当局者として複数の団体に助成金を給付する立場にあった。ベレジクリアン氏は当時、元州議のダリル・マグワイア(Daryl Maguire)氏と交際関係にあったのだが、マグワイア氏の選挙区にある団体にも助成金が給付された。

ICACの主要捜査対象となっているのはマグワイア氏の方で、現地の報道によると、マグワイア氏は過去に州議会の事務室で、中国人の入国ビザの不法取得を仲介して現金を複数回受け取ったと認めた。

他にもICACは、州議会アジア太平洋友好委員会の委員長であるマグワイア氏が、中国の太平洋諸島への事業進出に便宜を図って私益を得たとして追及している。この議員に対する調査にベレジクリアン氏が利益供与の疑いで含まれることになり、辞任に至った。

ICACは中国のサイレント・インベージョンに堕ちた議員を摘発しているわけだが、ここでもうひとつ重要なのは次の事実だ。マグワイア氏は、ニューサウスウェールズ州議員でありながら、民間企業であるG8way International 社の取締役であることを隠していた。

同州の法律では、州議員や州政府高官は利益相反を避ける目的で、副業の内容を公表することが義務になっている。今回の件は、豪州において、たとえ州レベルの議員(日本なら地方議員)であっても、利益相反の問題が厳しく問われることを物語っている。

河野太郎へ公開質問状を送付

翻って日本はどうか。

私は河野一族の同族会社である日本端子の問題を追及し、数人の番組共演者と公開質問状を河野太郎氏に送付したが回答はなかった。これほど明らかな政治家の利益相反問題はないのだが、主流メディアも野党もまともに追求できていない。

現役の新聞記者になぜ追求しないのか質問したところ、「十分な知識がないうえに、嫌われたくないから」という回答だった。まして、日本端子問題を追及し過ぎたから高市早苗候補が勝てなかったとか、日本端子追及は陰謀論だとかの説は愚の骨頂である。全く基本が理解できていない。もちろん、野党にとっては河野政権誕生が望ましかっただろうが。

河野家の同族企業である日本端子は河野太郎氏も4,000株を保有するので、本来は政治家として利益相反の可能性がないかICACのような第三者機関によって厳密に審査される必要がある。言うまでもなく、一般企業家の事業とは根本的に異なる。以下、その要点をまとめる。

日本端子株式会社の中国法人のひとつ、北京日端電子有限公司は中国大企業のBOE(北京京東方科技集団)との合弁企業だが、BOEは元々中央軍事委員会からの発案で設立された筋金入りの軍事企業であり、米国の輸出規制のエンティティリストに記載されているファーウェイと戦略的提携を結んでいる。

このような企業との合弁は日本政府も実行する安全保障上のハイリスク企業排除の方針に抵触し、軍民両用の観点から人民解放軍の強化に関与していると言える。

BOEの取締役会長(董事長)の陳炎順氏は中国共産党の優秀党務工作者300名の筆頭に名前が挙がる人物であり、社内には100人単位の共産党組織が存在する、完全なる共産党支配の企業である。このような企業との合弁は極めて不適切である。

太陽光パネルとウイグル強制労働

日本端子株式会社の主要ビジネスのひとつに太陽光パネル事業が挙げられている。既知のとおり、中国の太陽光パネル製作にはウイグル人が強制労働させられているとされ、国際的な非難が集まっている。

河野太郎氏は自らが日本端子を通じてウイグル人ジェノサイドに関与していないか説明する責任がある。なお、日本端子はこの点について、自社HP上に9月27日付「お知らせ」として以下の記述を載せている。

「太陽電池モジュール向け製品についてのお知らせ:中国市場において弊社及び弊社グループ会社では、太陽電池モジュール向け端子・コネクタの生産及び販売実績は操業時から一切ございません。また、中国市場以外における太陽電池モジュール向け汎用端子・コネクタの製造販売は、2015年8月を以て終了しております」

これは非常にミスリーディングな記述である。日本端子とそのグループ企業が2015年以降も太陽電池モジュール関連事業を行っていることは明白だからだ。

日本端子の会社案内には太陽光発電を利用したスマートハウスの各機能を繋ぐ端子・コネクタを供給し、「未来に続くクリーンエネルギーとして注目を集める太陽光発電システムなど、日本端子はこれからのエネルギー開発に貢献しています」とあるが、このパンフレットには主な沿革として2017年8月に本社を神奈川県平塚市に移転するまでの記録が記載されている。つまり、2015年以降も太陽光発電関連のビジネスを継続しているのである。

また、元警視庁刑事・坂東忠信氏の調査によれば、日本端子の子会社のひとつ、广州日覃贸易有限公司(広州日覃貿易有限公司)を中国サイト「愛企査」で検索したところ、太陽光発電装置及びコンポーネントの販売が経営範囲に入っていることが確認された。日本端子のパンフレットによると、この子会社の設立は2017年5月とある。

以上の問題点に対して、河野太郎氏本人および支援者からは「端子・コネクタは様々な業種に提供しているので、対中政策に影響しない」「80%は自動車向けで、太陽光ビジネスの割合は低い」「中国においても顧客のほとんどは日系企業」などの反論が聞かれる。中国政府との癒着や、人権弾圧への加担を否定しようとしている。

ヒラ議員であっても許されない理由

しかし、そんな甘い議論は通用しない。2021年6月、中国では「反外国制裁法」が成立した。中国政府が「反中行為を行った」と判断した場合、中国にある合弁会社や独資会社、日本にある親会社や経営者、その家族に制裁を行うことが可能になったのだ。

仮に、河野太郎氏が日本国総理大臣になり、中国が嫌がる政策を実行した場合、中国が反外国制裁法を発動し、日本端子の在中子会社や日本端子自体を制裁することが起こりうる。つまり、河野太郎氏は、国益を優先するか、自らも所有する日本端子や在中子会社を護るかの板挟みになり、利益相反が生じるのだ。

仮に顧客のほとんどが日系企業だったとしても同じことだ。中国共産党が支配する企業との合弁が適切であるか、太陽光パネルビジネスを通じて人権弾圧に加担していないか、という疑念に加え、中国大陸でビジネスをする限り、中国共産党に生殺与奪の権を握られているのであり、必然的に利益相反に陥るのである。

これは、河野太郎氏が総裁候補になり得ないヒラ議員であったとしても許されることではない。このような根源的な問題を看過している自民党は猛反省しなければならない。

自民党の党員票は工作のターゲット

さて、総裁選で敗れた河野太郎氏は「党員100万人新規拡大構想」を明らかにし、党員票で圧勝して総裁になることを目指すと言い出した。党員票とはいったい何なのか。

誰でも4,000円払えば自民党の党員になれる。各議員は党員数ノルマを課せられており、集められなければペナルティをポケットマネーから払うことになる。いきおい、金はこちらで払うから名義を貸してくれといったことが横行し、自分が自民党員だと自覚しておらず、投票用紙が送られてきてびっくりしたというようなケースが頻発することになる。

入党資格は以下だけだ。
①わが党の綱領、主義、政策等に賛同される方
②満18歳以上で日本国籍を有する方
③他の政党の党籍を持たない方

そして、「総裁選挙の前2年継続して党費を納めた党員の方は、総裁選挙の有権者になります」とある。ただしこの条件は説明もなく緩和される。

申し込みはネットで完結し、国籍などのチェックや本人確認がなされているとは思えない。もちろん、真面目な党員も存在するが、どこの誰ともわからない、本人すら自覚していない有象無象の党員が大量に存在し、実質的に日本国総理大臣を選出する自民党総裁選の有権者となっている。

そんな党員票が第1回投票では議員票と同等の50%の比率を占めて大きな影響力を持つことになる。これでは議院内閣制を否定することになりかねない。

また、こんな脇の甘いシステムを、外国政府を含む反日勢力が利用しないはずがないではないか。河野太郎氏が目論むのと同様に、外国政府が100万人の票買収に成功すれば、自分たちにとって都合のよい候補を総理大臣にしてしまうことができるのである。

自民党は直ちに制度を改正し、議員投票のみにするか、党員投票資格を別に定め、より厳しい条件を課し、本人確認を徹底しなければならない。

このように、有力議員は中国政府に逆らえば美味しい中国ビジネスを失う構造に堕ち、実質的に総理大臣を選ぶ自民党総裁選は外国による工作の格好のターゲットになっている。これほどまでにサイレント・インベージョンに侵されていることを自民党総裁選が教えてくれたのである。

自由民主党に早急な対処を求める。

著者略歴

山岡鉄秀(Tetsuhide Yamaoka)

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