鷹の世代交代を進める“期待の星”は誰? 藤本博史新監督が名前を挙げた選手は…

会見に臨んだソフトバンク・藤本博史2軍監督【写真提供:福岡ソフトバンクホークス】

藤本新監督「2軍にも活きが良い選手が多い。十分にチャンスはある」

ソフトバンクは29日、来季の新監督に藤本博史2軍監督が就任すると発表した。来季以降、課題とされている世代交代をどう進めていくのかに注目が集まるが、主役を張るのはファームに育ててきた“藤本チルドレン”だ。

藤本新監督は、南海時代を知る数少ない鷹戦士の1人。福岡ダイエー時代には岸川勝也氏(現:解説者)とともに打線の主軸を担い、平和台球場を沸かした。2011年から10年以上に渡り、1軍や2軍の打撃コーチ、3軍監督、2軍監督を歴任し、多くの好打者を育ててきた。

来季からは、常勝軍団の立て直しを図るため、世代交代という大きな課題に挑んでいくが、その主役となるのが手塩にかけて育ててきた若鷹たちだ。就任会見では「2軍にも活きが良い選手が多い。十分にチャンスはある」と語るとともに「若い選手が出てこないと強いチームは作れない」と若鷹たちの奮起に期待を寄せる。

その筆頭となるのが、2年連続ウエスタン・リーグの本塁打王を獲得し、今季は1軍のシーズン後半だけで7本塁打を記録したリチャードだ。藤本監督は育成選手として入団した時から群を抜いた長打力に目をつけ、2軍監督となった今季は40打席無安打が続いても4番を任せ続けてきた。「リチャードはメンタルが弱いので、毎日試合前に2、3分の(個別)ミーティングをやってきた」とし、常に選手に寄り添う姿勢を貫いてきたことも明かした。

ソフトバンクのリチャード【写真:藤浦一都】

ベテラン、中堅の奮起にも期待「若手と競争するのがベスト」

リチャードに続いて「すごく良くなっている」と名前を挙げたのが、高卒3年目のシーズンを終えた水谷瞬と野村大樹だ。水谷は高い身体能力を武器に、今季ウエスタン・リーグ69試合に出場して打率.276、4本塁打、29打点を記録。エキシビションマッチではタイムリー三塁打を放ってアピールした。野村も79試合出場と2軍レギュラーに定着し、打率.263、2本塁打、27打点を記録。チャンスに強い打撃に磨きをかけたが、藤本監督は「守備の方をしっかりやらないと」と課題も口にする。

また、今季半ばに育成から支配下登録を勝ち取った渡邉陸も“打てる捕手”として打率.263、4本塁打。高谷裕亮が構想外になったことで、来季は1軍昇格のチャンスが巡ってくる可能性はあるだろう。彼らが1軍で結果を残すようになるには、それなりの時間を要するかもしれない。しかし、2軍戦で起用し続け優れた素質を知り尽くした藤本監督が1軍を率いることはチャンスを広げるプラス材料となるはずだ。

もちろん、1軍で86試合に出場した三森大貴、ファームで最多安打を記録し1軍の最終戦で初本塁打を放った柳町達などが来季のレギュラー獲りを狙う中、ファンが強く望んでいるのが上林誠知の復活だろう。2017年、2018年に大ブレークした上林は“藤本チルドレンの長男”ともいえる存在だ。再び輝きを取り戻せるよう、秋季キャンプ、自主トレ、春季キャンプとバットを振り続けてほしい。

それでも藤本監督は「若手だけでは野球はできない」とし「ベテラン・中堅が一体となって、特に中村晃、柳田、今宮、松田あたりがしっかり引っ張って若手と競争するのがベスト」と、今の主力選手が世代交代の波に抗う姿勢を見せてくれることを望んだ。

「得点圏で全部打つのは無理だが、チャンスに強い選手にたくさん出てきてほしい。取れるところでしっかり点が取れる野球を目指したい」という指揮官。その要望に応えるのはベテラン、中堅の経験値か、若鷹たちの勢いか。来季はソフトバンクの世代交代を巡るチーム内競争がより一層激しさを増す。(藤浦一都 / Kazuto Fujiura)

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