成人=18歳に引き下がると、税金の世界はどう変わる?

来年(2022年)4月1日より、成人年齢が現行の20歳から18歳に引き下げられます。

この決定の背景には、「18歳以降の若者への自己決定権の尊重」、「諸外国との足並みを揃える」など、さまざまな理由がありますが、実際に成人年齢が引き下がることで、私たちの社会生活にも大きな変化が伴うでしょう。

「成人20歳⇒18歳」となることで、税金の制度ではどのような部分に気をつければよいのでしょうか。ポイントを解説していきます。


諸外国の状況は?

世界の国々では、何歳からが成人として扱われるのか。G7(先進7か国)を例に出すと以下の通りです。

主要国の成人年齢

カナダ 18歳(6州)/19歳(4州)※州によって違いあり。
フランス 18歳
ドイツ 18歳
イタリア 18歳
イギリス 18歳
アメリカ 18歳(37州)/19歳(2州)/21歳(1州)※州によって違いあり。
日本 20歳

上記の国以外でも、世界中の多くの国々が成人=18歳としており、むしろ成人=20歳としている方がマイノリティであることが分かります。

日本も古くは江戸時代、15歳で元服=大人の仲間入り、とされていました。昔は地域によってばらつきがあったようですが、明治29年に制定された法律により、「成人=20歳」と定められました。

今後は、世界基準に足並みを揃えていくと同時に、18歳からは一人の大人として自立を促し、責任をもって社会に参加させる動きが強まっていきます。

新成人になる対象の生年月日は?

改正された法律の施行は、2022年4月1日からです。つまり、2022年4月1日時点で、18歳~19歳の人は、その日から「成人」となります。

変わること。変わらないこと

まず、私たちの多くの生活に関わる主な点について、以下の表にまとめました。

それでも飲酒や喫煙、ギャンブルなどは、今まで通り20歳からというルールに変わりはありませんが、国家資格の取得年齢が下がったことなどは、優秀な人材が世に出るチャンスがこれまでより増えた、と言えるでしょう。

一方で、各種の契約年齢が引きさがったことは、注意が必要なポイントです。

親の同意を必要とすることなく、自分の意思で契約行為をする権利を有します。権利があるということは、同じように義務も発生するということ。今後は、お金にまつわる社会のルールをきちんと学んでおかなければ、あとあと大きなトラブルに巻き込まれてしまう危険性を有しています。

例えば、悪徳商法やマルチ商法のような消費者契約。これまでは、「親の同意が無かったから」という理由で取り消すこともできました。今後は同じ理由での取り消しは効かなくなります。

また消費者金融でも、親の同意を必要とせずに契約が可能となります。「お金の使い方を知らない」、「お金の怖さを知らない」、そんな理由で後悔しないために、お金の教育の必要性は高まるでしょう。

また、NISAの加入対象も「成人」とされていたため、18歳からに引き下げられます。当然、投資・運用に対する一定の知識やルールが必要になっていきます。

ただでさえ、投資教育を受ける機会が少ない日本ですから、今後は10代のうちから、投資に関する教育が必要になる時代が迫っていると感じます。

税金に関する分野の変化・注意点

■個人住民税

住民税には、「未成年者」のうち前年の合計所得金額が135万円以下の者は非課税になる、という規定があります。この「未成年者」の定義が、2022年4月の施行から18歳に引き下げられます。

その人の状況にもよるため、あくまで目安としての数字ですが、例えば18歳や19歳で、月収17万円程度を稼いでおり、年収205万以上の収入があった場合、今までは掛からなかった住民税を、年間9万円程度、納税する必要になる計算になります。

■相続税、贈与税

〇未成年者控除

法定相続人として相続を受けた場合、20歳未満の場合は、「10万円×20歳に達するまでの年数」が、相続税額から控除されます。
例 18歳の場合 10万×2年=20万円の税額控除

改正後は、18歳に達するまでの年数に引き下げられます。
例 18歳の場合 10万×0年=0万円

〇相続時精算課税制度

これは60歳以上の贈与者から、20歳以上の推定相続人(または孫)に対して、上限2,500万円までの贈与額については、相続が発生するまで納税が繰り延べられる制度ですが、「18歳以上」に引き下げられます。

この制度は、「節税対策」としては使いにくいものですが、使用用途を制限せずに、纏まったお金を一度に贈与をすることができます。計画的に使うことで、生前のうちに、相続時の家族間の争いを防ぐために役立てられる制度です。

〇直系尊属から贈与を受けた場合の贈与税の税率の特例

簡単に言うと、直系尊属(祖父や祖母、父や母)から受けた贈与について、それを受け取った子や孫は、第三者から受け取った贈与に比べて低く、特別な税率で計算してもよい、というルールです。

今まで、贈与を受け取る側の年齢は「20歳以上の者」と定められていましたが、この年齢も18歳に引き下げられます。つまり、今までよりも2年早い段階で、一定の相続対策が可能になった、と解釈できます。


上記は、今回の改正によって伴う変化のごく一部と言えます。社会の仕組み全体に与える影響は小さくありませんので、おそらくこの他にもさまざまな「調整」が行われることは予想できます。だからこそ、準備ができることはいろいろあります。

特に、お金に関する「各種契約」の部分は、何かあると大きな痛手になることも考えられます。これから成人になる若者自身はもちろん、親として、今のうちから始める「お金の教育」は、きっと将来必要になってくるでしょう。

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