【新体操】引退の皆川夏穂 ケガで東京五輪出場逃すも…「美しさや優雅さは見せることができた」

皆川夏穂(東スポWeb)

また1人フェアリーが別れを告げた――。新体操の世界選手権(北九州市・西日本総合展示場)を最後に現役引退を表明していた2016年リオデジャネイロ五輪代表の皆川夏穂(イオン)は「感謝の気持ちでいっぱい。まだまだ踊っていたい気持ちはあるけど、ここまでかなと思う」と神妙に語った。

28日に行われた個人種目別予選のリボンでは、長い手足を生かし、高難度の技を成功させると、会場から拍手が沸き起こった。演技途中にバランスを崩すミスもあり、15位で予選敗退に終わったが「持ち味である美しさや優雅さは、最後まで見せることができた」と振り返った。

17年世界選手権のフープで銅メダルに輝き、日本選手では個人種目別で42年ぶりとなる表彰台に立った。19年世界選手権では東京五輪の国別出場枠を奪取するなど、第一人者として活躍してきた。東京五輪のメダル獲得に向けては、メンタル面を強化。かつて本紙に「メンタル面に関して、メンタルトレーナーさんに診てもらっている。診てもらうだけじゃなくて、自分で生かして自分のものにできるようにトレーニングしている。緊張したときの気持ちの切り替え方であったりとか、気持ちのコントロールの仕方ですかね」と明かしていた。

ダンス&ボーカルグループ「三代目J SOUL BROTHERS」のパフォーマンスも参考にしてきた。「ライブはドームとかでやるので、大きい会場でも遠くのお客さんに伝えるようにしている点を見習いたい」。大ファンということもあり、試合前にはルーティンとしてさまざまな曲を聞いて、気持ちを高めていた。

しかし、神様は残酷だった。内出血の影響による圧迫で血行障害を引き起こし、筋腱神経組織が壊死(えし)する「コンパートメント症候群」により、右脚の状態が悪化。20年12月に手術を受けたが、6月の選考会では東京五輪切符を逃した。

最後はケガに泣き、目標にしてきた東京五輪の舞台に立つことはできなかったが、最後まで戦い抜いた皆川。その姿は最高の輝きを放っていた。

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