待望論も12年実現しなかった“立浪政権” 就任会見に表れた中日の危機感と本気度

中日の新監督就任会見に臨んだ立浪和義氏【写真:小西亮】

大島オーナーが同席「英知を、エキスを授けていってもらいたい」

名古屋が、いや東海地方が待ちに待ったスター監督が誕生した。現役時代は一筋22年で、“ミスタードラゴンズ”として親しまれた立浪和義氏の就任。2009年に引退して以降はグラウンドから遠ざかっていたが、13年ぶりに竜のユニホームに袖を通す。満を持して託された、再建の使命。29日の就任会見でも、球団フロントの危機感と本気度が滲んでいた。

「強いドラゴンズを復活させて、ファンの方がワクワクするような野球をする球団に育ててほしいという願いを込めてお願いをしました」

会見の冒頭、立浪氏の隣に座った大島宇一郎オーナーが要請の意図を語った。前任の白井文吾・現名誉オーナーは高齢だったということもあって、与田剛氏ら近年の監督就任会見に同席することはなかった。フロントも新体制となり、総帥自らが登壇するという事実が“球団一丸”の象徴にも映る。

チームは2011年以降、10年優勝から遠ざかっている。2004年から8シーズンに渡って落合博満監督が築いた“黄金期”の記憶が際立つように。コロナ禍で短縮シーズンだった昨季こそ8年ぶりのAクラス入りを果たしたものの、優勝争いにはほど遠かった。そして今季も序盤から下位に低迷。貧打は深刻で、「強竜復活」の足音は聞こえてこない。

自他ともに待望の監督就任、球団社長「近い将来、優勝してくれるものと…」

大島オーナーも「なかなか長い低迷から脱することができていません」と現実を直視。僅差をモノにできない勝負弱さに元凶を見出す。「一戦一戦をどう勝ち切って、上位チームとの競り合いを制して、長いシーズンをどう戦うのか。身を以て知っている立浪さんに、ぜひとも英知を、エキスを授けていってもらいたい」と勝負手に命運を託す。

立浪氏は2013年のWBCで打撃コーチを担い、今春の中日キャンプでは臨時コーチを務めたものの、シーズンを通した指導者の経験はない。自身も「ドラゴンズで強いチームを作るために指導者になりたいとの思いはずっと持ってました」と語るように、“竜の象徴”の指揮官就任は悲願でもあった。内外では常に待望論が渦巻いていた中、ついに実現した新政権。圧倒的な実績とスター性に裏打ちされた人気は言うまでもなく、再建のアイコンとしては他にいないとの声もある。

会見に同席した吉川克也球団社長は「10年優勝していないということで、周りから私もやんややんやと言われております」とも。“いつになったら……”というファンや関係者のため息をひとまず止めるためにも、立浪監督という強烈な話題はうってつけとも言える。「来年というわけにはいかないかもしれませんが、近い将来、優勝してくれるものと思っております」と、新指揮官の双肩に目一杯かけた期待。重責を跳ね飛ばし、常勝軍団を作り上げることができるのか――。その手腕が問われる日々が始まる。(小西亮 / Ryo Konishi)

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