三菱 新型アウトランダーPHEVは約20万円の価格アップも納得できる仕上がり! 注目はSUVとも思えない走りと内外装の仕上がりにあった

三菱 新型アウトランダーPHEVの予約受注が2021年10月28日よりスタートした。初代モデルよりもスタート価格が約20万円ほどアップしているが、大幅に質感が向上した内外装デザインや先進装備、さらには走行性能を考えれば納得のデキなのだった。今回は発表を前に一足お先にサーキット試乗が叶ったので、新型アウトランダーPHEVの完成度をご紹介する! 結論からいえば素直にオススメできる一台です。

三菱 新型アウトランダーPHEV

新型アウトランダーPHEVは走行性能だけじゃない! 全方位で大幅進化へ

いよいよ真打ち登場。三菱 アウトランダーPHEVがおよそ9年ぶりにフルモデルチェンジを受け、全車がPHEV、つまりプラグインハイブリッドモデルとなって発表された。安価なガソリンエンジン搭載モデルがなくなったことで価格は452万1100円〜と高額な方向にシフトした印象を受けてしまいがちだけど、果たしてその価値があるのかどうか、気になっておられる方も多いことだろう。

いきなりだけど、その答えは間違いなくあると思う。というのも、発表に先駆けてプロトタイプに試乗し、その出来映えを体験してきたからだ。数日前に公開されたエクリプスクロスPHEVの試乗記も、実はそこを探るための比較材料としての意味合いも兼ねてのものだった。

初代アウトランダー、エクリプスクロス、そして満を持しての新型アウトランダーという三菱のPHEVの進化の流れを身体で知りたいと思ったからだ。

果たして新型アウトランダーPHEVは、キモのPHEVのシステムだけじゃなく従来型から全方位的によくなっていて、期待を越える仕上がりだったのだ。

ダイナミックシールドデザインも第二ステージへ!? 新型アウトランダーPHEVは派手ながらも落ち着いたデザインがイイ

実車を前にして最初に感じたのは、ルックスに対するホッとした気分だった。ティーザーサイトなどを見てイメージは頭の中にあったけど、クルマは実際に見てみないとホントのところは判らない。

発表時に世間を震撼させた(?)現行デリカD:5の主張の強い顔は、今や三菱のラインナップすべてに貫かれようとしている流れだ。デリカD:5の顔が好きな人もいれば苦手な人もいて、だいぶ慣れてきたとはいえ、最近オラオラ系嫌いが進んでる僕ははっきりと後者だ。

けれど、新型アウトランダーではそこがかなり洗練されて来てるように感じられた。とりわけ明るめのボディカラーを選べば、グリル両脇にあるヘッドランプとのトーンの差が少ないから、かなり落ち着いて見える。

三菱のフラッグシップモデルらしい見た目に!

初代モデルはモデル途中からダイナミックシールドデザインに変更された。だが、新型アウトランダーPHEVは開発当初からダイナミックシールドの採用が決定していたためにまとまりのあるデザインに

初代アウトランダーPHEVの美点のひとつといえるのは、水平線を基調とした落ち着きのあるスタイリング。中には複雑な線が多過ぎて視覚に煩いと感じられるSUVもあるなか、シンプルにすら感じられて好感が持てたものだった。

それと較べればやや賑やかに思えるところもあるけれど、新型も落ち着きのあるシルエットをしていて、個人的にはいいなと感じられた。何せ今や三菱のラインナップのフラッグシップといえるモデルなのだ。大人がすんなり納得できる雰囲気を持ってなくてどうする? なのである。

注目すべきは内装の仕上がりも、一部懸念点も! 3列シートの操作性はバツグンだった

ダッシュボードなどにはソフトパッドを採用し、上質な仕上がりとなっている

インテリアも、フラッグシップらしくかなり上質になった印象だ。ドライバーズシートに座ると、シンプルな水平基調の整然としたダッシュボード周りが目に入ってきて、視界に優しい。

身体が触れる部分にはしっかりとソフトパッドがあしらわれていて、触感がいい。シートの座り心地もなかなかのものだ。視覚的にも居心地としても、なかなか快適。フラッグシップに相応しいといっていいだろう。

樹脂パーツに注目! ドアパネルなどには硬めの素材を採用

ドアハンドル周辺には硬めの素材を使用しており、この部分にもソフトパッドの採用を期待したいところ

ちょっと惜しいなと感じられるのは、一部の樹脂パーツにちょっとばかり安っぽく見える素材が使われていること。もちろんフラッグシップであってもクルマ作りはコストとの戦いなのだから、どこかで妥協が必要になるのは当たり前のこと。それにちっとも気にならない人だっているだろう。というか、そちらが多数派なのかも知れない。

けれど、僕は気になった。ここまで仕上げておいてここだけ……と、もったいなく感じてしまったのだ。

3列目シートの格納は超簡単! 積極的に使いたくなる仕上がり

ちなみに5人乗りだけじゃなくて7人乗りも用意されているのもトピックのひとつ。その3列目となるリトラクタブル式シートにも工夫があって、開閉がとっても楽だった。

多くの場合、3列目は宝の持ち腐れにはなりがちだけど、これなら積極的に使ってもいいな、と感じられるほど。ここに嬉しさを感じる人も、少なからずおられることだろう。

PHEVシステムは初代モデルと同様もモーター出力やバッテリー容量も拡大

先代モデルと同じパワーユニットを搭載するが、モーターの出力アップなどがなされている

2.4リッターエンジンに前後ひとつのモーターを組み合わせる、というPHEVを構成する基本的な仕組みはこれまでと共通。もちろんエンジンはよほど強力なチカラが必要なときとバッテリーの充電量が不充分なとき以外はエンジンを駆動せず、基本的にはバッテリーの電力でモーターを回して走行する、という考え方も変わっていない。

だが、エンジンは効率化を進めて94kW(128ps)から98kW(133ps)へと僅かなパワーアップを果たし、モーターの出力もフロントが60kW(82ps)から85kW(116ps)へ。リアが70kW(95ps)から100kW(136ps)へと強化されている。

ちなみにモーターの最大トルクは、フロントが137Nmから255Nmと大幅に向上し、リアが195Nmと先代同様だ。車載のリチウムイオンバッテリーの容量も、13.8kWhから20kWhへと40%以上も増量されている。

新型アウトランダーPHEV最大の特徴は外部給電機能! 一般家庭へ12日間も供給可能

充電については、AC200V/15Aの普通充電器で満充電まで7.5時間、急速充電器を使えば約38分で80%とアナウンスされており、停車中にエンジンだけで充電すれば約94分で80%。

最大1500Wまでの電気機器が使えるし、V2H機器を使ってエンジンでの発電を組み合わせればおよそ12日分の一般家庭電力量を供給できるという。

フル充電状態からのEV走行距離も、WLTCモードで57kmから87kmへと大きく数値を伸ばしている。

先代モデル同様にバツグンの静粛性! さらに乗り心地も大幅進化

そんな具合にパワートレーンが強化されていることもあって、走りはじめてから力不足を感じたことなど一度もなかった。

車重が2トンを越えているというのに、いかなるときもじれったい想いをすることがないというのは、考えてみたら凄いことだと思う。EVの状態で全く難なしにスルスルと走り出し、アクセルを床までベタ踏みするとドーンと強烈な加速を味わわせてくれる。

今回の試乗はサーキットのコースのみという限定的なシチュエーションで行われたのだが、公道走行を意識した速度域で走ってみると、車室内が極めて静かなのは当然として、乗り味が素晴らしく滑らかでラグジュアリーなセダンを走らせてるかのよう。

乗り心地も上々! 荒れた路面でも振動などの不快感はなし

サーキットは路面そのものが一般道と違って滑らかだから乗り心地を窺い知るのが難しいのだが、コーナーのイン側やアウト側に設えられているゼブラゾーンの盛りあがってる部分にハイスピードでわざと乗り上げるようにして走ってみても、不快な突き上げのようなモノは全く伝わってこない。

おそらく日常的に街中や高速道路などを走ることになっても快適さを感じていられるんじゃないか? と、当たり前のように想像ができる。

走行性能が評判のエクリプスクロスPHEVを凌ぐデキ! 走り好き注目の走行モードも好印象

そしてサーキットであるわけだから、一般道では試すことのできない領域にも踏み込めるわけだ。SUVなのにそこまで必要? という領域でも走らせてみた。

従来のS-AWCは、前後のモーターの駆動力配分と、前輪左右のトルク配分を行っていたが、新型では後輪左右トルク配分が追加されるなど、こちらも改良を受けている。そのうえ場所が場所なのだ。運動性能を試してみたくなるのが道理だろう。

いかなる状況でも思いのままに曲ってくれる! 濡れた路面でも超安定

濡れた路面や荒れた路面でもあんてした走りを見せてくれるのはさすが! のひとこと

いや、これが素晴らしかった。僕は天が味方してくれたのかドライ路面とウエット路面が混在する状況でコースを走ることができたのだが、エクリプスクロスPHEVと同じく新たに設けられたターマックモードで走ってみると、乾いたコーナーではまるでクルマが曲がりたがってるかのような、極めてシャープな曲がりっぷりを見せてくれた。

グラリと来るような妙なロールも感じさせず、ステアリングの操作量に対して素直かつ的確にクルマが向きを変える。それも見事なまでの安定感を伴って、目覚ましいと感じられるほどのスピードで、イメージしたままのラインをきっちりとトレースしてくれる。これは出来のいいスポーツカーか? と思わされるほどに。そうしたときのクルマの動きの軽快さはも、しかしたらエクリプスクロスPHEVをも凌ぐレベルかも知れない。これはワインディングロードに持ち込んでも結構楽しめそうだ。

その状態で濡れたコーナーに突入すると、当然ながらクルマは滑りやすくなるわけだが、クルマがズルッと滑りはじめると素早く制御が効いて姿勢を安定させる方向に持っていこうとしてくれる。

もちろんモードをグラベルに切り替えればリアが振り出す量は抑えられるし、スノーに切り替えれば基本的にはリアをほとんど振り出させることなく、外側にはらんでいこうとする動きを綺麗に抑えてくれる。

ワンペダルドライブも可能! 新型アウトランダーPHEVは素直にオススメできる一台

シフト横のスイッチを押せばワンペダルドライブモードに。回生レベルもパドルシフトで調整できるため、新感覚のドライブが味わえるのも魅力だ

モード切り替えによるクルマの動きの変化は予想していた以上で、これを駆使しながら走ると、わりと無敵に近いんじゃないか? なんて思ってしまった。

さらに付け加えるなら、モードによっては回生ブレーキがかなり強力な効きを見せてくれるので、走りの気持ちよさを楽しむくらいのペースであれば、サーキットであってもワンペダルドライブで全く過不足のない走行ができてしまう。

慣れてさえしまえば、ちょっとしたワインディングロードを右足ひとつで、しかもスポーティにドライブすることだってできる。これはなかなかおもしろい体験だと思う。

試乗できた周回数が少なかったので、本当はまだまだ試してみたいことはあったのだけど、僕が今回皆さんにお届けできる報告はこれまで。いずれ近い将来、一般道で走らせることができる日が来ると思うので、また別の機会に別のことをレポートさせていただけるといいな、と思ってる。

先進安全装備も全車標準装備! 全方位で文句なしの仕上がり

だが、絵巻物のように長くなってしまうのもどうかと思うのであえて触れていないが、三菱の公式ウェブサイトやカタログを見てみれば、例えば室内や荷室、ADASなどなど、新しいアウトランダーPHEVがあらゆる部分で進化を遂げていることはそこはかとなく理解できるんじゃないかと思う。

発売となるのは12月16日。現在は先行受注を行っているところだ。少なくともPHEVに関する技術と4つのタイヤを制御する技術に関してはピカイチ級であることは間違いない。クルマがショールームに並んていたら、ぜひともジックリと見に行っていただくことを強くオススメしておきたい。

【筆者:嶋田 智之】

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