奈良から「折り鶴」が飛んで来た 不思議な縁が長崎・新上五島の交流紡ぐ

折り鶴を糸でつなぐ利用者とそれを見守る芳賀所長と佳美さん(右から4人目と5人目)=新上五島町

 この夏、奈良県で暮らすおばあさんが作った折り鶴が、さまざまな人を介して遠く離れた長崎県新上五島町に届き、住民同士の交流が生まれた。「折り鶴が飛んできた」。住民たちは不思議な縁を喜んでいる。
 始まりは奈良県の幼稚園だった。
 6月、奈良県生駒市立俵口幼稚園に、近所の池田司さん(72)が折り鶴の寄贈の相談に訪れた。その後、大型のポリ袋14袋分の折り鶴が届けられた。
 折り鶴は、池田さんの母シゲ子さん(100)が約10年前から毎日、新聞の折り込みチラシを10センチ四方くらいに切って、折りためたもの。同幼稚園は園内で七夕飾りにした。
 職員の原田結花さん(51)は折り鶴を見て、古い記憶がよみがえった。故郷の新上五島町青方郷では毎年、七夕祭り(8月上旬)になると、家の軒下にさまざまな飾り付けをしていたっけ-。折り鶴の一部を譲り受け、原田さんは、同町に住む妹、芳賀佳美さん(50)に送ることにした。
 佳美さんの夫良介さんは長崎新聞青方販売センター所長を務める。夫妻は、受け取った折り鶴を商店街や地域のお年寄りに配り、七夕飾りなどに使った。奈良のシゲ子さんの折り鶴はその後も同センターに届き、夫妻は今月6日、浦桑郷の「グリーンヒル・かみごとう」(山田崇徳理事長)のデイサービス利用者にプレゼントした。
 利用者らは針で折り鶴に糸を通し、千羽鶴に挑戦。「奈良から飛んで来たとってよ」「100歳で上手に折っとるね」などと驚き、「(シゲ子さんの)長寿、健康にあやかりたい」と元気に手を動かした。
 「つなげたこの鶴を、来年の七夕祭りで飾るそうだから見に行きたい」。楽しげにこう話すのは利用者の原菅乃(すがの)さん(98)。手先が器用で、今も帽子や巾着を毛糸で編む。「みなさんが昔、針仕事をしたのを思い出すと言いながら目を輝かせている姿を見ていてうれしくなった」と芳賀さん夫妻も喜んでいる。
 シゲ子さんから最初に新上五島町に折り鶴が届いた時、住民らはお礼の色紙などを送った。同施設の利用者も、原さんの手編みの帽子などを届けたという。
 シゲ子さんの息子、池田司さんが本紙の電話取材に答えてくれた。
 「母は帽子を『かわいいね』と言って大事にしている。一緒に入っていたかんころもちも焼いて食べた。とてもおいしかった」
 「母は元気で、毎日100羽は鶴を折っている。多すぎて捨てるには忍びなかった折り鶴が長崎まで飛んで行き、2人ともびっくりしている。何かのご縁なんですね」
 折り鶴が紡いだ不思議な縁。一人一人の小さな思いやりが距離を超えて一つにつながった。

自分で編んだ小物入れを見せる原菅乃さん=新上五島町
原さんが編んだ帽子を手にほほ笑む池田シゲ子さん(右)、司さん=奈良県生駒市(原田結花さん提供

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