読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、49歳、会社経営の方。総資産1億6,500万円を築くことができたため、リタイアして、世界一周の旅に出たいという相談者。ただ、その後の生活を心配しています。いくらくらい、旅行にお金をかけてよいのでしょうか? どんなプランなら実現可能? FPの飯田道子氏がお答えします。
会社を経営している、49歳独身です。
貯金3,000万円、投資総額が1億3,500万円を貯めることができました。そこで、早期退職して、夢だった世界一周旅行に行きたいと思っています。ただ、世界一周旅行でお金を使ってしまった後、働かずに暮らしていけるのかが不安です。どれくらいお金をかけて大丈夫でしょうか?
【相談者プロフィール】
・49歳、会社経営、独身
・お住まいの都道府県:神奈川県
・住居の形態:持ち家(戸建て)
・毎月の世帯の手取り金額:16万円
・毎月の世帯の支出の目安:13万6,000円
【毎月の支出の内訳】
・住居費:5,000円
・食費:3万2,000円
・水道光熱費:1万円
・教育費:9,000円
・保険料:1万1,000円
・通信費:1万円
・車両費:6,000円
・お小遣い:1万5,000円
・その他:3万8,000円
【資産状況】
・現在の貯金総額(投資分は含まない):3,000万円
・現在の投資総額:1億3,500万円
飯田:今回は、1億円貯まったので、世界一周旅行へ行ったみたいと考えている相談者様です。現状、金銭的には余裕はあるものの、まだ49歳という年齢からすると、旅行を楽しんだ後に訪れる老後が心配とのことです。相談者様が世界一周旅行を楽しむためには、どのような点に注意すれば良いのでしょうか? また、老後の心配をしないでもすむのかを考えてみたいと思います。
どのように世界一周を楽しむのかを考えよう
「世界一周旅行を楽しみたい」とのことですが、まず、考えて欲しいのが、どのような経路で世界一周をするのかということです。主な方法として考えられるのは、飛行機を乗り継いで世界を旅する方法。もう一つの方法としては、クルーズ船で世界を旅するという方法があります。
ただ、いずれの方法にもメリット・デメリットがあります。
飛行機とクルーズ、メリットとデメリットは?
飛行機で旅する場合のメリットとしては、自分で手配するため、好きなところへ行ける・泊まれる・好きなものが食べられるという点があります。デメリットとしては、チケットの予約や宿泊先の手配などが非常に面倒になるという点があります。あわせて、どれくらいの費用がかかるのか、予想がつきにくいことがあげられます。
クルーズ船で旅する場合のメリットとしては、パッケージツアーとなっていますので、予約さえしてしまえば、後はおまかせできるのが大きなメリットです。オールインクルーシブになっているツアーが多く、予算が立てやすいがメリットです。デメリットとしては、船が苦手なら無理ですし、退屈してしまう可能性があります。また、パッケージツアーゆえに好きな国や地域へは訪れないこともある点があげられます。
飛行機で世界一周をするなら、鉄道やクルーズを組み合わせると、かなり充実した旅にすることができますし、クルーズの場合は、早めに申し込めば割引が大きくなるので、浮いた分の費用を、他のことにも回すことができますよ。
どちらも魅力的なのですが、多くの人が憧れる、クルーズ船で世界一周をする場合、どれくらいの費用がかかるのかを確認してみましょう。
世界一周クルーズは、早く申し込むほど得になる
日本を代表するクルーズ船、飛鳥Ⅱの場合、同じ部屋であっても、申し込むタイミングによって価格は異なり、早く申し込むほど、値段は安くなります。最も安い部屋タイプはKタイプで基本料金580万円です。ただし、1人で乗船する場合は、160%アップするため、928万円になってしまいます。ただ、最も早い時期に申し込んだ場合に適用されるワールド特別割引が利用できれば、基本代金が20%割引の460万円。1人で乗船する場合は、736万円ですので、192万円も節約することができます。
4室しかないロイヤルスイート、Sタイプの部屋の基本料金は3,030万円です。1人で乗船する場合は200%アップの6,060万円。ワールド特別割引が利用できれば、2,420万円。1人で乗船する場合は、4,840万円です。実に、1,220万円も節約できます。
2022年のクルーズは割引があっても、わずかな割合です。金額は2022年、2023年ともに同じですので、2023年を狙ったほうが良いでしょう。
ちなみに、2023年飛鳥Ⅱの世界一周クルーズは横浜・神戸発着、ともに104日間。アジア、ヨーロッパ、北欧、北米、南米を回ります(2021年10月29日現在)。
「行きやすく、帰りやすい状態」を作るためのポイント
プロフィールに家族構成が書かれていないのですが、出かけている間の水道光熱費など、基本的な生活コストはかかります。預金口座にそれらの資金を準備することを忘れないでください。行きやすく帰りやすいようにしておきます。
また、会社を経営されており、早期退職されるとのことですが、今後、仕事は誰かに任せることになるのでしょうか? それとも完全にリタイアしてしまうのでしょうか。今はパソコン1台さえあれば、世界中どこへいても仕事ができる時代ですので、旅行中や今後も一定の収入が得られるような仕組み作りを考えても良いでしょう。
投資の一部は現金化するのが望ましい
ここで気になるのが投資総額1億3,500万円です。この金額はあくまでも現状の価格に過ぎません。世界一周旅行を楽しむのなら、5,000万円程度は解約して、普通預金や定期預金に移しておくようにしてください。
たとえば、世界一周旅行で旅費およびお小遣いで5,000万円使ったとしても、現状価格で、手元に1億1,500万円残っていることになります。これだけの金額が残っていれば、世界一周旅行を楽しんだとしても、老後の資金を心配しなくても良さそうです。
説明会に参加して具体的に考えてみて
クルーズ船は大変人気があり、高い部屋から埋まっていく傾向にあります。気になる部屋があれば、早めに押さえておくと良いですね。また、クルーズ船の説明会も行われていますので、まずは一度、参加してみてはいかがでしょうか?
世界一周は多くの人が憧れる旅行です。素晴らしい思い出が築けることを願っています。