小林可夢偉組7号車が逆転勝利。トヨタ、WECチームチャンピオン獲得/第5戦バーレーン決勝

 WEC世界耐久選手権第5戦バーレーン6時間レースの決勝が10月30日、バーレーン・インターナショナル・サーキットで行われ、マイク・コンウェイ/小林可夢偉/ホセ-マリア・ロペス組7号車トヨタGR010ハイブリッドが優勝。中嶋一貴も乗り込む8号車トヨタGR010ハイブリッドが2位となり、TOYOTA GAZOO Racingがワン・ツー・フィニッシュを飾り、今戦の結果をもって今季のWECチームタイトル獲得を決めた。

 WEC史上初の2週連続開催となっている“バーレーン連戦”の緒戦第5戦は、29日(金)に予選を終え30日(土)の決勝日を迎えた。晴天に恵まれた現地11時、レーススタート時点のコンディションはドライ路面、気温32度、路面温度は41度だ。

 レース結果次第では最終戦を待たずにチームタイトルを決めることができる状況で、シーズン終盤の連戦を迎えたトヨタ勢は、前日の予選で7号車と8号車がフロントロウを独占。スタートでは一瞬、コンウェイ駆る2番手7号車がチームメイトを先行したが、シケインの切り返しでセバスチャン・ブエミの8号車が順位を取り戻し、グリッド順位どおりのオーダーでオープニングラップを終える。

 マシュー・バキシビエールがドライブする36号車アルピーヌA480・ギブソン(アルピーヌ・エルフ・マットミュート)が3番手で続き、その後方では、LMP2クラス予選ワン・スリーにつけたJOTAの2台がポジションを落とし8番手、9番手に。代わって29号車オレカ07・ギブソン(レーシングチーム・ネーデルランド)が4番手グリッドからトップに浮上。ロイック・デュバル駆る70号車オレカ07・ギブソン(リアルチーム・レーシング)と22号車オレカ07・ギブソン(ユナイテッド・オートスポーツ)がトップ3を形成した。

 2秒前後の間隔で序盤から接近戦を演じるトヨタの2台は、スタートから30分過ぎに7号車がその間隔を詰めコンマ6秒差となる。同じころLMGTEアマクラスでは、予選10番手からハイペースで順位を上げてきた、藤井誠暢の777号車アストンマーティン・バンテージ(Dステーション・レーシング)がクラストップの車両を捉えて首位に立った。

 25周目、ポールスタートから順位を守ってきた8号車トヨタと2番手7号車トヨタが順位を入れ替える。しかし、翌周にはふたたび8号車がチームメイトを先行した。その周に7号車がピットに向かい8号車も次の周にピットインし、ブエミからブレンドン・ハートレーに交代した。ともに給油と左2輪交換を実施。7号車はコンウェイが2スティント目に入っている。

 8号車トヨタがトップのまま最初の1時間が経過する。このタイミングで、GTEアマのクラストップに立ち同2番手に7秒差をつけた777号車アストンマーティンは、藤井から星野敏にドライバーチェンジを行った。

 41周目にふたたびトヨタの2台が接近し、コンウェイがドライブする7号車が僚機の前に出る。この直後から7号車がじわじわと後ろを引き離す展開になる。30分後にはトヨタ2台のギャップは約10秒に開き、総合3番手を走る36号車アルピーヌとは約17秒差となった。

 そんななか迎えたハイパーカークラス2度目のルーティンピットタイミングでは、8号車トヨタのピットイン中に、777号車アストンマーティンから吹き飛んだリヤハッチを回収するためのフルコースイエロー(FCY)が出されたが、直前にピットインを終えていた7号車とのタイム差にはさほど影響せず。一方、追加の燃料補給を行った36号車アルピーヌは利を得て、満タン状態で8号車トヨタの7秒後方につける。

TOYOTA GAZOO Racingの8号車トヨタGR010ハイブリッド 2021年WEC第5戦バーレーン6時間レース
アルピーヌ・エルフ・マットミュートの36号車アルピーヌA480・ギブソン 2021年WEC第5戦バーレーン6時間レース

■ドライバーズタイトルはトヨタ勢に絞られる

 先のピットインでコンウェイからロペスに替わった7号車は、スタートから2時間過ぎの段階でオーバーシュートがあり、ハートレーから中嶋一貴に交代した2番手8号車トヨタにギャップを8.2秒に縮められる。その後、この2台の差は約5秒にまで縮まったが、21号車オレカ07・ギブソン(ドラゴンスピードUSA)のタイヤ脱落によって出された今レース2度目のFCYの間に入った3度目のピットイン後には11秒に開く。また、アルピーヌはFCYの恩恵を受けることができず、2番手の8号車トヨタから約1分の後れを取ることになった。

 これ以降は3名のドライバーが2スティント毎に交代していく作戦をとった7号車が、1スティント毎に替えていく僚友に対してふたたびギャップを築いていく展開となり、レース残り2時間で迎えたルーティンピット作業で、8号車トヨタが左フロントタイヤの交換に手間取り、約16秒を失ったことで事実上の決着を迎えた。

 フィニッシュまで残り1時間を約45秒のリードを持って迎えた7号車トヨタは、可夢偉のドライブで安定したラップを刻み続け、日没後の現地17時過ぎに3戦連続のトップチェッカー。51秒遅れてチェッカーフラッグを受けた8号車トヨタとワン・ツー・フィニッシュを飾りTOYOTA GAZOO Racingに、2021年WECのチームタイトルをもたらしている。

 ドライバー選手権では、ランキングリーダーの7号車組が優勝でさらにポイントを伸ばし、8号車の3名に対するポイント差を戦前の9から15ポイントに拡げた。こちらのタイトルの決着は来週の第6戦バーレーン8時間レースに持ち越されたが、今戦3位となったアルピーヌのドライバーたちは、7号車クルーとの点差が40ポイントに拡がったためワールドチャンピオン・タイトルの獲得チャンスを失っている。

 同じくチャンピオンシップ争いが熾烈なLMP2クラスでは、前述のとおりレース序盤は29号車オレカ07がリードしたが、レースの3分の1を消化する前に31号車オレカ07・ギブソン(チームWRT)がトップに浮上する。劇的な結末を経て“ル・マンウイナー”となった彼らは盤石な走りで中盤から終盤にかけてリードを確かなものとし、最後は後続に1分以上の差をつけ連勝を果たした。

 クラス2位表彰台はポールスタートながらオープニングラップで8番手に落ち、そこから着実に順位を挽回した28号車オレカ07・ギブソン(JOTA)が獲得。3位には最終盤まで続いた22号車オレカとのバトルを制した38号車オレカ07(JOTA)が入っている。
 
 LMGTEプロクラスは、今週の走り始めから見られた“フェラーリ劣勢”の構図が決勝レースでも崩れず。序盤からリードを奪ったポルシェGTチームの92号車、91号車ポルシェ911 RSR-19が完璧に近いレース運びでワン・ツー・フィニッシュを達成。対するAFコルセは51号車フェラーリ488 GTE Evoがクラス3位、僚友52号車が4位となった。

 GTEアマクラスでは777号車アストンマーティンが序盤に首位を奪ったものの、その後は33号車(TFスポーツ)と98号車(アストンマーティン・レーシング)のアストンマーティン・バンテージAMR同士による首位争いが繰り広げられ、中盤以降はTFスポーツのバンテージAMRがトップを快走する。

 レース終盤には77号車ポルシェ911 RSR-19(デンプシー・プロトン・レーシング)と、56号車ポルシェ911 RSR-19(チーム・プロジェクト1)がアストンマーティンにチャージをかけるが、フェリペ・フラガ駆る33号車が5.5秒差で逃げ切ってみせた。追い上げをみせたポルシェ勢はクラス2位、3位表彰台を獲得している。

 表彰台も期待されたDステーション・レーシングは、ピットガレージでの修復を要するアクシデントもあって順位を下げクラス11位完走に。木村武史がスタートパートを担当した57号車フェラーリ488 GTE Evo(ケッセル・レーシング)は、グリッド最後尾から順位を4つ上げクラス9位でフィニッシュした。

 厳しい暑さのなかでの一戦を終えたWECは来週、同じくバーレーン・インターナショナル・サーキットで開催される第6戦バーレーン8時間レースで、2021年シーズンのフィナーレを迎える。

チームWRTの31号車オレカ07・ギブソン 2021年WRC第11戦スペイン
ポルシェGTチームの92号車ポルシェ911 RSR-19 2021年WRC第11戦スペイン
777号車アストンマーティン・バンテージAMRと33号車アストンマーティン・バンテージAMR 2021年WRC第11戦スペイン
チーム・プロジェクト1の56号車ポルシェ911 RSR-19 2021年WEC第5戦バーレーン6時間レース
ケッセル・レーシングの57号車フェラーリ488 GTE Evo 2021年WEC第5戦バーレーン6時間レース

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