<金口木舌> 声を上げなければ

 基地や環境問題をテーマにした楽曲を作る、県出身の歌手を取材したとき、歌で世の中を変えられるかと質問した。返ってきた答えは「歌にできることは、きっかけをつくること」

▼歌が社会問題を解決するのではなく、聴いた人がメッセージを受け止めて行動することで、より良い方向に進めるという考えだった。自らの思いを発信することが第一歩になると教えてくれた

▼衆院選に合わせて県選挙管理委員会が制作した楽曲動画では「無言のままでは伝わらない」と強調し、1票を投じるよう訴える。若者の投票率向上のための動画だが、選挙で自分の意思を示すことは全ての有権者に求められる

▼県出身の二階堂ふみさんら芸能人14人が登場する投票呼び掛けの動画は、視聴回数が60万を超える。女性が投票できない時代があったことに触れ「(選挙で意見を)言えるのに言わないのはもったいない」との発言もあった

▼共同通信社の世論調査では8割近くの人が衆院選に「関心がある」と回答した。一方で、実際の投票率は低迷する。県内では過去3回の衆院選で50%台が続く。半分近くの有権者が無言のままでいるようだ

▼基地問題や経済振興、子どもの貧困など、解決すべき沖縄の課題は数多くある。コロナ禍で苦境に立ち声を上げたいと考える人も多いだろう。その気持ちを1票に込めることが、沖縄の未来を明るくするきっかけとなる。

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