松永浩美氏 古巣・阪神のCS突破策を提言「私なら…佐藤輝をスタメンで使います」

〝史上最高のスイッチヒッター〟松永浩美氏(東スポWeb)

惜しくも優勝を逃して2位でシーズンを終えた矢野阪神だが、監督就任2度目のクライマックス・シリーズ(CS)進出が決定。11月6日から巨人を迎えてファーストステージ(甲子園)を戦い、突破なら11月10日からファイナルステージ(神宮)で王者ヤクルトに挑む。2014年以来の日本シリーズの舞台に立つためには何が必要か。阪神OBで〝史上最高のスイッチヒッター〟松永浩美氏(61)は、今季の打線を支えた〝あの選手〟を猛プッシュした。

――阪神のCSの戦い方で大事になってくる部分は

松永氏 阪神は投手力でもっているチーム。調子のいい選手を使っていくしかないという状況ですよね。野手の方は全体的にそんな優勝するほどの能力はないのかなって思ってました。私のつけてるデータでは、そんなにすごい選手はいない。黒革の手帳につけてるんですよ(笑い)。近本、マルテは期待が持てるけど、大山はチャンスにそうでもない。ただ、佐藤輝が入った雰囲気はすごく大きかった。後半は佐藤輝が調子を落としてチームの得点能力が下がったので、そういう意味ではCSもキーマンになってくるのは彼なのかなって思うんです。

――ファーストステージの巨人は終盤に10連敗するなど投手力が落ちている

松永氏 意気消沈してるでしょ。対戦する方は「今日は打ってくるんじゃないか」って思うものだけど、連敗している方は「また今日も勝てないかも…」って思う。大事なのは、先制点を取ることですよ。阪神が先制点を取れれば乗り切れる。投打ともに阪神の方が有利と思いますね。今の巨人なら打線も打つでしょうし、ファーストステージを余裕を持って戦えたら、佐藤輝を使いやすい。

――突破ならファイナルステージはヤクルト戦。シーズンは13勝8敗4分けと勝ち越しているが

松永氏 阪神の野手陣と比べると、個々の能力が高い選手が多い。野手で負けてるとなれば、投手陣が踏ん張らないとしんどい気はします。オスナも怖いけどサンタナはもっと怖い。ここを抑えても山田、村上、塩見、代打の川端もいるでしょ。

――投手陣では奥川に注目が集まる

松永氏 絶対出てくる投手だと思っていたし、勢いつけちゃうと怖い。四球を出さないし、試合数の割に奪三振が多くていやらしいタイプ。日本シリーズに出ても怖い存在になると思いますね。阪神も青柳、秋山が三振取れるし、そこそこいけると思うけど、あとは打線ですよねえ。私なら…佐藤輝をスタメンで使います。打ったらラッキー!くらいの感覚でいく。やはり彼がキーマンと思っていますよ。

――矢野監督に佐藤輝と心中してほしいと

松永氏 他球団は不気味だし、怖いと思うんです。まぐれ当たりじゃなく距離を稼げる打者。打つとチームが乗ってくるし、投手陣も「テルが打ったぞ」ってなる。そのメンタルが大きいですし、ヤクルトと五分以上の戦いができる。バクチじゃない。彼なしでヤクルトに勝てる布陣を首脳陣が作れるならいいですけど、私の持っているデータの数字を見る限り、彼抜きでは考えられないです。代打じゃなく、ファーストもファイナルも全部スタメンです。

後半、佐藤輝は35打席連続無安打の不振で9月10日に二軍落ちしたが

松永氏 あれは意味なかった。二軍に落としたって何もならない。調子が悪くなる時はある。私も経験あるし、試合をやりながらでないと直らない悪さと、練習で良くなる悪さというのがある。佐藤輝は使わなきゃいけなかったし、我慢して使い続けていればって思いますよ。そこは矢野監督の腹積もり。彼を大きくするのはあの瞬間にかかっていたのかな、と思うくらい。結局戻ってきても変わってないでしょ。じゃあ何のために落としたの?ってなる。

――短期決戦の大舞台を経験させることが飛躍にもつながる

松永氏 プロは佐藤輝に対して何年も待ってくれない。そのために獲ったわけですから。結果が良くなくても、プロの試練と思って反省してやればいいんですよ。

――結果が出ないと矢野監督が叩かれるかもしれない

松永氏 言われるでしょうね。でも、使わなくて負けたら「なんで使わないんだ」ってなる。要は矢野監督が心中する覚悟があるかってこと。CS1戦目にスタメンで使うかどうかがポイントでしょう。

――佐藤輝への思いが強い

松永氏 私、この選手ホント好きなんですよ(笑い)。一流選手になってほしい。ワクワクさせてくれる。

――パ・リーグではオリックスがCSに進出している。古巣同士の日本シリーズの対戦を願っている?

松永氏 東京はドッチラケでしょうけど、個人的には関西対決を見たいですよ。関西が盛り上がってほしい。私、オリックスの躍進もシーズン当初から手帳に書いてましたけどね。

☆まつなが・ひろみ 1960年9月27日、福岡県北九州市出身。78年に小倉工からドラフト外扱いで阪急入団。練習生として用具係をし、79年に支配下登録された。81年に一軍デビューを果たし、スイッチヒッターとして活躍。「ブルーサンダー打線」の中核を担った。92年オフに野田とのトレードで阪神に移籍し、翌93年オフにダイエーにFA移籍。97年に退団してメジャーを目指すもかなわず、引退した。盗塁王(85年)のほか、2度のサイクル安打、3試合連続先頭打者本塁打、5度のベストナイン、4度のゴールデングラブに輝く。現在は鹿児島を拠点に少年野球を指導し、ユーチューブ「松永浩美チャンネル」「パパ永チャンネル」を開設している。

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