【岸本拓也が街をプロデュース】「何もないぜいたく」感じる〝東の大磯〟

一宮町の海岸沿いをサイクリングする岸本氏

日本全国に増え続ける面白い名前のパン屋のプロデューサー・岸本拓也氏が、もし地方の街をプロデュースしたら? 新規開店のために日本を飛び回り、地道な調査を重ねる岸本氏。蓄えた知識を街おこしに生かしてもらおうという連載です。

【千葉・一宮①】

今回からお話しするのは千葉県の一宮町(いちのみやまち)です。一宮は房総半島の東側にあります。神奈川の湘南に大磯海岸がありますが、一宮は「東の大磯」と呼ばれることも。我々はその隣にある茂原市で「あせる王様」というパン屋をオープンしているんです。同店に行った際、一宮に立ち寄ったのですが、海がとにかくきれいでとても感動しました。

夏に行われた東京五輪ではサーフィンの競技会場にもなっており、サーファーの街としても有名です。歩いていても、あちらこちらでサーファーの姿を見ます。湘南にも似たような光景がありますが、五輪の競技場にもなった一宮では、さらにコアなサーファーが多いように感じました。

一宮は外房という太平洋に面した海ですが、個人的には神奈川の湘南よりも好きかもしれません。私が行ったときは夕方の時間帯だったのですが、その日も多くのサーファーが海に居て、センチメンタルになってしまうような美しい光景でした。

海が近くにあることで一宮では新鮮な魚も安く手に入ります。よく、「何もないぜいたく」という言い方をしますが、一宮はまさに海があるだけ。ぜいたくだと感じました。近くには山もあり、新鮮でおいしい野菜もいただくことができます。

この街の良さは、東京からのアクセスが良いところにもあります。車で大体90分くらいで、特急に乗れば約80分で行くことができます。自然環境に恵まれていて東京からのアクセスも良いので、かつては別荘地とも言われていました。しかし最近では、通勤圏の居住地としても注目されています。あまりにも海が美しく、陸からの眺めも最高だったので、私の会社でも一宮に研修施設を造りたいなと思ったほどです。

湘南に比べると一宮へ訪れる人の数は少ないですが、海や山といった元からあるものの魅力をさらに発信すれば、多くの人を引き付けることができると思います。

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