THE MODS、デビュー40周年というアニバーサリーに最も相応しい"約束の地"日比谷野外音楽堂に降臨!

有事とも言えるコロナ禍で、沈着冷静に状況を見極め、好機を待ち続けていたTHE MODSがついに動き出した。 「退路ヲ断ッテ前進セヨ」というスローガンと共に臨戦態勢に入り、全国5か所のツアー「THE MODS 40TH ANNIVERSARY LIVE」を敢行。昨夜はその中でもレコードデビュー40周年というアニバーサリーに最も相応しい"約束の地"日比谷野外音楽堂のステージに立った。 好天に恵まれた土曜日。しかし、秋の野音は、陽が暮れるのが早い。陽が傾きかける中、ファンは規律を守り続々と入場していく。往年のファンから、ロックを継承されるのが本懐と言わんばかりの若いファンも目立っていた。

観客を前にしてのステージは、余儀なくツアーが中止された2020年3月1日から約1年と8か月ぶり。それでも40年以上のキャリアを誇る不退転のロッカーの存在感は強烈なだった。 定刻を少し遅れ、開演を告げるSEが鳴り響く。そして、メンバーがステージに一歩足を踏み込んだ時の神々しさが観客を一体化させる。この醍醐味はモッズのライブを観た者にしか分からない唯一無二のものだ。 普段であれば、場内に響き渡るモッズコールがお約束だか、そんな声は一切発せられず、"約束の地"に訪れたファンすべての全身全霊の拍手に包まれ「ワン、ツー…」のカウントが入る。オープニングナンバーは80年代から今に繋がる普遍性を秘めたEPIC時代の名曲「BLUE RESISTANCE」だった。「ここは地下の中 暗い深い闇の中…」と歌われるプロテスト・ソングでもあるこの曲をオープニングに持ってくるところなど、常に時代を映す鏡であったモッズというロックンロールバンドの"らしさ"を物語っていた。

3曲目に入る前、リーダーの森山達也はMCで言う「本当は欲しいよ。罵声でもなんでも」と。ここで特筆すべきはファンの品格だ。普段であれば観客と一体化したシンガロング・スタイルがモッズのライブの常であったが、今回は、客席からの嬌声は一切聞こえず、熱視線だけがフロアにそそぎ込まれる。その凝縮された熱量は、今までモッズのライブでは感じることの出来なかった極上の空間を作り上げたと言っても過言ではないだろう。このツアーを無事に何とか成功させたい。その気持ちは、メンバーもスタッフもそしてここに集うファンもみな同じだということを痛烈に感じた。 この野音公演は確かにデビュー40周年のアニバーサリーだ。しかし、それ以上にステージの上のモッズは現在進行形のバンドであることを強烈に感じた。特に今回のコロナ禍のような世界情勢が揺れ動く中での彼らのステージには独特の緊張感がある。天安門事件の時も、同時多発テロ事件の時もそうだった。だから今回もヒット曲をメインとしたいわゆるメモリアル的なセットリストとは少し違った。今を映し出すエッジの効いたナンバーが続く。

そして、8曲目、このツアーのために森山が書き下ろし、コロナ禍を生きる閉塞感と、その先に見える一筋の光を歌にした新曲「READY TO ROCK」のイントロが鳴り響くと観客は無言のままにヒートアップしていく。ここからも、この"約束の地"に集まったひとりひとりの心情が克明に分かった。それは、ファンがモッズに求めているのは、懐かしさではなく、今も第一線を走り続け、リアルタイムのバンドでいてくれることへの感謝の念だということだ。 新旧織り交ぜたセットリストが進行されていく。モッズの40周年というか長い歴史、そして現在を凝縮したステージだ。そして、2回目のアンコールラストは。1982年の伝説の"雨の野音"を経て、メンバー森山、北里の個人的な物語がファンのアンセムとなった「TWO PUNKS」だった。普段なら観客の大合唱が野音の空に響き渡る場面だが、今夜は森山の声だけが野音の漆黒の闇の中に溶けていく。40年以上というキャリアの中に培われたモッズのロックを継承すべきものの覚悟と愛、そしてファンへの想いがこれ以上となく心に染みわたる夜だった。

カメラマン:斉藤ユーリ

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