<社説>「オール沖縄」と自公互角 新基地「理解」は早計だ

 米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古への新基地建設を巡り民意は揺れた。衆院選の沖縄選挙区は1、2区で新基地建設に反対する「オール沖縄」の候補が、3、4区は建設推進の自民候補が当選した。 しかし、新基地建設が進む3区で自民候補が当選したことをもって、建設へ理解が得られたとみるのは早計だろう。むしろ今回の衆院選は、新型コロナウイルス対策や、経済対策など喫緊の課題が前面に出て、新基地建設問題は必ずしも最大の争点とならなかった。

 来年の名護市長選、参院選、県知事選に向けて自公に追い風になり「オール沖縄」は体制の立て直しが迫られる。

 前回衆院選から4年経過し、新基地問題は新たな局面を迎えている。18年の県知事選で新基地建設反対の玉城デニー氏が当選した。埋め立て海域に軟弱地盤が見つかり、工事完成のめどが立たないにもかかわらず政府は18年12月に埋め立て土砂を投入した。19年は名護市辺野古の埋め立ての賛否を問う県民投票が行われ、反対が72%を占めた。

 ことごとく民意を無視する政府の強硬姿勢に対し、司法からも厳しい見方が示された。農林水産相が県にサンゴの移植を許可するよう指示したのは違法だとして県が取り消しを求めた訴訟は、最高裁の裁判官5人のうち2人が県側の主張を認めた。裁判官の一人は「護岸工事という特定の工事のみに着目」して是非を判断することは「『木を見て森を見ず』の弊に陥る」と述べている。

 さらに沖縄戦の激戦地だった本島南部の土砂を新基地建設に向けた埋め立てに使用する計画が明らかになった。遺骨を含む土砂問題は人道上の問題であり、沖縄戦との向き合い方が問われている。政府は県民の声に耳を傾けなければならない。

 衆院選は、政権を選択する重要な選挙である。現在の岸田政権は発足から間もなく、ほとんど実績がないため、9年近くに及んだ安倍・菅政権の「1強」政治への評価が焦点となった。新型コロナウイルス対策をはじめ、森友・加計学園や「桜を見る会」問題、「政治とカネ」を巡る問題、日本学術会議の会員候補6人の任命拒否などだ。

 自民党は単独で安定多数を確保した。自民、公明両党の与党は、絶対安定多数を維持した。日本維新の会は衆院第3党に躍進し、自民、公明に維新と与党系無所属を加えた改憲勢力は3分の2の議席を獲得した。立憲民主は伸び悩んだ。

 日本は格差解消、気候変動、人口減少、財政健全化、外交・安全保障、憲法問題など課題が山積している。「1強」政治は国会の役割を軽視した。国会の機能が失われれば、かつての「翼賛政治」を招く。当選者は、国権の最高機関の一員として、任務の重さを肝に銘じてほしい。

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