【新体操】山崎浩子強化本部長に「有終」のW銅メダル 結実した他ジャンルからの“エキス注入”

団体種目別決勝でボールの演技を終え、ハートマークを作るフェアリージャパン(代表撮影)

有終の美を飾った。新体操の世界選手権最終日(31日、北九州市・西日本総合展示場)、団体種目別の決勝が行われ、日本はボールとフープ・クラブで銅メダルを獲得。強化本部長を退任する意向を示している山崎浩子氏(61)に最高のプレゼントを届けた。

変化を恐れない姿勢が日本を強豪国に育て上げた。2004年にアテネ五輪出場を逃した団体総合の再建を託された山崎氏は、ロシアでの長期合宿やトライアウトなど、さまざまな改革を実行した。

17年2月には、精神科医でマジシャンの志村祥瑚氏がテレビに出演しているのを見て「選手を変える力がある」とメンタルコーチ就任を要請した。当時大学生だった志村氏はスポーツ経験が全くなかったが、山崎氏の熱意に「やってみよう」と受諾。その後は定期的にメンタル面の指導に携わるようになり、自分の価値に沿った行動をとる「バリューアクション思考」を浸透させた結果、19年世界選手権の団体総合で銀メダルに導いた。

初のメダルが期待された今夏の東京五輪では、団体総合8位に沈んだものの、10月上旬にはダンサーで俳優の大貫勇輔に指導を依頼。「新体操を生で見ていただいて、何かヒントをいただけないか。私たちが大貫さんの(ウオーミング)アップとかを見てヒントになるものはないか」と新たなエキスを注入した。

前例にとらわれない山崎流の指導が生んだ今大会の銅メダル。主将・杉本早裕吏(25=トヨタ自動車)は「みんな自信に満ちあふれた演技で、最後まで冷静にできた。自分一人の力ではここまで来られなかった」と感謝。山崎氏の強い思いが新体操界の歴史に新たな1ページを刻んだ。

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