オリックスとロッテの僅かな差は? 両球団在籍OBが指摘「最後の勝負どころで…」

オリックス・中嶋聡監督(左)とロッテ・井口資仁監督【写真:荒川祐史】

両チームの主砲がケガで離脱 満身創痍の激戦

史上稀に見る激戦となったパ・リーグのペナント争いは、オリックスが25年ぶりのリーグ制覇を成し遂げ幕を閉じた。残り3試合で2勝1分け以上なら優勝だったロッテが、10月27日の楽天戦に敗れて決着。両チームの明暗を分けた僅かな差は、どこにあったのか。日米通算234セーブを誇り、ロッテ、オリックス両球団でそれぞれ現役投手とコーチの両方を経験している野球評論家・小林雅英氏が分析した。

「143試合のどこか1つでも勝敗が変わっていたら、順位も変わっていたかもしれない。それほど厳しい戦いでした」と両チームを称えた小林氏。一方で「両方に故障者が出て、フルメンバーの良い状態で戦い切れなかったのは残念でしたね」とも振り返った。

オリックスは打率.339で首位打者に輝いた吉田正尚外野手が、9月3日のソフトバンク戦で左太もも裏を痛めて離脱した。同26日に復帰するも、1週間後の10月2日のソフトバンク戦では右手首に死球を受けて骨折し、再離脱する不運に見舞われた。ロッテも主砲のレオネス・マーティン外野手が9月19日の日本ハム戦で右足甲に自打球を当て骨折。10月5日に強行復帰したが、さすがに精彩を欠いていた。双方満身創痍の激戦だったとも言える。

「最後の勝負どころで先発投手陣がゲームをつくれたか、つくれなかったか。両チームの差はそれだけだったと思います」と小林氏は見た。

ロッテは、10月16日のソフトバンク戦で先発の二木康太投手が1回2/3、5失点でKOされ、4-10の大敗。同25日の同カードでも先発の美馬学投手が1回2/3、7失点で降板し7-15で敗れた。シーズンを通しても、2桁勝利に到達したのは10勝(4敗)の小島和哉投手1人だけ。一方のオリックスは、エースの山本由伸投手が5月28日のヤクルト戦以降の17試合を15勝0敗で乗り切り、トータル18勝(5敗)。宮城大弥投手も13勝(4敗)を挙げた。

最多セーブも6敗を喫した益田 8月以降調子を上げた平野

また、現役時代に抑えとして活躍した小林氏は「今季はクローザーにとって非常に難しいシーズンだった」と指摘する。今季は新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、全試合9回打ち切り。したがって、ビジターの試合では勝利の可能性がなくなった同点の9回裏にも抑え投手が登板するケースが激増した。

「クローザーがこれほど同点というシチュエーションで投げた年は他にないと思います。実は“1点でも取られたら負け”という状況でクローザーが投げることは稀です。例えば3点差があれば2点までは取られてもいいわけで、やれることがたくさんある。同点で行くとなると、引き出しが減るのです」と説明する。

そんな中、ロッテの守護神・益田直也投手は、38セーブでタイトルを獲得も6敗(3勝)を喫した。小林氏は「厳しい言い方かもしれませんが、益田の負け数が1つでも少なければ…… と惜しまれます。僕が見た印象では、四球でもいい状況でボール球を投げ切れず、痛い本塁打やタイムリーを打たれたシーンがあった。失敗が少なかったら球団初の40セーブも達成できたのに、残念です」と言う。

一方、メジャー経験も豊富なオリックスの抑え・平野佳久投手は、4月に頸部の痛みで出場選手登録を抹消。1軍復帰まで約1か月半を要したが、8月以降は徐々に調子を上げ、最終的に46試合1勝3敗29セーブ、防御率2.30と安定していた。「最後は経験値という強みが出た。状況を理解して投げることができる点で、平野の方が少し長けていたかもしれない」と分析した。

オリックス、ロッテに3位の楽天を加えて今月6日に開幕するCSは、故障者にも休養が与えられて仕切り直しとなる。今度はどんな戦いが繰り広げれるか、楽しみが尽きない。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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