【特別寄稿】管理遊技機について(後篇)(WEB版)/鈴木政博 鈴木政博の遊技産業考現学

既に型式試験申請されていた「ぱちんこ管理遊技機」に続き、2021年10月1日よりメダルレス遊技機である「パチスロ管理遊技機」についても、型式試験申請が可能となった。今回は、前回に引き続きこれら管理遊技機について、法的根拠や緩和される点について考察してみたい。

1. 管理遊技機の法的根拠とは?
過去の資料を紐解くと、最初に「封入式ぱちんこ」として構想が世に出てきたのは2010年にさかのぼる。2012年には日工組にて「ECO遊技機」という名称となり、ぱちんこ機についてはここから議論が具体化し始めた。この当時の資料を見返すと「スタンダード枠(全社共通枠)」と記載されており、さらに「枠以外の遊技機本体価格は10万円未満」や「釘を整備出来るのかは現行通り」といった記載もある。ただしこれは10年近く前の資料であり、現在の「管理遊技機」とは幾分か仕様が異なる。また当時の遊技機規則や風適法にはこのジャンルに関する記述がなく、実現するには規則改正が必要な状況でもあった。

現在の「管理遊技機」が具現化したのは、2018年2月1日に施行された規則改正以降となる。ここで初めて、規則上で管理遊技機に関する記載が加わった。まずはその当該部分について、ぱちんこ遊技機・パチスロ遊技機に分けて掲載し、解説を加えてみたい。まずは、ぱちんこ遊技機から。

**・ぱちんこ遊技機
「遊技機の認定及び型式の検定等に関する規則」より抜粋**

別表第2 技術上の規格における用語の意味(第6条関係)
(2) ぱちんこ遊技機に係る用語の意味
タ 「遊技球数表示装置」とは、遊技者が遊技球に触れることができない構造を有する遊技機に備えられる装置であつて、遊技者が発射させることができる遊技球の総数を電磁的方法により記録し、表示することができるものをいう。

【解説】管理遊技機(遊技者が遊技球に触れることができない構造のもの)には「遊技球数表示装置」が搭載される。これは遊技者が発射できる総数をデジタル表示するもの。

別表第4 ぱちんこ遊技機に係る技術上の規格(第6条関係)
(1) 性能に関する規格
チ 遊技球数表示装置の性能に関する規格は、次のとおりとする。
(イ) 遊技者が記録された遊技球の数を示す信号を自由に送信することができる性能を有するものであること。
(ロ) 遊技者が直接操作する場合のほか、記録された遊技球の数を減ずることができないものであること。
(ハ) 記録された遊技球の数を示す信号を遊技球等貸出装置接続端子板を介さずに送信することができないものであること。

【解説】管理遊技機に搭載される「遊技球数表示装置」の性能について書かれている。条文からは「(イ)遊技者がボタンを押せば、出玉表示を会員カード等に送信し貯玉できる仕組み」と推察され、また「(ロ)遊技者が玉を発射したり貯玉したりする以外に、表示された玉数を減らすことができない仕組み」であり、「(ハ)出玉表示を会員カード等に送信し貯玉するには遊技球等貸出装置接続端子板から専用ユニット等を介して、ユニットに差し込んだ会員カードなどに記憶する仕組み」と解釈できる。

この内容を見ると、ぱちんこ遊技機に関してはまず「遊技者は玉に触れない構造」となっており、貸玉や出玉の総数がデジタル表示され、1つ発射する度に表示が1減り、また賞球を獲得する度に表示が増える、といった仕組みとなる。またこの表示は、ヤメたい時にはボタンを押せば、隣接した専用ユニットにあるカードに貯玉できる仕組みだ。

こちらは、現在ホールにある「各台計数機」から「CRユニット」を通じて貯玉する現状と操作性でいえば大差なく、特に混乱なくファンは遊技できそうだ。

次にパチスロを見てみたい。
**・パチスロ遊技機
「遊技機の認定及び型式の検定等に関する規則」より抜粋**

別表第2 技術上の規格における用語の意味(第6条関係)
(1) 複数の種類の遊技機に共通する事項に係る用語の意味
ヨ 「遊技メダル数表示装置」とは、遊技メダルの貸出若しくは入賞による獲得又は遊技メダルを遊技の用に供することを電磁的方法のみにより行う遊技機に備えられる装置であつて、遊技者が遊技の用に供することができる遊技メダルの総数を電磁的方法により記録し、表示することができるものをいう。

【解説】ぱちんこの管理遊技機との違いは、パチスロには「遊技者が遊技メダルに触れることができない構造」という記載がない。つまりパチスロの管理遊技機は、メダルに触れる事が出来ても出来なくても良い、と解釈できる。搭載される「遊技メダル数表示装置」については、現在の「貯留」に50枚の上限が無くなり、貸玉分も貯留に入る、と考えれば理解しやすい。

別表第5 回胴式遊技機に係る技術上の規格(第6条関係)
(1) 性能に関する規格
リ 遊技メダル数表示装置の性能に関する規格は、次のとおりとする。
(イ) 遊技者が記録された遊技メダルの数を示す信号を自由に送信することができる性能を有するものであること。
(ロ) 遊技者が直接操作する場合のほか、記録された遊技メダルの数を減ずることができないものであること。
(ハ) 記録された遊技メダルの数を示す信号を遊技球等貸出装置接続端子板を介さずに送信することができないものであること。

【解説】基本的には、ぱちんこの管理遊技機と違いはない。遊技者がボタンを押せば、表示されているメダルが専用ユニットを通じてカードに貯玉される仕組みとなっている。

このような「管理遊技機」実現に関する規則改正が行われたことで、2018年2月以降より具体化し、そして2022年にはついに登場となる見込みとなった。ちなみに現在は、名称としては「スマートパチンコ」「スマートパチスロ」となっている。
2. 管理遊技機がP機やS機より優遇される点は?
業界の歴史を振り返ると、1990年の規則改正で確率変動が認められ、以降、当時大人気だった「保留玉連チャン機」などの、確率変動がないのに何故か連チャンする遊技機は徐々に姿を消す運命となる。しかしこの時、警察庁の意向で業界健全化のため「インのクリア」がなされる「CR機」の導入促進が謳われていた。ただし現金機と違い、CR機の導入には「CRユニット」を購入する必要があった。ホールとしては、現金機とCR機の違いが無ければ、あえてコストを増やしてまでCR機を導入する必要性がない。そこで警察庁の意向を汲んだ業界側は「確率変動はCR機にのみ搭載できる」とし、現金機には確率変動は搭載されなかった。

結果としてCR機の導入は急激に進み、ぱちんこの現金機はやがて姿を消すこととなる。しかし、この時の流れが「ダブルスタンダードではないか」と後に批判も生むこととなった。

今回の「管理遊技機」も、状況としては1990年当時と全く同じ構図だ。しかし規則改正は10年スパンで、2018年に改正された規則が近くまた改正される可能性は極めて低い。したがって今回、管理遊技機がスペック的に優遇される可能性は「遊技機規則」の範囲内においては全く無いのは確かだろう。優遇される部分は「日工組内規」「日電協内規」などの、あくまで「内規部分」で自主規制している範囲内について、部分的に「管理遊技機」には内規緩和する、という流れとなる。

すでにパチスロについては、1,500Gから内規が緩和された「有利区間3,000G」について、管理遊技機はゲーム数においては完全撤廃することを明らかにしている。現状では管理遊技機でも未だ枚数制限「有利区間2,400枚」の上限は残っているが、そもそも管理遊技機は「インとアウト両方を第三者機関で監視できる」のが特徴であるため、今後発売される管理遊技機において「有利区間3,000G撤廃機でも型式試験上は全く性能に問題が無い」と証明されれば、次に「有利区間2,400枚撤廃」に向けて動くにあたっては、流れとしてはスムーズだ。
また、ぱちんこ遊技機については現時点で「管理遊技機はどこが優遇されるか」というアナウンスは聞こえてこない。最も興味を持たれるのは「総量規制」の6,400個部分であるのは確かだが、現状のぱちんこ遊技機の射幸性や適合率から鑑みて、ここを緩和に持っていくのはかなり難易度が高そうだ。ただし内規で緩和されればバラエティが広がる部分は多数ある。例えば「確率下限1/320」などは、もし撤廃されれば、射幸性は変わらずとも「1,000円で40回、回せる台」なども開発が可能となる。また「遊タイム(b.時短)」での時短回数が低確率分母の3.8倍、というのも内規だ。3.8倍の回数時短は、ほぼ抜ける事はないものの、ホールを見渡せば時々、遊タイムスルーの台を見かけることはある。

さらには、業界側からの折衝により、保通協の型式試験方法が変更になることもある。発売されている「パチスロ低ベースAT機」は、この流れで実現したものだ。ぱちんこ遊技機においても、例えば「設定付きぱちんこ機」は適合率が低く、結果として性能が劣るため浸透していないが、これは「5台を持ち込んで、それぞれ設定1~設定6で出玉試験を行う」と試験時間が単純に6倍になり、不適合事例が発生しやすいためだ。これを例えば、出玉性能が逆転する「小当たりRUSH機」を除いた部分だけでも「出玉率上限は設定6で、出玉率下限は設定1で試験する」と試験方法が変わるだけでも、現行の設定なし遊技機と同等の状況になる。

早ければ来年春には登場する管理遊技機。10年後にはシェアのメインとなっているであろうことは推察できるが、ホールとしては直近のコストが必要なのも確かだ。新紙幣の発行でユニットの識別機更新が必要となる2024年までに、どれだけ人気の管理遊技機タイトルが出てくるかが鍵を握るだろう。「スマートパチンコ」「スマートパチスロ」の未来に期待したい。

(以上)

■プロフィール
鈴木 政博
≪株式会社 遊技産業研究所 代表取締役≫立命館大学卒業後、ホール経営企業の管理部、コンサル会社へ経て2002年㈱遊技産業研究所に入社。遊技機の新機種情報収集及び分析、遊技機の開発コンサルの他、TV出演・雑誌連載など多数。

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